2024年02月25日
才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅”第二十七回 / タイでワーケーション(後編) いつものスタイルで放浪旅に挑戦
タイで自転車ワーケーション放浪旅
私のワーケーションのスタイルは自転車で転々としながら、観光や山岳アタックを繰り返す。タイでこれに挑戦しよう、というのが今回の旅のテーマだった。
タイ編の前編はこちら。https://funride.jp/column/workxtripxcycle-26/
海外旅行のための大きな荷物を持って自転車で移動することは難しい。荷物を大きく3つに分類して扱うことになった。
①旅に不要な「置いておくもの」
チェンマイ空港に到着して、まず問題になるのが輪行袋。比較的コンパクトなオーストリッチの「OS500」を使ってはいるが、持ち歩くにはあまりに嵩張る。
解決策は既に決まっていた。ナーソンリゾートの父ちゃん(前編参照)の息子さんがチェンマイ在住とのことで、自宅に置かせてもらうことになっていたのだ。
②必要最低限の「持ち運ぶもの」
さらに彼は年末年始にナーソンへ帰省するとのこと。目的地が同じだった私は、車に荷物を積んでもらうことができた。最初の自転車移動は最低限の荷物を背負う形で行う事ができた。
「街から街へ」の移動は基本的にこのスタイルで走ることになった。
③中期間の滞在に必要な「送るもの」
今回、タイ国内の未踏の地を一人で旅しようと考えていた。ナーソンから車で南へ移動する方がいて、途中まで乗せてもらうことに。
目的地はずっと訪問したかった世界遺産「スコータイ」。観光の拠点として選んだ街はピッサヌローク。ナーソンから300キロ以上南下した街である。
成人の日の三連休を使ってピッサヌロークからナーソンに戻ることにした。往路は車でワープしたが、復路はもちろん自転車である。寄り道をしながら約500km、2泊3日の旅程である。
ここで問題になるのがPCを含む荷物だ。背負って走るには重すぎる。日本では予め宅急便で目的地に荷物を送り、空荷で移動する。タイではどうだろう。
私はKerry ExpressとFlash Expressという2社を利用した。共にここ5年くらいで急速に発展してきた運送会社である。
送る荷物は必ず箱に入れなければならないようで、営業所に持ち込むと梱包してもらえる。ピッサヌロークからナーソンは2日間、チェンライからチェンマイはなんと翌日に配送が完了した。
営業所には英語が話せるスタッフはいなかった。翻訳アプリを通したやり取りは大変だったが、荷物が届いた時の達成感は大きかった。また外国人は発送時にパスポートが必要なので要注意。
スコータイの遺跡をマイバイクで
こうして無事に訪れることができたスコータイ遺跡は、レンタサイクルの利用が推奨されるくらい広範囲に遺跡が点在している。自分のバイクを10バーツ(約40円)で持ち込むことができ、駐輪スペースが各名所の前に設けられているので、鍵を持っておけば安心して観光できる。
日本の鎌倉時代にあたる、タイ人の最初の国家であるスコータイ朝。訪タイの経験者なら、一度は目にしたことがある暗号のような「タイ文字」ができたのもこの時代のこと。
それにしても、大乗仏教と上座部仏教の違いこそあれ、同じ仏教遺跡で日本とここまで表情の違う建築が生まれるとは驚いた。
タイ最高峰に挑む
タイには激坂が多い。「富士あざみライン」が至る所にある、と言えば日本のクライマーにはイメージがつくだろうか。
たくさんアタックした中で、タイ最高峰「ドイ・インタノン」にもチャレンジした。2565mの山頂まで全面舗装されていてロードバイクで上ることができる。獲得標高2000m、登坂距離40kmを超えるこのクライミングは、今回の私の旅の目的のひとつだった。
長いヒルクライムには日本では味わえない大きな達成感がある。この経験ができるからこそ、海外での超級山岳への挑戦には中毒性があると思う。
この山には下りにも特徴がある。乗車禁止区間があるのだ。激坂はダウンヒルに危険が伴う。さらにタイの路面は雨で濡れると非常にスリッピーになる。
「最高峰」は多くのサイクリストを惹きつけるが、疲労困憊の下りで落車が多発したであろうことは容易に想像がつく。
下山にはタクシーの手配が必要であるが、平日ということもあり山頂に多くいるはずだった運賃の安い乗合タクシーが捕まらない。500バーツ(約2000円)で個人タクシーに乗ることに。
盛大に吹っかけられていることはわかったが、疲れた状況でタイ語しか通じない相手と交渉する元気はなかった。値切ろうとして、このドライバーに断られたら、もっと面倒なことになるので渋々OKした。
31日間過ごしたタイとお別れ
タイを離れる日。空港へのタクシーに乗り込んだ途端に雨が降り始めた。11月から2月が乾季のタイでは珍しい。
居心地が良くて、タイを離れることに寂しさを感じている私の心を表現するかのような空模様を眺めながら、「また戻ってこよう」と心に決めた。今回の旅でタイでの可能性は無限に広がったのだから。
才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅” 連載中
第一回 プロローグ
第二回 旅の流儀
第三回 フェリーで広がる可能性 ~奄美群島~
第四回 自転車で訪れる八重山諸島
第五回 出発の地、目的の地、それは『レース』
第六回 東北沿岸を走る 東日本大震災から11年
第七回 ワーケーション自転車旅の装備
第八回 仕事の合間にライド。ライドの合間に仕事。
第九回 地域のシンボルとして愛される山
第十回 北海道 太平洋岸を行く3日間 600km
第十一回 自転車で楽しむ神話の土地 島根・鳥取
第十二回 上ったら食べる 旅の途中に立ち寄りたいご当地ラーメン
第十三回 全国のサイクリストと一緒に走る、STRAVAセグメントアタックという形
第十四回 離島時間に浸る ゆっくり走るという贅沢
第十五回 自転車で踏み込む世界遺産の森 奄美大島・加計呂麻島
第十六回 屋久島 自転車で感じる洋上のアルプス
第十七回 サイクルジャージは現代アート? 自転車で立ち寄る美術館
第十八回 雨で良かった。雨の日こそ走りたい道。梅雨を楽しむ。
第十九回 富士の高嶺に挑む 「富士ヒル」と「チャレンジヒルクライム岩木山」
第二十回 夏本番!あなただけの「おくのほそ道」を走ろう
第二十一回 南信州飯田 友人に会いに行く旅
第二十二回 乗鞍ヒルクライム 〜初登攀(はつとうはん)はレースで 念願の日本最高峰〜
第二十三回 / 残された未踏の地「北海道・道東」
第二十四回 海外ワーケーション! 日本から近い島国「台湾」
第二十五回 / 知られざる秘境 〜岐阜県と北陸三県の間に広がる山岳地帯〜
第二十六回 / タイでワーケーション(前編) タイ合宿の聖地「ナーソンリゾート」
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著者プロフィール
才田直人さいた なおと
1985年生まれ。日本中、世界中を自転車で旅しながら、その様子を発信する旅人/ライター。日本の上るべき100のヒルクライムルートを選定する『ヒルクライム日本百名登』プロジェクトを立ち上げて、精力的に旅を続ける傍ら、ヒルクライムレースやイベントにも参加している。