2026年06月11日
【第22回Mt.富士ヒルクライム】大前翔さん、大会新記録でスバルラインを翔ける!

6月7日に開催された「第22回Mt.富士ヒルクライム」は、様々な場面で好記録が生まれた。主催者選抜クラス男子は大前翔さんが史上初の55分台となる55分54秒の大会新記録で初優勝。医師としての顔も持つ大前さんならではの論理的なトレーニングとアプローチで、栄冠をつかんだ。各クラス表彰台ギャラリーもお届け!
富士ヒルを制した理論派ドクター
主催者選抜クラス男子は、オープン参加6選手を加えた153人がスタート。富士山五合目を目指す24kmの戦いへと旅立った。

序盤から数人がアタックを試みるも大きなリードは奪えず、やや落ち着いたペースになる場面も。徐々に集団の人数が絞られて30~40人となる中、三合目付近で5人が抜け出す。メンバーは2018年優勝の田中裕士さん、成田眸さん、大前翔さんにオープン参加のヨナス・ラップ選手、ベンジャミン・ダイボール選手。
この先頭5人から、ラップ選手が単独アタック。チームメイトのダイボール選手が合流し、そのまま2人で逃げ続ける。最後はラップ選手が先行し、55分14秒の驚異的なタイムでトップフィニッシュした。
その後方では、選抜男子の優勝争いが展開された。大前さんの言葉で振り返る。
「オープン参加の2選手がアタックして、選抜クラスの選手たちは見送るかたちになって別のレースになりました。田中さん、成田さんと3人で走っていたんですけど、3人の中で僕が1番スプリント力あるのを2人ともわかっていたので、ちょっと優位に立ち回って脚を温存しながら走っていました」

このまま3人のゴール勝負になるかと思いきや、霧の立ち込めた終盤に新たな展開を迎える。
「田中さんのペースアップで成田さんが遅れて、ラスト1kmぐらいまで2人でそのまま行きました。『このまま逃げ切りたいね』なんて、田中さんと話していたんですけど、最後に10人ぐらいの集団に追いつかれました。その小集団のスプリントで、僕が勝ち切りました」
一度、追いつかれながらもスプリントを勝ち取る強さを見せた大前さんが、2度目の富士ヒル挑戦で王座に。タイムは55分54秒とこれまでの大会記録56分21秒(2021年、池田隆人さん)を5年ぶりに塗り替えるコースレコードとなった。
今年はフィニッシュタイム55分以下の新たな表彰「SUB55(チタンリングと賞金10万円)」が設定され、大前さんもこれを狙っていたという。
「55分切ることだけを意識していました。手元(計測)で55分55秒ぐらいだってわかってたので、ちょっと残念でしたね。比較的ハイペースだったと思うんですけど、緩む場面もあって展開次第なところもありました。でも僕自身、登坂力がもっとあれば55分切れる可能性は十分あると思うので、また来年以降の課題にしたいと思います」

大学を休学し愛三工業レーシングチームで3年間選手として活躍した大前さん。現在は医師として働きながらホビーレーサーとして活動し、昨年はツール・ド・おきなわ市民200kmで優勝。そして、新たに富士ヒルというもうひとつのアマチュアのビッグタイトルを手に入れた。
「嬉しいですね。これだけ規模の大きいイベントで勝てると、それだけ反響もありますし。ヒルクライム、ロードレースといろんなカテゴリーで勝つことができるのは、僕自身コーチもやっているので、自分自身のトレーニングメソッドがちゃんと正しい方向を向いて進めている証明にもなっていると思うので、今後もいろんなカテゴリーのレースに挑戦して、自分で結果を出していきたいと思います」
愛三時代はスプリンターとして活躍。栗村修さんからも「スプリンターじゃなかったの?」と突っ込まれていたが、「登坂力とスプリント力はトレードオフなところがあって、今年は登坂力にフォーカスしてやってきたので、スプリントは若干落ちているんですけど、しっかり自分のトレーニングメソッドをやり遂げたという狙い通りです。そのひとつとして低酸素トレーニングを取り入れて、低酸素テントの中で寝て低酸素状態でメニューをしたりしていました」と述べている。

