2018年04月13日
布袋田沙織のRide on the Earth[第3回]Single Track 6 挑戦記 その1
MTBとの出会いを思い出してみると「大自然のなかを走るのは気持ち良いよ〜」「普段は入る事のできないトレイルからの景色はたまらないよ〜」という言葉に誘われるようにエントリーしたセルフディスカバリーアドベンチャー・in・王滝の100kmが私の初めてのレースで、そこに向けての練習が私のMTBとの出会いでした。
「自然」「トレイル」そこから見える「大絶景」に胸を焦がしてMTBをはじめた私が、やってみたい事とはなんだろうと改めて考えてみると「海外のトレイルに挑戦する」「自分の想像もつかないような大自然で冒険をする」という事でした。2016年いっぱいでメインスポンサーとの契約が切れるこのタイミングに、「挑戦するなら今だな……」と何の根拠もないけど、ただワクワクする気持ちとまだ見ぬトレイルへの夢を膨らませながらネットで世界中のレースを検索する日々を過ごしました。そんななかで出会った「Single Track 6」というレースへの挑戦記を数回に分けてお届けします。これから海外レース(MTBとは限らずグランフォンドやヒルクライムなど)へ挑戦してみたい方、海外を走ってみたい方、ひっそりと燻っている夢がある方にはぜひぜひ読んで頂けたら嬉しいです!
Day1-3の舞台となったRosslandは街をあげてMTBライダーを歓迎してくれました!スキーとMTBには天国のような街でした
さて、「Single Track 6」(以下ST6)とはカナダ西部を中心に6日間に渡って行われるMTBのステージレースです。毎年開催場所も変わり、カナダが世界に誇るシングルトラックを堪能するために各国からライダー達が集まってきます。世界17カ国からライダーが集結した2017年のレースは、Nelson、Rossland、Redmountainを中心に1日の平均走行距離約40km、標高差約2000mのアップダウンを繰り返す過酷なレースでした。加えて6日間を通して快晴で気温は約40度、湿度約3%という日本ではなかなか体験できないハードな環境。でも、このレースの最大の魅力とも言える絶景や極上のシングルトラックは過酷さを忘れてしまう程の魔力がありました。この魔力に取り憑かれるように毎年リピートして参加するライダーもたくさんいるようです。
もちろんですが、レースに向けてのはじめの一歩はエントリーです。国内のレースと異なり、レース概要やエントリーフォームは当然英語です。携帯の辞書アプリを片手にPCと睨めっこしながらフォームを記入していきましたが、まだコースの詳細も分からず、本当にエントリーして大丈夫なのか……という疑問がつねに付きまとい、記入は済んだけれど送信ボタンを押す勇気がないという国内レースでは考えられない心境になりました。日本のレースのように詳細が記載されていないところに欧米らしさを感じるとともに状況が分からないというのはこんなにも不安になるものなんだなぁーとつくづく思いました。
今回はありがたい事に面識のあったマウンテンバイクプロアスリート 池田祐樹選手(TOPEAK ERGON RACING TEAM)が2014年に同大会に参加したことがあるということで連絡をとりました。池田選手は国内外のステージレースやマウンテンバイクマラソンなどで大活躍されている日本を代表するMTBライダーであり、大尊敬する選手です。
いろいろ教えて頂き、「大丈夫、あのレースは楽しいよ〜!」そう言ってもらえたことで、状況は分からないものの「えいやっ!」という気持ちが芽生えました。経験している方がいるということはこんなにも心強く、その「経験」という財産をシェア頂けたことにも大感謝です。おかげでカナダでのレース参加の第一歩を踏み出せました!
まだ私がMTBを始める前、2012年にイベントで一緒になった大尊敬する池田選手(右)と元カナダチャンピオンのCory選手(左)。ST6はCory選手も招待選手として参戦していました!
