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2022年03月26日

才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅”第四回 自転車で訪れる八重山諸島

日本最南端の島々

まだ3月だというのに、短パン半袖で宿の屋上のリクライニングチェアに身を預けて泡盛を片手に星空を眺める。辺りはとても静かで、夜風が気持ち良い。

那覇から飛行機で1時間。日本最南端の島々が「八重山諸島」である。

変化に富んだ「石垣島」

八重山諸島の玄関口であり、観光の拠点となっているのが「石垣島」。「川平湾」に代表される海が美しいのはもちろん、沖縄県の最高峰「於茂登岳(おもとだけ)」が石垣島にあることからも分かる通り、登りも多く地形が変化に富んでいる。

冬が終わり、草木が伸び伸びと成長し始める潤い初め「うりずん」の季節である3月。太陽が力強さを増し、海は青く輝いて一層美しい。そのエネルギーに満ち溢れた空気を、海で、山で、感じる。最高の贅沢である。

ぜひ訪れてほしいのが「屋良部岳」。東側の上りをアタックして上り切ったところに自転車を止める。徒歩が必要となる場所で大活躍するので、常に持ち歩いているクリートカバーを装着する。少し見つけにくい登り口から険しい急な登山道を10分弱、最後は手も使ってよじ登る。

その山頂に飛び込み台のように岩が突き出ている。その先に立って眺める海と山。まさにこれが石垣島、そう感じられる絶景である。

石垣島の屋良部岳のテラス岩。飛び込み台のように突き出た岩の上から石垣島を一望。風が強かったので、スリルも味わえた。
石垣島のバンナ岳、南の島の展望台。石垣島の山岳アタックルート。目の前に沖縄最高峰「於茂登岳」を望む。

日本最南端のセグメント

日本で最も南に位置するのが「波照間島」である。果ての「ウルマ = 珊瑚礁」という名の由来の通り、大海原にポツンと浮かぶ美しい島である。

普段からSTRAVAで遊んでいる私にとっては非常に興味を駆り立てられるセグメントをこの島で見つけた。「日本最南端のセグメント」という名前の 1 kmにも満たない平坦のセグメントだ。普段は基本的に上りでしかアタックをしない私だが、ここは思わず踏んでしまった。
観光地で記念スタンプを押す感覚である。

ここで一発もがいて、日本最南端の碑で記念撮影。自転車乗りにとって最高の思い出になることは間違いないだろう。

波照間島。日本最南端の碑。今この瞬間、日本で一番南に立っている。

牛の数が人口の10倍!?

石垣島から高速船で南西に30分ほど行ったところに「黒島」という島がある。

島に降り立つと、朝昼晩1日3便しかない帰りの船まではこの小さな島を出ることはできない。5時間もある。

黒島の伊古桟橋。美しい珊瑚の海に桟橋が伸びる。

自転車でもあっという間に回れてしまうこの島では時間を持て余すことになり、そうすると非常にゆっくり時間が流れ出すのである。のんびり海を眺めたり、さとうきび畑の間をゆっくり走ったり、オープンエアのカフェで仕事をしたり。

観光客は少なく、人口も200人強なので走っていてもほとんど人には出会わない。その代わりと言ってはなんだが、とにかく牛が多い。なんと島にいる黒牛は2000頭を超えるらしい。私の中で「黒島 = 黒牛の島」ということで記憶に刻まれた。牛の時間軸で時が流れているからゆっくりできるのかもしれない、と考えてみたり。

黒島では路上でも良く黒牛に出会う。

展望台が山を向いている

八重山諸島で最大の面積を持つのが「西表島」である。イリオモテヤマネコが生息する世界遺産の森を持つこの島は、主に島の東側の外周を走る一本道しかない。往復しても100km程度、島を一周することはできない。ロードバイクで踏み込めるクライミングルートは無く、その山々を遠くから眺めるしかないのである。だからこそ世界遺産の森が守られているのだろう。

西表。海はもちろん美しいのだが、この島では山を見たい。

夕方の船で島に着くなり港の付近を走り回って展望台を見つけた。これまでの八重山諸島とは決定的に違うことがあった。その展望台が山側を向いているのである。河岸にはマングローブが生い茂り、その先には深い森。それを眺めるためにその展望台は存在していたのだ。西表は八重山諸島の中でも「海でなく森を楽しむ島」であることを強く感じた。

八重山諸島の回り方

八重山の島々を訪れるのはもちろん船である。フリーパスを使うことで、お得に回ることができる。3日間から5日間の期間が選べて、全ての航路を自由に乗り降りできる。船会社が2社あり、フリーパスに会社間の互換性がないので、自分のスケジュールと時刻表、目的地の合う会社を選んでパスを購入するのがポイントだ。

輪行袋に入れることで自転車は手荷物として無料で船内に持ち込むことができるので、手軽に持ち運べる小型の輪行袋を持っていると良いだろう。

また、今回訪れた島ではどの港にもWiFiが整備されていた。出発前や到着時に調べ物をしたり、海を眺めながらちょっと仕事を、なんていうのも良いかもしれない。

水牛車が行き交い、まるでテーマパークのように整備が進む「竹富島」、黒島と並びゆっくりと時間の流れ、どの島よりも海の美しい「小浜島」。

小さな島が多いが一つ一つの島に個性がある。もし時間が許すなら、できる限りたくさんの島を訪れて、あなたの「お気に入り」を見つけてみてはどうだろうか。

写真と文:才田直人

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