仕事との両立についても「職場がすごく自分の自転車活動を応援してくれているので、トレーニング時間もしっかり取れています。医者として人間の体を理解するところと、自転車のトレーニングの勉強が日々の臨床に生きるところもあって、相乗効果でいいサイクルに入っている気がしているので、今の生活はすごく充実していて楽しいですね」と満足そうな表情を見せていた。

参考記録55分14秒! オープン参加のラップ選手とダイボール選手が驚異の走り!
今年の富士ヒルのハイスピードバトルに一役買ったのが、オープン参加した中国のチーム「FNIX – SCOM – Hengxiang Cycling Team」に所属するヨナス・ラップ選手とベンジャミン・ダイボール選手だった。
ラップ選手は、参考記録ながら従来のコースレコードを1分以上短縮する55分14秒でフィニッシュ。ドイツ出身のラップ選手は、ヨーロッパのUCI2カテゴリーのステージレースで総合優勝経験がある実力者。今回初来日で、富士スバルラインは前日に試走したという。
「昨日は太陽が出ていて気持ちよくて素晴らしかった。今日はちょっと寒かったね。でもいいコースだったよ」
この日は序盤から何度もアタックする積極的な走りを見せた。
「素晴らしい上りだから楽しもうと思ったし、できる限りハードに走ろうと思った。ベン(ダイボール選手)と2人だったので、作戦的には序盤からスピードを上げていこうと思った。ラスト10kmで単独先頭になったけど、ベンが来ているのが見えたので彼を待って、最後は一緒にスピードを上げたんだ」

惜しくもSUB55には届かなかったが、「(SUB55について)知っていたけど、最後はこれ以上行けなかったね。序盤ちょっとペースが遅くて、僕がアタックしても集団に捕まってまたペースが落ちた。また次回だね。日本は初めてだけど、とても楽しかったよ」とちょっと悔しそうながらも、笑顔を見せていた。
ダイボール選手は、ラップ選手に遅れること10秒あまりの55分25秒で2番手フィニッシュ。オーストラリア出身のダイボール選手は昨年までの5シーズン、TEAM UKYOやヴィクトワール広島で走り、日本でもお馴染み。その間、ツアー・オブ・ジャパンで総合2位2回、総合3位2回を獲得するなど活躍してきた。
「とてもきつかったよ。富士のこの上り(富士スバルライン)は初めてで、素晴らしいコースだけどとても長かったね。僕たちは一定のペースでできる限り速く走ろうとしたけど、序盤はちょっと遅かった。僕は数カ月ぶりのレースだったけど、ヨナス(ラップ選手)が調子よくて、勝ててよかったよ」

2選手の走りが、今後の富士ヒルの記録がどこまで伸びるのか可能性を示してくれたかもしれない。
55歳が見せた伸びしろ! 主催者選抜クラス女子で大石由美子さんが歓喜の初優勝!
主催者選抜クラス女子は、17選手が出走。昨年2位の大石由美子さんが前半から飛び出し、2位以下に4分以上のタイム差をつけて初優勝。霧に包まれた五合目にガッツポーズでフィニッシュした。タイムは1時間08分08秒で、このクラスの優勝タイムとしては過去最速となった。

「2合目手前ぐらいからずっと独走で、レースであるということをちょっと忘れそうな感じでした」
現在55歳。5回目の富士ヒル、2回目の選抜クラスでのレースで、チャンスをつかみ取った。
「年齢的にも主催者選抜で優勝することはこの先ないかなと思ってたんで、途中で先頭に出てからはこれが最後のチャンスかなと思いました。トラブルなく1位でゴールできたらなと思って走っていて、1位でゴールできたんでもう嬉しかったですね」
今年は練習方法も見直し、新たにパワートレーニングにも取り組んだ。
「今までは適当に気の向くままに走ってたんですけど、今年に入ってからパワーメーターを使ったトレーニングを友達が教えてくれて、メニューを組んでくれたんです。その通りにやったら、一気に伸びました。本当にその友達に感謝です!」
年齢に負けじと、まだまだ大石さんの挑戦は続く、
「去年まではヒルクライムがメインだったんですけど、今年はロードレースも始めてそっちの方でも頑張っていきたいです。もし出られるなら、ニセコ(グランフォンド世界選手権)で頑張りたいです」

