記事ARTICLE

2023年11月25日

才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅”第二十四回 / 海外ワーケーション! 日本から近い島国「台湾」

2019年以来の異国の空気

たくさんのスクーターに囲まれながら、赤信号のカウントダウンが進む。数字がゼロになり信号が青に変わると同時にペダルに力を込める。まるでレースがスタートしたかのようにスクーターと同時に一斉に走り出す。

活気に溢れる台湾の朝。

コロナ禍以降、遠ざかっていた海外に私は戻ってきた。

通勤時間帯の台湾。スクーターとのスタートダッシュは日本では味わえない。

きっかけは標高差世界一のヒルクライムレース

海岸沿いをスタートし、100km以上の距離を走って標高3275mにフィニッシュする規格外のレースが台湾には存在する。それが毎年10月末に行われる「TAIWAN KOM CHALLENGE」である。

日本から参戦した超強力なメンバー。スタートに向かう時はまだ夜明け前で薄暗い。

今年は日本から過去最も豪華なメンバーが参戦した。その日本人選手が多く入賞する中、私は9位でフィニッシュ。微妙な順位ではあったが、4年ぶり7度目の出場となるこの大会を十分に楽しんだ。

何よりこのレースは「海外に行くこと」を忘れかけていた私にきっかけを与えてくれた。何度も出場してきたからこそ、このレースが私を再び海外に連れ出してくれたのだろう。

日本を飛び出して走る・仕事をする

今回の私の台湾の旅には、海外からのワーケーションにチャレンジするというテーマがあった。日本との時差は1時間。手始めには良い立地だ。

毎年TAIWAN KOMは台湾に魅せられた昔からの仲間が集う修学旅行のような大会である。
みんなで空港から一台のバスに乗り込む。スタート地点である東海岸の花蓮に向かい、同じ宿に泊まって、レースを走り、盛大に打ち上げで締める。
レース後は山頂からバスで西側の台中に下りる。毎年この経路を辿るので、今回も自然と台中での滞在からワーケーションが始まった。

サポートメンバーと選手。超級山岳を一緒に乗り越えた仲間たちと台湾グルメを囲んでビールで乾杯。これこそレース後の最高のご褒美。

台中での滞在中、平日はリモートで仕事をしながら、合間に走りに行ったり、台中でできた友人たちとランチや夕食を楽しんだりと少し特別な「日常」を過ごした。休日は地元チームのライドにも二度参加した。

台中の自転車クラブ「NEKO」の走行会。日本では考えられない大人数で街中を駆け抜ける。これだけでもちょっと特別な体験になる。

台中の方達は、台湾人も日本人も、いつもみんな優しく私のことを気にかけてくれる。今では「台湾の故郷」のような心から落ち着ける街になった。

台中から自走圏内にある大雪山林道の終点。標高2560m。山頂で言葉が通じない中、話しかけてくれたおじさん。どうやら写真を撮ってくれると言っている。おじさんの優しさと共に心に残った今回の旅でお気に入りの一枚。

目指すは陽明山 台北9日間

台中を後にして向かったのは台北。台湾最大の都市であるが腰を据えて走ったことがなかった。市街地の北に陽明山を中心とする山岳エリアがあり、無数のヒルクライムコースがあることは以前から知っていた。この一帯を時間をかけて走りたいと思っていた。

硫黄臭の立ち込める火山、温泉。駐車場から溢れた車の渋滞。広大なススキの原。ボリュームのあるヒルクライム。

日本の「箱根」の要素を箱に入れて、ごちゃ混ぜにして取り出したら「陽明山」だった。という印象を持った。箱根にある湖はないが、景色のダイナミックさは陽明山に軍配が上がると思う。

今回たくさんの山岳アタックをした中で、私がオススメするのは「大屯山」である。

陽明山エリアで第二の高峰。そのほぼ山頂まで自転車で行くことができる。標高は1076m。

緩斜面の序盤を過ぎると、中盤は木陰が気持ち良い快走区間、そして最後は激坂。多様な表情を見せてくれる。

真夏日の太陽の下、ハイカーからの応援を背に、大汗をかきながら山頂への急勾配をクリアするとそこには絶景が待っている。

大屯山山頂。広がるススキの原、陽明山の山々、ガスを噴き出す火山、台北市街地、そして水平線までもが目に飛び込んでくる。

台北ではアタックするたびにSTRAVAのフォロワーが増えた。驚いたのは街中でスクーターの若者に話しかけられたこと。並走しながら簡単な英語で会話をする。

「今日も陽明山に上るの?日本からだよね?」

「今日はイージーだから流して帰るよ。」

「写真一緒に撮ってくれないかな?」

この前日にSTRAVAでコメントが入った「台北の自転車乗りは今みんなあなたの話をしています」というのはあながち嘘でもなかったようだ。

「不便」が楽しい

台中のローカル色溢れる爌肉飯(コンロウファン)屋でのこと。台湾語を一切話せない日本人観光客が一人でふらっと来店することが珍しいのか、注文した料理の他に次々とサービス品が追加される。豚の血が入ったスープや、野菜の盛り合わせ。

