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2022年06月09日

【Road to Kansas アンバウンド・グラベルへの挑戦記】#6 曇りのち雨のち晴れの322km

Garmin Unbound Gravelに出場した高岡亮寛さん。コロナ禍で出場できなかった期間を含め、およそ2年間の準備期間を経て、ようやくスタート地点に立つことができました。結果はいかに。そしてこれから。


▷「スタート直後はナーバス。そして機材トラブル」


▷「ライバル・カズ。そして雨と泥、ハンガーノック」


▷「世界は広い。日本にもカルチャーを広げたい」


▷「スタート直後はナーバス。そして機材トラブル」

スタートを待つ間にVESPAを飲む

スタート
定刻から少し遅れて6:06AM頃にスタート。200マイルには1354名がエントリー。
道幅広くてもこれだけの人数が一斉スタートで密集度が高く先頭付近までは出られないままグラベルに突入。
グラベル区間でも道幅いっぱいに選手が密集していて前に出られない。道幅広くても走りやすいラインは限られている。大きな落車が自分のすぐ近くで2回。最初の1時間はものすごくナーバス。

6:06AMにレーススタート

序盤でメカトラ
スタート後50分もしないうちに左シフターでシフトダウンできなくなるメカトラ。無線変速なので電池切れか?と思ったが電池残量は十分。固定ギアで登るしかなく、急勾配は押し歩き。序盤からトラブルで目標タイムなどは吹っ飛ぶ。けど絶対に320kmを走りきってやるというヤル気だけは一瞬たりとも失わなかった。

トップギア固定で走っている。まだ自転車もチェーンもきれい

メカトラから復活
スマホ携帯していたのでAXSアプリから変速設定を変えられる事に気付き、右レバーをシフトダウンに割り当て上りも乗車できるようになった。その為平地・下りではケイデンス上げるしかなくペースは上がらず。
その後にエアロバー先端のサテライトスイッチ(Blips)も使える事に気付く。変速機能を割り振る事により右側シフターだけで両方向変速可能になった。両方向への変速という、当たり前だと思っていた事ができるようになる幸せを噛みしめる。

▷「ライバル・カズ。そして雨と泥、ハンガーノック」

CP1
125km地点Eurekaが最初のチェックポイント。4時間16分ほどで到着。サポートの福田さんから水と補給食を受け取るが、あまり消費出来てない。気温も低く給水も多くないので1Lのドリンクを入れていたキャメルバッグはそこで渡した。補給とチェーンにワックス塗布、トイレを済ませて3分程度の滞在で直ぐに出発。

カズと雨と泥
日本人参加者の中では1番になりたいと思い勝手にライバル視していた山本和弘(カズ)氏をCP1の直後に抜かす。その後雨が降り身体が冷える。ヤバいと思ったが幸い上り基調で低体温には至らず。ただ降雨区間でマッドな路面が出現。泥というよりほぼ粘土で、乗車は絶対ムリ。押しても粘土がホイールとフレームにまとわりつき車輪が回らなくなる始末。もう笑うしかないという感じで押して泥を手で拭って担いでまた押して、と繰り返してなんとか粘土区間をクリア。

粘土区間前。速い選手がいたらしばらく協力して走る

ブレーキ調整とハンガーノック
粘土区間の後に雨はやみ晴れ間も出てきて快調に飛ばす。右折箇所でブレーキしたら全く効かず。機械式ブレーキの弱点が出た。泥によりパッドが減ってレバーをいっぱいに引いてもディスクローターに届かず。止まって工具を出して前後ともにブレーキパッドの出しろを調整。その後補給食をあまり食べられていなかった影響が出て、CP2まで30kmくらいというところでハンガーノック。慌ててパラチノース入ドリンクやポケットの補給食を食べるが、足りない。みるみるペースダウンして虫の息になっていたところでファットバイクの参加者を抜いたので、状況を説明して補給食を恵んでもらった。これで生き返り、255kmのCP2に無事到着。

1回目の粘土区間を経た自転車

CP2〜フィニッシュ
補給を多めに調達してボトルも2本新しくし、6分ほどの滞在で再出発。残りは65km。しっかり補給した後は快調に飛ばせる。10時間になろうとしてるが、身体は全く好調で、良いペースで延々続くグラベルのアップダウンをこなす。全行程の95%はグラベルで、ほぼ舗装路はない。

補給食をたくさん持って、ラスト2.5時間へ

何らかのトラブルで止まっていた選手を抜いたら直後に追いついてきたので2人でフィニッシュを目指す。なんでこの位置で走っているの?というほど力強く速い。最後の1時間はほぼグラベルだけどAv 35km/h。
最後まで力を出し切ってフィニッシュする方が良いだろうと思い、グラベルが終わり舗装路に入ったラスト1.5kmくらいにある小さな丘で全力のアタック。そのままフィニッシュまでハイスピードで出し切る。
322kmのグラベルを11時間35分で駆け抜けた。

残り15kmを切っている

▷「世界は広い。日本にもカルチャーを広げたい」

Photo ©︎Snowy Mountain Photography / ©︎Makoto.AYANO/cyclowired.jp

リザルト
全参加者中133位。40-44歳カテゴリーで14位。これが45-49歳だったら6位に相当するタイム。来年は45歳なので、Ageカテゴリーでの3位入賞というのは良い目標だ。
もっと上位にいけるんじゃないかと思っていたが、世界は広い。速いやつはたくさんいる。最初の挑戦としては悪くないと思っている。パンクなし・落車なしで走りきれた事が何よりも嬉しい。

終わりに

Dirty Kanzaという名前の時から絶対に出てみたいと思い、それが2年ごしで実現し、相応に準備して存分に楽しめた。
今回経験したグラベルイベントというカルチャーには大きな可能性を感じた。今回の挑戦に限らずだが、多くのスポンサー・サプライヤー様に支えてもらって自転車活動を楽しませて頂いているので、これをもっと日本にも広めていきたいし、それが使命だと思っている。

皆様どうもありがとうございました。



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著者プロフィール:高岡亮寛(たかおかあきひろ)
1977年神奈川県生まれ 中学時代にサイクリングを始め、高校・大学時代は主にサドルの上で過ごす。 大学時代はインカレロードレース優勝。就職を機に競技を離れる。
社会人生活が落ち着いた2007年より競技を再開し、以降アマチュア国内最高峰 のツールドおきなわ市民210ロードレースで6度の優勝。
2017年より世界にも挑戦し、グランフォンド世界選手権にて3度の表彰台。 2020年には自転車での日本縦断ギネス世界記録を更新。
近年はロードレースのみならずシクロクロス、ブルベ、グラベル、MTBなど、 自転車遊びを様々なジャンルに拡大。 2019年に金融業界を離れ、2020年に目黒区でRX BIKEを開業。
ショップ経営と自転車遊びの融合を目指し精力的に活動中。

写真と文:高岡亮寛
Twitter:@RX_Takaoka
関連URL:UCI Bongabon Gravel Philippines https://gravelphilippines.com
Rx Group https://roppongi.express/


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