木下友梨菜さん、1時間04分40秒で悲願の女子初ゴールドリング!
2023年に女子のコースレコードを10年ぶりに更新する1時間06分44秒をマークし、一躍注目の存在となった木下友梨菜さん。今回は自らの記録を更新すべく2年ぶりの富士ヒルに挑んだ。
一般クラスの第3スタートから出走し、序盤は単独でレースを進めた。1合目付近でゴールドリング獲得を狙う選手たちの集団に合流すると、状況に応じて先頭交代しながらペースを維持。終盤は「離れたら終わり」というギリギリの状態の中で集団に食らいつき、1時間04分40秒でフィニッシュ。悲願のゴールドリング獲得と富士ヒル女子カテゴリーの大会記録を塗り替えた。

「2023年と2024年は1時間6分44秒(2年連続同タイム)で、ゴールドリングに手が届きませんでした。今年はこの日のために準備を続けて、練習が苦しくてもゴールドリングのことを思い出しながら耐えました。最後のトンネルを過ぎたあたりで『行けるかも』と思い、悲願を達成できて本当にうれしかったです。今日は自分の中で一番の走りができたと思います」
併せて山岳スプリット賞も獲得した。本人は「まったく意識していなかった」と振り返るも、大沢駐車場を過ぎたあたりから視界が暗くなって、酸欠のような状態になるまで追い込んでいたという。「一緒に走ってくれたみなさんにしがみついていたから獲れた賞だと思っています」と、集団をともにしたサイクリストたちへの感謝を口にした。どの区間を切り取っても速さを発揮した走りだった。


表彰台フォトギャラリー



<男子15~18歳>優勝:岩井創哉さん(Team 一匹狼)、2位:阿部巧太郎さん(vite jambe)、3位:佐藤 悠陽さん




(左から)<男子35~39歳>優勝:青木達徳さん(天照)、2位:高橋知明さん(RABBIT FOOT)、3位:茶円和博さん(BIORACER DREAM TEAM)

<男子50~54歳>優勝:森本誠児さん(SW230)、2位:佐藤忍さん(変態クライマー)、3位:嶋村鉄也さん(3W/コソ練シ天王)

<男子55~59歳>優勝:園部秀樹さん(伏虎自転車俱楽部)、2位:田原大助さん(GBtL)、3位:武沢宏典さん(NICO-OZ/モー堀)

<男子70歳以上>優勝:中田吉彦さん(SWIFT.R.T)、2位:松原弘典さん(Eoro-works RC)、3位:平岩秀夫さん


<女子30~34歳>優勝:石井嘉子さん、2位:平柳美月さん、3位:新開由樹さん

<女子35~39歳>優勝:嶋野真美さん(SUNZOKU/木曜夜練)、2位:築城光恵さん(YES YESお姉さん)、3位:藤澤晴江さん(ルモンヒルクライムチーム)

<女子25~29歳>優勝:木下友梨菜さん(鈴なり妖怪 鈴)、2位:市原 知奈(EMU SPEED CLUB)、3位:遠藤杏奈さん(GIANT/Liv RTF)

<女子50歳以上>優勝:西野 知香子、<女子45~49歳>優勝:中山 由美子さんNEBcycling、2位:市村愛さん(セマスR新松戸)
取材:光石達哉 写真:小野口健太
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第3回八ヶ岳高原ロングライド 参加者募集中
2026年10月4日開催の八ヶ岳高原ロングライドは富士ヒル公式のイベントとなりエントリーは好調です。
ヒルクライムは他者ではなく自分との競走であり、この八ヶ岳高原ロングライドもレースではなく、自分と向き合うサイクリングイベントです。
イベントのテーマはRoad to 富士ヒル。コーチには長らくコースレコードを保持していた別府匠さんをお招きし、富士ヒルまでの過ごし方をお伝えします。会場レイアウトも一新し皆さまをおもてなしします。
次回の富士ヒルへのスタートはここ八ヶ岳から!
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スルガ・セゾンCUP2026 in富士スピードウェイ 参加者募集中
富士スピードウェイを舞台とした自転車イベント! 仲間とワイワイ、ママチャリをタスキ代わりに2時間のエンデューロレース「ママチャリ駅伝」、スポーツバイク対象の2時間エンデューロの二部構成です。真夏の思い出にいかがでしょうか。開催日は8月29日(日)
申込期間 2026年5月19日(火)~7月29日(水)
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。





