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2022年08月03日

才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅”第八回 / 仕事の合間にライド。ライドの合間に仕事。

才田さんの日常はこれまでの連載のとおり、好きなところへ赴いて仕事とライドを両立するスタイルを確立しています。しかしタイミングによっては、こんなことが起きてしまいました。才田さんの自転車旅ワーケーションだからこそといったエピソードをお届けします。

INDEX

▷変化する通勤スタイル


▷呼び出しは突然に


▷谷底だともっと大変!


▷レースが終わって仕事に直行


▷変化する通勤スタイル

「エクストリーム通勤」という言葉を耳にしたことはあるだろうか?

仕事前に驚くような距離やハードな内容のライドをしてそのまま自転車で出社するようなライディングスタイルのことである。

私も現在のような旅をしながら各地を転々とする生活スタイルを始める前は、東京郊外の自宅を出発して、丹沢や奥多摩を経由したり、河川敷でボリュームのあるトレーニングを実施してから出社したりしていた。

東京のロード乗りの定番である国道20号「大垂水峠」。良くここから都内のオフィスに直行していた。

真剣にレース活動をしている社会人ライダーでは比較的一般的だと思う。もしかしたら私の周りにいる社会人ライダーが少しおかしいのかもしれないが。

▷呼び出しは突然に

現在の自転車旅を主軸にした生活スタイルでは、出社するということ自体が無くなった。朝起きたらそこはオフィスであって、仕事が終わったらそこは自宅である。フレックスタイムの勤務形態なので、時間の決まったミーティングのような外せない仕事が入っていないタイミングでライドに出発する。ただ稀に、緊急の仕事が差し込まれることがある。

印象に残っている「スクランブル出勤」を思い出してみたいと思う。

2020年の夏。今の生活スタイルのきっかけとなった長野市滞在中のこと。朝一番で戸隠の山々へと走りに出かけていた。

一本タイムアタックを終えて、登り切った先にあった展望台でアルプスを前に充実感に浸りながらスマートフォンに目を落とすと、メッセージが入っている。

「この後ミーティングが入ったんだけど出席できる?」

「今、標高1000mの山の上です。急いで降ります。」

戸隠へと登る大望峠。山頂で一息ついてスマートフォンで仕事の連絡を確認。

往路は1時間以上かかった道のりも復路は下り基調、半分強の時間で帰れるだろう。Mapアプリで最短ルートを確認して急いで帰路へ。このタイミングで雨も降り始める。こんな状況での悪条件は逆に集中力が高まったりもする。

しかし案内されたルートは恐ろしい激坂だった。それを雨の中下る、集中はしているものの、ダウンヒルが下手でビビりの自分は完全に腰がひけた。

「安全第一。遅れたらごめんなさい。」

結果的に間に合ったが、知らない土地での緊急呼び出しは気をつけないとな、と思った。まぁ、気をつけようがないのだけれど。

この時に下った坂は、後日チーム合宿時に上ったのだが、やはり半端ではないパンチのあるクライムだった。強烈な上りとの忘れられない出会いとなった。

長野市街へと下った激坂「七曲がり」。長野を訪れる激坂が好きな方は是非登ってほしい。 https://strava.app.link/YB7Z7EfmTrb

▷谷底だともっと大変!

山の上で仕事の連絡に気がついた時はまだ良い。

昨年、鈴鹿に滞在していた時に鈴鹿山脈の安楽峠という印象に残る名前の峠をアタックした時のこと。反対側に下ったところで、緊急の仕事の連絡。あぁ、山頂で折り返して戻れればどれだけ楽だったか。

幸い、標高の高くない国道一号線の鈴鹿峠で宿まで戻ることができたので、大きな苦労をすることはなかったが、もっと深い谷底だったら大変だっただろう。下る前には仕事関連の連絡はチェックした方が良い。

鈴鹿山脈の「安楽峠」。インパクトのある名前。
木々に囲まれた雰囲気の良いクライムが楽しめる。

宿に戻るのが間に合わない!

初めから宿ではなくて、外からミーティングに出席することを決めている時は、ルート上のカフェなどをチェックしておく。そして仕事の時間に合わせて余裕を持って到着できるように計算する。

基本的に人が住んでいないエリアの方が自転車乗りにとっては走りやすいので、「仕事場所」を見つけておくことは重要だ。

ただ緊急で外からミーティングに出なければならなくなったことがある。宿まで帰ることが不可能と判断したケースだ。

30分後からミーティングに出られるか?との連絡を受けたのが宿から50kmくらい離れた地点。

「戻るのは無理だ」

モバイルルーターもイヤホンも持っていない。すぐに周囲を検索する。良いカフェはないか?…ない。田舎で都合よくインターネット環境のあるカフェが見つかることなんてなかなかない。

しかし、カフェもコンビニもないような場所で、WiFiが使えるレストランも併設した立派な施設が見つかることがある。自転車に乗る方ならよく立ち寄るスポット「道の駅」だ。

イヤホンもないので、ある程度音声が漏れても大丈夫な屋外のベンチに腰を下ろす。青空の下、スマートフォンでミーティングに入る。慣れた社内のメンバーだけでなく、初対面の相手もいるので緊張する。

「出先からの出席で、しかもサイクルジャージですみません。」

何とかなっていると言えば、何とかなっているのか?これで許されているあたり、つくづく恵まれた職場だなと思う。

道の駅でミーティングに出た後は、この日の目的地である石巻の「上品山」にアタック。山頂は絶景だった。

▷レースが終わって仕事に直行

レースが終わって仕事に直行

今年はレースのあとも外せない仕事が入っているケースが多い。

播磨でのJPT開幕戦のあとは、レース終了の数時間後から外せないミーティング。

東京へ帰るチームメンバーと分かれて、私はこの遠征でチームみんなで泊まっていたホテルに延泊。レース会場から近いので難なくミーティングにも対応できる。

そう、私の現在のライフスタイルは職場のニーズにもマッチしているのだ。と、都合よく考えて、以前にも増して仕事と趣味の境界線がどこにあるのかわからないような、私の旅は続いていく。

写真と文:才田直人


才田直人の“自転車ワーケーション放浪旅” 連載中
第一回 プロローグ
第二回 旅の流儀
第三回 フェリーで広がる可能性 ~奄美群島~
第四回  自転車で訪れる八重山諸島
第五回  出発の地、目的の地、それは『レース』
第六回  東北沿岸を走る 東日本大震災から11年
第七回 ワーケーション自転車旅の装備

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