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2019年07月31日

【Bianchi】ハイエンドモデル オルトレXR4ディスクを徹底インプレション

さて、イタリア・ベルガモでのビアンキ特集も最終章。
Granfondo Felice Gimondi Bianchiには、ハイエンドモデルのオルトレXR4ディスクを駆り参戦。レーススピードで感じたこと、出場までのライドする日々で感じたことをレポートしたい。

と、まずオルトレXR4ディスクとは。
ビアンキのロードバイクにおけるロードバイク部門のハイエンドモデルだ。最高のパフォーマンスを提供するために設置された部門“レパルトコルサ”から放たれた、妥協なき一台である。
最大の特徴はカーボンマテリアルとしては、独自の繊維構造と粘弾性を有し、 フレームとフォークの剛性と強度を向上させながらも最大80%の振動を除去することができるという“カウンターヴェイル”を採用しているモデルだ。このカウンターヴェイルを用いている自転車メーカーはビアンキのみ。他のスポーツでは例えばテニスや、バトミントンなどの高級ラケットの素材として用いられている。

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ビアンキ・オルトレXR4ディスク(写真のバイクの一部のパーツは、実際に販売される構成ではありません)
フレームセット、VISION Metron 5D ACRハンドル付属 価格(税抜):53万8000円
シマノ・デュラエースDi2 価格(税抜):158万円
シマノ・アルテグラDi2 価格(税抜):99万8000円
カンパニョーロ・スーパーレコード 価格(税抜):148万円
(価格は2019年現在)

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フレームセットに付属するステム一体型カーボンハンドルのヴィジョン・メトロン5D ACRは、フロントブレーキホースや電動コンポならシフトケーブルを内蔵することができる。カバーを外すとその構造があらわに。

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ハンドル高の調整ができるコラムスペーサーは2ピース構造。半分に分かれるので外しやすい。ハンドルをステアリングコラムから抜かなくても高さの調整ができる。ディスクブレーキ専用のフロントフォーク。12mmスルーアクスルを用いる。

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シートクランプをフレームに内蔵する構造は、リムブレーキのオルトレXR4と同様。BB規格はBB86だ。

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上って下れる頼もしいオールラウンダー
あらゆる場面においても抜群の性能を誇るオルトレXR4のディスクブレーキタイプということで、期待値が自然と高まってしまう。もはや試乗する必要がないのではないか、と感じるが…..、ディスクブレーキを搭載したことで、フレーム各部の設計もブレーキ機構が正常に機能することを最優先に設計しなおされているはずだ。

ディスクブレーキともなるとどうしても構造に過剰な剛性が加わってしまい、乗り味に影響を与えてしまう。フォークに関してもリムブレーキの場合は、「剛性が高ければ高いほどいいだろう」と考えていたが、剛性が偏って上ってしまうと大きくライディングフィールを変えてしまうのだ……、ということがディスクブレーキ黎明期には感じたことだ。
ここ最近では“リムブレーキのバイク”に近づけるような雰囲気=慣れ親しんだライディングフィールをかもしだすバイクが増えており、それはそれで違和感がなくて素晴らしい。
むしろオルトレXR4は、いわゆるリムブレーキの良い感じのバイクのパフォーマンスを越え、さらに頼もしさを感じさせるのである。
フォークやリアトライアングル、今回においてはホイールも含めて非常に堅牢な作りに感じる。まさにレーシングスペックといったところだ。歪みをほとんど感じさせたいため、タイヤの挙動が手に取るようにわかる。写真のオルトレXR4ディスクは、実際にグランフォンドを走った仕様だが、比較的低圧で心地よく乗れたヴィットリア・コルサ グラフェン2.0を採用。しなやかなタイヤの路面をつかむ感触が心地よい。雨天で抵抗が低い路面でも安心して身をまかせることができた。フォークのクオリティが高く繊細なコントロールも可能だし、不意を突かれて悪路に突っ込んでしまっても否しやすいという点が、不慣れな地でも全力を尽くせた一因といえるだろう。
兎にも角にも完成度が高い。ファクトリーでも語っていたように、デザインを大事にするものの妥協点をクリアしたパフォーマンスを発揮してこそ、自信をもって世へ解き放つことができるというもの。
したがってコーナリングの精度も非常に高い。ハンドルからフォークの先、ホイールに至るまで一切のズレがないように、スムーズだ。スルーアクスルによってもたらされる剛性感というものもあるだろう。しかし局地的ではなくモジュール全体から、高精度さが伝わってくる。
堅牢かつ高精度。よって下りでの安定性は特筆モノ。下りで余裕が生まれるので、呼吸を整えて次の上りへの準備がしっかりとできる。