白菜を片手に熱心に食材を説明してくれているようだが、言語が全くわからない。理解できたのは「サービス」の一単語のみ。とにかく私に「台湾の味」を無料でたくさんご馳走してくれた。

美味しい食事と、店主と女将さんとのコミュニケーション。お腹も心もいっぱいになった。

台中の爌肉飯屋さん。入るには少し勇気がいる飲食店でこそ、素晴らしい体験が待っていることも。
爌肉飯はもちろん絶品だった。

台北滞在中には宿の近くにお気に入りのお店ができた。

初めは苦戦した注文も、メニューを指差したり、欲しい料理をスマホに書いて見せてることで、日々スムーズに注文が通るようになってきた。

顔馴染みになってくると店員さんも慣れてくる。一方で台湾語を話したいという思いにも少し駆られた。

(写真)お気に入りの豆花(トウファ)屋さん。トッピングの組み合わせによって16種類のメニューと「熱・冷」を選ぶことができる。豆腐のスイーツはライド後のおやつにも最適。持ち帰りで注文して帰るのが定番に。

そして旅の帰路。ホテルから台北駅までタクシーを使った。英語も通じないドライバーとスマホの同時通訳を駆使してなんとか会話をしていると、私の自転車の値段の話に。

そのバイクの値段に驚きを隠せないドライバーだったが、タクシーを降りる時に端数の5TWD(24円)をサービスしてくれた。超高額のバイクの値段の前で輝きを放つ5TWD。最後にまた心が暖かくなった。

さて、次はどこへ行こうか

海外ではコミュニケーションに苦労することが多いけれど、気持ちは伝わるものだということを思い出した。再び世界にも目を向けてみよう。そう思うには十分だった今回の台湾での18日間。

日本の外に未踏の地が一瞬にして拡大した。世界は広大だ。

TAIWAN KOMのフィニッシュ直前最後の激坂。標高3000mを超えるヒルクライムは日本では経験できない。

才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅” 連載中
第一回 プロローグ
第二回 旅の流儀
第三回 フェリーで広がる可能性 ~奄美群島~
第四回  自転車で訪れる八重山諸島
第五回  出発の地、目的の地、それは『レース』
第六回  東北沿岸を走る 東日本大震災から11年
第七回 ワーケーション自転車旅の装備
第八回 仕事の合間にライド。ライドの合間に仕事。
第九回 地域のシンボルとして愛される山
第十回  北海道 太平洋岸を行く3日間 600km
第十一回 自転車で楽しむ神話の土地 島根・鳥取
第十二回 上ったら食べる 旅の途中に立ち寄りたいご当地ラーメン
第十三回  全国のサイクリストと一緒に走る、STRAVAセグメントアタックという形
第十四回 離島時間に浸る ゆっくり走るという贅沢
第十五回 自転車で踏み込む世界遺産の森 奄美大島・加計呂麻島
第十六回 屋久島 自転車で感じる洋上のアルプス
第十七回 サイクルジャージは現代アート? 自転車で立ち寄る美術館
第十八回 雨で良かった。雨の日こそ走りたい道。梅雨を楽しむ。
第十九回 富士の高嶺に挑む 「富士ヒル」と「チャレンジヒルクライム岩木山」
第二十回 夏本番!あなただけの「おくのほそ道」を走ろう
第二十一回 南信州飯田 友人に会いに行く旅
二十二回 乗鞍ヒルクライム 〜初登攀(はつとうはん)はレースで 念願の日本最高峰〜
第二十三回 / 残された未踏の地「北海道・道東」

【INFORMATION】

編集部での日々の出来事や取材の裏話、FUNRiDE presentsのイベント情報などをSNSにアップしています。
ぜひご覧いただき、「いいね!」のクリックをお願いします。
Facebook⇒ https://www.facebook.com/funridepost
twitter⇒ https://twitter.com/funridejp

記事の文字サイズを変更する

記事をシェアする