2023年03月09日
サイクリスト あの日の夢~これからの夢 沖美穂さん(後編)「自分は何をやりたいんだ、自分は何者なのか」
かつて選手として活躍し、引退後のセカンドキャリアでも様々な分野で精力的に活動を続ける人々の足跡をたどり、当時の思いや今後の展望を聞く連載。第4回は女子ロードレーサーのパイオニア、沖美穂さん。全日本選手権11連覇、3度の五輪出場を果たし、ヨーロッパで日本人初の女子プロロード選手として活躍。引退後も日本競輪学校の教官、大学院進学など様々なことにチャレンジを続けている。
INDEX
現役最後の4年間でセカンドキャリアを考える
アドバイザーから競輪学校教官へ
新たなインプットを求め、大学院へ
頑張っている選手を応援したい
恐れずにヨーロッパに挑戦してほしい
現役最後の4年間でセカンドキャリアを考える
ヨーロッパで活動している中で、引退後のキャリアについて考えるきっかけがあった。
「2003年ごろ、オランダのチームメイトに『将来、何するの?』と聞かれて 『何も決めてない』と言うと驚かれました。ここで自転車やっている人たちは、将来何やるか決めている。マッサージ師になるとか、医者になるとか決めていて、なぜスポーツだけ、自転車だけで生きていけるのと考えているのかって言われて。当時、セカンドキャリアって言葉は知らなかったけど、自分は自転車のことばかり考えていて、あとのことは何も考えてませんでした」
2004年アテネ五輪後には、個人コーチをお願いしていた高橋松吉さんと次の五輪まで現役を続けるのか話し合った。
「私はまだやりたいと話したところ、高橋さんからもう4年間やるとしても4年後に自分は何になるんだ、どんな仕事するんだ、ということも考えて4年間過ごせ、もうそれ以上コーチとして見ないから、と言われました」
「そこからずっと考え始めましたね。チームメイトもマッサージを一生懸命勉強しているのに、自分には何もなくて恐くなってきて。辞めた後はどうやって生活していくのかな、アルバイトかな、とかいろいろ考えました。いろんな本を読んだり、自分は何をやりたいんだ、自分は何者なのかとかつねに考えるようになりました」
「最初の年は見つからないですよね。でも、自転車しかやってないから、頭の中には自転車関係の何かがいい、じゃあ、何ができるんだってことをちょっとずつちょっとずつ考えて。当時の私はヨーロッパの女子のレースのことをちょっとは知っていると思っていたから、それをなるべく伝えたい、還元したい。レースのことだけじゃなく、生活のことでも何でも伝えたいと思うようになりました」
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。