2023年03月09日
サイクリスト あの日の夢~これからの夢 沖美穂さん(後編)「自分は何をやりたいんだ、自分は何者なのか」
「自転車以外のいろんな知り合いが増えましたね。同級生には当時クレー射撃の選手がいたし、いろんな仕事している人、いろんな考え方の人がいた。落ち着いて考えることが、人生で初めてだったかもしれないです」
ひとつの世界でトップを極めたアスリートでありながら、40歳を超えてから新たな環境に飛び込み、熱心に学んだことで多くのものを得ることができた。
卒論のテーマで選んだのは、多くの自転車選手が悩む股ズレだった。
「競輪学校の時に女子も男子も股ズレに悩んでいて、自分も現役時代に日々なっていました。当時はシャモアクリームを塗るぐらいしか対応策がなかった。それを研究できるのかどうかもわからないので、小笠原先生に相談したら『誰も調べてないし、新規性もある』と後押ししてくれました。始めたらすごく大変でしたね」
「股ズレの予防策としてここ2、3年わかってきたのは、患部をアイシングすること。サドルに座って何時間もすれていると、熱くなりますよね。腫れている熱いところを冷やすのが、みんなができる手軽な安価で予防策になります」
「今でも股ズレについて毎週、養成所の女子に聞いています。1年間の経過や月経との関わりとか調べて、グラフにしています。ウエアはどこのメーカーさんも昔よりよくなっているし、シャモアクリームも種類が増えているので、ナショナルチームの選手が使っているのを紹介したり、体調が悪い選手をすぐに病院に連れて行けるように先生方にお伝えしたり、そういう仕事も少しだけやっています」
頑張っている選手を応援したい
大学院を修了後、JKAの自転車競技振興室に配属された。振興室の業務は、自転車競技スポーツの普及および振興に関する事業を行うこと。そのひとつは、伊豆に拠点を置き国際大会の出場に向けてトレーニングをする競輪選手がメディア露出するときの取材の調整だ。
「東京五輪前からトラックのナショナルチームや競輪の注目度が上がっていて、取材もたくさん来るようになりました。東京のJKA本部の広報が、ここ(静岡県伊豆市)から遠いので、自転車競技振興室が間に入ってコーチと選手の調整をしています。私がその担当をしていて、取材日を設定したりしています」
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。