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2024年01月22日

才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅”第二十六回 / タイでワーケーション(前編) タイ合宿の聖地「ナーソンリゾート」

年が明け、才田さんは年始早々からタイへ。どうやら滞在期間が延びているそうですが、かつて仲間たちと切磋琢磨した場所は思いのほか居心地が良いのでしょう。そして現役選手たちにむけて、才田さんからアドバイスも。
タイ編は前編・後編の2編でお送りします。

まだ暗いうちから鳴り響くニワトリの声。朝の知らせの代名詞ともなっている、この雄叫びで目を覚ますことは、今の日本ではまずないだろう。

ここは東南アジアのど真ん中、タイ。日本の自転車ロードレース界にとっては、福島晋一、宮澤崇史、新城幸也といった名選手を生み出した「タイ合宿」の地でもある。

寒い日本の冬から逃げるようにタイに来てからすでに4週間近く。私は今も常夏の地に滞在してこの文章を書いている。

チェンマイにランディング

日本国内での放浪旅と同様にヒルクライムをベースに自転車を楽しむために、タイの中でも山の多い北部地域を旅先として選んだ。

フライトのディレイによる乗り継ぎの失敗もあり、予定より一日遅れで北部最大の都市チェンマイに到着した。ちょっとしたトラブルは非日常感を増大させてくれるので、旅はより一層楽しくなる。

常夏のタイにいるはずが、雪のソウルに20時間滞在。無料で参加できるトランジットツアーでお寺に観光へ。添乗員さんが写真も撮ってくれる。

オートバイはまだほとんどの人がヘルメットをかぶっていない事。そして3人乗り、4人乗りは当たり前。朝晩は意外と涼しい事。物価は安いとは言え以前よりは大きく上昇している事。やはりタイ料理は美味しい事。

実に12年ぶりのタイ。チェンマイでの滞在でその変化の大きさと、変わらない良い部分を確認した。

日本では味わえない体験もたくさんある。ライド中に象が現れることも。

久しぶりに海外での年末年始

時期はちょうど年末年始。新年は「ナーソンリゾート」で迎えたいと思っていた。ナーソンは日本をはじめアジアの自転車選手が冬に行う「タイ合宿」の拠点となるホテルである。

チェンマイからナーソンまでは250km。自走で出発したのがタイ到着から5日目。

タイ合宿の定番イベントに「チェンマイツアー」というものがあり、片道250km往復500kmを2日で走破する(チェンマイで中一日おくこともある)。

今回はその片道を1人で走る。当時は集団走とモーターペーサーで一瞬で過ぎ去る景色を楽しむ余裕もなかったが、今回は違う。1人ゆっくりと、景色が綺麗なところで立ち止まったり、美味しそうなお店でご飯を食べたりしながら、その道のりを噛み締めるように進む。

ナーソンまで100kmを切ったパヤオという街まで来ると、合宿中の選手がナーソンから援軍に来てくれた。この列車に無賃乗車したら残りは早いもの。あっという間にゴールに辿り着いた。

昔は年末からタイに入る選手が多かったが、今は2月が一番多いとのこと。選手2人の列車は2つの山を超えて150km走ってきた私には嬉しい援軍だった。


予定通り大晦日をナーソンで迎えた。1次会はエビ屋さんで外食を楽しみ、戻ってきてから年越しそばやビールで2次会。最後は願いとともに紙でできた灯籠「コムロイ」を満点の星空に放って年を越した。ゆっくりと遠ざかるコムロイがまるで星になるようで美しかった。

元旦は車で朝5時過ぎに出発して近くの山へ。メコン川が作り出す雲海に初日の出。標高1500mから眺める絶景。

Noiさんのご飯。父ちゃんのバイクペーサー。

中川さん(みんな愛情を持って「父ちゃんの」の愛称で呼ぶ)とNoiさん。夫婦で経営するナーソンリゾートの宿泊費は1泊350バーツ(約1460円)。晩御飯が付いていて、毎日洗濯までしてもらえる。

