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2020年03月17日

【Mt.富士ヒルクライム】歴代チャンピオンに聞く 17th.富士ヒル 選抜クラス展望 1/3

新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るい、様々な場面で自粛を余儀なくされています。気分も落ち込んでしまいますが、6月の富士ヒル開催のころには収束していることを願っています。そのために今はじっとこらえる時期ですね。来たるべき時に備えて力を貯めておきましょう! 

こんなタイミングではありますが【選抜クラスxJプロツアー】によるレースはどんな展開になるのか。
過去に富士ヒル選抜クラスを制したことのある森本誠さん(第13回/2016年)、兼松大和さん(第14回/2017年)、田中裕士さん(第15回/2018年)、そして「出場するならば」優勝候補筆頭に挙げられる、乗鞍ヒルクライム2連覇(2018/2019年)の中村俊介さんに、同様の質問をしました。今回の取り組みについて、またレースへの意気込みとは。
この長編インタビューを3回に渡ってお届けします。三者三様とは言いますが、興味深い回答が得られました。彼らのコメントを元にどんなレースになるか予想してみましょう。第16回大会選抜クラス優勝 佐々木遼さんのインタビューはこちら

 

Question.
Q1.この制度の変更を最初に知ったとき、どんな印象を持たれましたか?
Q2.出場するとしたらどんな対策をしておきますか。
Q3.どんなレース展開になるか予想をお聞かせください。
Q4.選抜クラス・Jプロツアーそれぞれから、もっとも脅威と感じている選手を1名ずつあげてください。
Q5.たとえばアライアンスを組むなどの考えも検討しますか?
Q6.このレースにむけて抱負・目標を挙げてください。
Q7.レースは楽しみですか? それとも回避したいですか?

 

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第13回大会選抜クラス優勝 森本誠さん PHOTO:うさみたかみつ

Q1.この制度の変更を最初に知ったとき、どんな印象を持たれましたか?

森本誠さん(以下、森本)「Jプロツアーも富士ヒルクライムの人気にあやかりたいのかな……と」
ーご自身がJプロツアーで走られていたご経験による印象でしょうか?
「Jプロツアーもいろいろ施策を講じてはいるのですが、ホビーレースである乗鞍ヒルクライムやMt.富士ヒルクライム、ツール・ド・沖縄などの方がはるかに人気があるというのは体感しています。
この富士ヒルクライムは参加者約1万人の大きな大会ですし、メディアの注目も集まることでしょう。Jプロツアーが富士ヒルにジョインすることでその人気にあやかって、大きな話題になるんじゃないかと考えています」

田中裕士さん(以下、田中)「率直なところ、うれしいなとは思わなかった。嫌だな~って気持ちが大きかったですね。
富士ヒルクライムは、言うならばホビーレーサーの中で一番を決める大会という印象が強かった。そこにプロが入ってきちゃうと難しいところがある、そう感じるのはアマチュアとプロの間に、明確に一線を引いているからだと思うのですが。
富士ヒルは、これまで代々、ホビーの頂点を決めるんだ! というレースだと思ってやってきてたので。“なんということをしてくれるんだ”という気持ちが先に立ちましたね。強豪のクライマーはみんな同じような気持ちを抱いているんじゃないでしょうか」

兼松大和さん(以下、兼松)「まずは“危なくないのかな”ということを思いました」。
ー選抜クラスとJプロツアー選手の力の差があるということですか?
「僕自身がJプロツアーで走った経験からホビーレースとの一番の違いは“集団の密集度の高さ”だと思います。少しでも無駄を省くためにハンドルが当たるくらいの距離で走り、肩が当たることなどは当たり前に起こります。
僕が過去、ホビーレースのヒルクライムばかりしていた頃はそのような密度を経験することはなかったので、最初JPTを走った時はすごく怖かったんです。“こんなに当たるんや”って。ポジションを争うシーンだとなおさらです。隙間があればすぐに差し込まれます。ホビーでは経験したことのないポジション取りでした」
ー普段からそのような経験をしていない選手とは技量に差があるということですか?
「それでいて危なそうな選手は、プロの選手に弾かれどんどん後ろに下げられていくんですよ。プロ選手も声を荒げることはないと思いますが、彼らはこれが仕事であり、生活がかかってますから落車のリスクにはシビアです。本当に危ないシーンがあれば、危険を回避するためにハッキリと「危ないぞ」と声をかけられることがあるかもしれません。
あともう一つ。バイクの重量規制がどうなるのかが気になります。ヒルクライムですので、パワーウェイトレシオが非常に重要。現在プロ選手たちはUCI規則に則ってバイク重量は6.8kg以上となっています。そこでホビーレーサーが5kg台の自転車でもOKとなると約2kgの差になりますから、それは大きいですよね」