天候も問わず、上り下りも苦にしない、頼れるバイクなのである。

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乗っていて不快に感じるいくつかの要因のうち、大きなモノは振動だろう。これが想像以上にライダーの体力を奪いライドするモチベーションを下げてしまう。
ビアンキの上位機種に用いられているカーボン素材は、カウンターヴェイルという振動を除去する特性が高い素材であるが、これが顕著に感じられることは言うまでもない。もちろん100しかないパワーが105になったり増幅されることはないし、体力を数値化して客観的に見たわけでもないが、体を蝕む振動が減衰されることで、ライドが楽しく感じられるのは確かだ。比較的高剛性化してしまう傾向があるディスクブレーキロードにおいては最適の素材ではないだろうか。

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ヴィジョンのハンドルバー メトロン5D ACRは、フレームにマッチしたフォルムだ。ハンドルも大きなストレスがかかる場所であるので、トータルで設計するのが望ましいだろう。悩ましいのはハンドル形状で、好み通りの形であれば問題はないが違和感を覚えると逆にストレスとなってしまう。
メトロン5D ACRはエアロ形状なので好みはわかれるだろう。ブラケットやドロップ部の握り心地に不満はないが、個人の感想ではバーテーブを巻いていないバーの上部分は滑りやすく滑り止めをつけるなど工夫をしてライドを行った。こうしたちょっとした工夫でライドクオリティは格段にアップするのでおためしあれ。

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箱型ではなく、オーストリッチのOS500で行けるかどうかチャレンジ。結果としては成功するわけだが、ディスクブレーキロードだからこその問題に直面するのであった

空輸の際にはバイクパッキングをする必要がある。ディスクブレーキだからこそ、という場面もあった。ひとつは、ブレーキキャリパーに挟むダミーローターは必須ということ。梱包前でよかったが、ホイールを外しローターもなにも挟まない状態でリムブレーキの感覚でレバーをあろうことが握ってしまった。するとピストンが押しだされてしまい、パッドが戻らなくなってしまうのである。工具でピストンを押し戻す作業となるが、まさに無駄な作業を増やしてしまうことになった。
ディスクローターはもちろんホイールから外す。100円ショップなどで売っているケースと梱包材を使って工具とともに封入するとコンパクトにまとめられる。

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このオーストリッチ製のダミーローターは優れもので、輪行時にずれないように輪ゴムで固定することができる。

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ローターは外してケースに工具とともに

また、リアエンド保護は過剰なまでに。タイオガ製のディスクブレーキ用リアエンドホルダーをチョイス。ユニバーサルなエンド幅対応で、微調整ができるのがよい。
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スルーアクスルを通してエンドを固定するタイプのリアエンドホルダー。樹脂なので軽量

最大の困難は、ハンドルバーがフレームから抜けないことであった。なぜなら油圧ブレーキホースがハンドル内部を通り、コラムを経由してフレームに内蔵しているから。ハンドルもステムと一体型なので折り畳むこともできない。
深刻かに思われたが輪行バッグへバイクを正立して入れることで収めることができた。チェーンやチェーンリングが真下になるため、それなりの保護をする必要があるが、なによりも収まった安堵感のほうが大きい。

ディスクブレーキロードながらもシンプルにまとめている機構であることも梱包のしやすさにつながっているだろう。シンプルながらも外観のまとめかたは、スタイリッシュだ。

ディスクブレーキ化によって、取り巻く環境がわずかに変化している。しかしそれを補い余る、“ライドする楽しさ”をオルトレXR4ディスクから感じ取ることができた。

 

問い合わせ:サイクルヨーロッパジャパン
関連URL:http://www.japan.bianchi.com/
Granfondo Felice Gimondi Bianchi https://funride.jp/events/granfondo-felice-gimondi-bianchi2019/

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