タイの道を知り尽くし、数々の名選手たちを育ててきた父ちゃんがバイクペーサーをしてくれたり、トレーニングのアドバイスをくれる。

今回、父ちゃんと走ったのは荷物を運んでもらった時だけ。バイクペーサーは無しでのんびりと。12年前に2ヶ月滞在した時は、強度が高い練習が組み込まれているにも関わらず月間走行距離は4500kmに及んだ。

トレーニングは厳しい。しかし疲労困憊で帰ってくるとNoiさんの美味しい晩御飯が待っている。そして選手みんなで今日の練習を振り返ったり、馬鹿話をしたりしながら、満点の星空の下でゆっくりと時間が流れて、翌日の練習に向けて眠りにつく。

選手にとっては練習に打ち込める最高の環境だ。

Noiさんが作ってくれる晩御飯。バリエーションに富んだメニューで栄養バランスも抜群。ガイヤーン(焼き鳥)は炭火で2時間近くかけてゆっくり火を入れる。

ワーケーションには気になるインターネット事情

自分のようにテレワークをしながらタイに滞在したいという人もいるかもしれない。基本的に心配はいらないだろう。ホテルはもちろん、Cafeや食堂には大体WiFiが完備されている。

ナーソンに関してもWiFiはしっかり通信速度が出るので仕事で困ることもない。選手だけではなく自転車好きが集う場所でもあるので、ゆったりと流れるタイ時間に浸りながらワーケーション滞在という形もありだと思う。

ナーソン近くのカフェは仕事場として行きつけになった。覚えたてのタイ語でのコミュニケーションにトライするのも楽しい。

タイ合宿に行ってみては?

この連載を読む選手がどれだけいるかわからないが、壁にぶつかっているとか、何をすべきかわからない、もっと世界を広げたい、といった選手がいれば思い切って日本を飛び出して、タイ合宿に参加してみてはどうだろう? 何か殻を破るきっかけを得られると思う。

今年も2月に選手が集まる予定だという。新城選手も来るかもしれない。中川さんや私でも良いし、近くのタイ合宿経験者でも良い。「タイ合宿に参加したい」と今すぐ行動すればまだ間に合う。実際、今回私が航空券を手配したのも、渡航まで1週間を切ってからだったのだから。

12年ぶりのナーソンリゾート。その面影は当時のまま。

才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅” 連載中
第一回 プロローグ
第二回 旅の流儀
第三回 フェリーで広がる可能性 ~奄美群島~
第四回  自転車で訪れる八重山諸島
第五回  出発の地、目的の地、それは『レース』
第六回  東北沿岸を走る 東日本大震災から11年
第七回 ワーケーション自転車旅の装備
第八回 仕事の合間にライド。ライドの合間に仕事。
第九回 地域のシンボルとして愛される山
第十回  北海道 太平洋岸を行く3日間 600km
第十一回 自転車で楽しむ神話の土地 島根・鳥取
第十二回 上ったら食べる 旅の途中に立ち寄りたいご当地ラーメン
第十三回  全国のサイクリストと一緒に走る、STRAVAセグメントアタックという形
第十四回 離島時間に浸る ゆっくり走るという贅沢
第十五回 自転車で踏み込む世界遺産の森 奄美大島・加計呂麻島
第十六回 屋久島 自転車で感じる洋上のアルプス
第十七回 サイクルジャージは現代アート? 自転車で立ち寄る美術館
第十八回 雨で良かった。雨の日こそ走りたい道。梅雨を楽しむ。
第十九回 富士の高嶺に挑む 「富士ヒル」と「チャレンジヒルクライム岩木山」
第二十回 夏本番!あなただけの「おくのほそ道」を走ろう
第二十一回 南信州飯田 友人に会いに行く旅
二十二回 乗鞍ヒルクライム 〜初登攀(はつとうはん)はレースで 念願の日本最高峰〜
第二十三回 / 残された未踏の地「北海道・道東」
第二十四回 海外ワーケーション! 日本から近い島国「台湾」
第二十五回 / 知られざる秘境 〜岐阜県と北陸三県の間に広がる山岳地帯〜

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