中村俊介さん(以下、中村)「どうやって公平性を出してレースをするのかという部分に興味がありまね。Jプロツアーだと車体重量制限があますが、今回はどう扱うのでしょうか。今の自転車は完成車でもかなり軽いものが多く、中でもヒルクライムを中心に活動しているホビーレーサーの機材はさらに軽くしている方も多くいます。自転車の軽量化もホビーヒルクライムレースの醍醐味のひとつだと思います。これを6.8kgに揃えるとなると、むしろ難しいのではないでしょうか。
僕自身、機材が軽いから速い(速くなる)とは考えてはいないのですが、ヒルクライムは特にパワーウェイトレシオの影響が大きいので、機材重量についてはある程度のイコールコンディションが必要なんじゃないかと思います。
あともう一点。このコース(スバルライン)での混走。これは、富士山の三つの登り口(あざみライン、スカイライン、スバルライン)のうち、このスバルラインがもっとも勾配が緩く、ヒルクライムというより、ロードレースに近いということで、Jプロツアーの選手たちがこのコースでチーム戦として走った時、実際どのようなレースになるのか、ということに興味があります」

Q2.出場するとしたらどんな対策をしておきますか。

森本「特に例年と変わりません。 今年は富士ヒルクライムの次週にニセコクラシック(UCI公認グランフォンドワールドシリーズ)もあるのでしっかり上れるカラダにしておきたい。
また毎年6月というのは、全日本選手権があって、ある程度までは仕上げていくのですが、実はなかなかバッチリ合わせていくことはできていませんでした。今年は特に6月に大きいレースが3つもあるということで、しっかり調子を合わせていきたいですね」。

兼松「はい。出る予定です」
ー前述のような心配事も含めて、対策されることは?
ホビーレーサーにありがちな、スピードを維持したままダンシングに移行できないと、加速が遅れてしまい車身が下がることがある。そのとき後ろの選手が一定速度で走ってたら、ハスって(前走車の後輪と後ろにいる選手の前輪が接触する)しまいますよね。
だから、ダンシングする時、プロ選手は後ろに向かって合図をすることもありますし、車身が下がらないようなダンシングをするのですが、ホビーの選手は前後の車間距離も比較的広いので、普段からそういったことを意識する機会も少ないでしょう。自分を守るのもそうですし、他人を巻き込まない視点でレースを運んでいくという意識をより高く持つことは大事だと思います」

田中「佐々木選手のインタビュー記事にもあった通り、スピードの上げ下げが半端ではないと思います。1分や30秒間ドカンと上がる瞬間があるはずなので、そこについていけるだけのインターバル能力が必要になると思ってます。
富士ヒルはコースが緩斜面です。基本的にJプロツアーチームのアシストがいるので、ペーシングについては我々(選抜クラスの選手)が作らなくても前でプロ選手が牽いてくれるはず。集団の中に居る限りは普段のレース以上に脚を使わないはずなんです。ですから、いつもよりFTP要素は必要ない。問題はそのあとで、中盤以降アシストが下がり、エース級がアタックしたときについて行くためのインターバル能力が必要だと思っています」

中村「もし自分が出るとしたら……普段から意識していることではありますが、高いパワーウェイトレシオとインターバル耐性です。
ヒルクライムはクライミング能力を上げるためにパワーウェイトレシオを上げます。このコースは勾配がゆるいほうなので、ロードレースのような展開になることを考慮し、インターバル耐性も鍛えておく必要があるかと。
Jプロツアーと混走となることで、より2つ能力が要求される厳しいレースになるのではないかと考えています」(今回、中村選手は出場を見送られる予定。出場するならば…という前提でお話を伺いました)

ーレギュレーションについて、参加を希望する多くの皆様よりご質問をいただきました。やはり気になるポイントですね。
今大会は、大会特別規則を適応します(詳しくはこちら)。選抜クラスには重量制限を課さないことにしました。しかしJBCFのレース同様に車検を行い、整備不良や危険性がないかチェックをします。ホビーレーサーとしての醍醐味である「自分だけの一台を操れる」という魅力を損なうのは富士ヒルが向かう道ではありません。しかしJプロツアーの選手たちにとってはシリーズの一戦、選抜クラスの選手にとってはピークを合わせた一戦。この一戦に向けた思い入れ、モチベーションという側面では両者には差があるのではないでしょうか。となれば選抜クラスに分があるとも考えられます。想像以上の素晴らしい勝負ができるのではないか、と感じています。
Jプロツアーというプロと、選抜クラスという市民スターの共演=エンターテイメントとしても、誰かの心を動かせるような素晴らしいレースになるといいですね。

 

2/3へ続く……

写真:うさみたかみつ 小野口健太
著作権・商標について

関連URL:富士ヒルクライム公式サイト https://www.fujihc.jp/outline/

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