……と言いつつも、開催場所は毎年変わり、コース自体も毎日変わるので「よく分かっていない状況」はあまり変わっていません(笑)。そこで運営事務局にメール送ってみました。
「日本から初めて海外のレースにエントリーしたSAORIです。分からないことだらけですがレースを心より楽しみにしています。何か困った事があったら助けてください。」……なんて図々しいメールでしょうか(笑)。
でもこの図々しいメールのおかげで私の存在を知ってもらえ、後にいろいろと助けてもらえることに。このメールを送っていなかったら助けてもらえなかったかもしれないと思うと、図々しいとか言ってる場合じゃないですね。レースやイベントでどんなに調べても分からず不安が拭えない方は思い切って運営事務局さんに連絡することをおすすめします! とくに海外のレースでは海を越えて参加してくれることを大いに歓迎してくれるし、会場に「問い合わせできる人」がいることは心強く、レースで最大のパフォーマンスを発揮する手助けをしてくれます。
エントリーのことが長くなってしまいましたが、移動の手配と宿の手配ももちろん重要です。まずは移動の手配。日本から直行便が出ていれば最高ですが、そもそも直行便がなかったり費用を抑えるためにトランジットすることもあります。今回はバンクーバーでトランジットしてウェスト・クーテネイ・リージョナル空港へ向かいました。余談ですがバンクーバーからのフライトは時期と地形の影響で上昇気流が強く終始激しく上下に揺れました。持ち物は手で持ち、揺れが激しいので足で前のシートを抑えるようにして体を固定させ……この旅で一番死を覚悟しました。同乗していたカナディアン達は慣れているのか「イェーイ♪」と、まるでジェットコースターに乗っているような様子でした(笑)。
本題に戻って、トランジットをする際に自転車の追加料金を確認してからフライト予約することも重要なポイントです。私はエアカナダからエアカナダの乗り換えだったにも関わらず、航空運賃の安さに目がくらみ成田〜バンクーバー行きを旅行会社のサイトで予約しました。実際行ってみると、予約が2カ所から行われた場合は同じ航空会社でも自転車追加料金がそれぞれに取られます。結果は料金が高くなってしまいました……。普通の旅行とは違って、相棒の料金も調べつつ、航空会社へ自転車を積み込む旨の連絡もお忘れなく〜!
カナダの空港では犬も歩いていてびっくりしました!犬を家族同然に大切にしている方々が多く、トレイルでもたくさんのトレイル犬に会えました!
そして、現地についての移動ですが今回はトランジットパックというのに申し込みました。大会側では車で来られない選手のために空港までの送迎、レース当日の食事場所やスタート地点、ゴール後のホテルへの移動など、全部がパックになっていました。大会指定のホテルに限ったサービスですが、海外からの参戦者向けに用意されているのでしょう。移動時間を多く見積もるため多少移動時間がかかりましたが、初めての地だったので安心でした! 宿に関しては自転車フレンドリーの宿が指定されていたので、ちゃっかり洗車までさせてもらえました。そして少しランクの高いホテルだったため小さいながら共用のホットタブがついていて、日本人にとってはこれがどんなに毎日のレースを乗り切る癒しになったか……日本人はやっぱりお風呂に浸からなきゃ!笑
1日目のミールプランの夕飯です。ブュッフェスタイルで好きなものを好きなだけ。海外ライダー達は胃袋も強いっ!!
トランジットパックに申し込んだのでレース会場近くの空港までお迎えに来てくれます。日本では見かけることのないMTBをたくさん積めるトラックにテンションがあがります!お迎えは私たちとニュージランドからのライダーが乗り込みました!
宿はパックにしたものの、宿を検討するときや宿の周りの環境を確認するためにGoogleアースが大活躍! 近くにスーパーがあるから、水や補給はここで手配しよう! とか、近くにピラティススタジオやヨガスタジオがあるから調整の何日間はせっかくなので勉強しに行こう! とか、環境が分かるとおおよその行動スケジュールが立ちやすくなります。レース前や後の貴重な時間をどう過ごすのかも、レースで最大のパフォーマンスを発揮するためには重要ですし、何よりGoogleアースでのシュミレーションはワクワクして練習のモチベーションが格段と上がります。
Rosslandにある自転車屋さん。最近の売れ筋はSANTA CRUZとGIANTのようです。アパレルや小物が豊富でとくにレディースに関しては日本に比べるととても豊富で欲しいものてんこ盛りでした!
レース2日前は身体の調整も兼ねて勉強のためにピラティスのマンツーマンレッスンを受けてきました!
最後に、最もレースパフォーマンスにとって重要になってくる食事です。これもミールプランという朝・夕食付きのプランを申し込みました。朝食はシリアル、肉、フルーツで夕食はパスタ、肉、生野菜、デザートという感じです。レースの前半と後半で滞在場所が変わるので作ってくれるホテルによって質や豪華さは変わってきますが基本は炭水化物と肉でした。食事が用意されていることは便利です。慣れてくると他の選手たちとおしゃべりしながら食事が摂れるので息抜きにもなります。ただ、菜食主義で調整してきた、米がないとパワーが出ないという方はご自身で用意されるか、ミールプラン+必要に合わせてご自身で用意するという形が良いかもしれませんね。これも行ってみないとどんなメニューが出るかは確認できないのでメニューにこだわる方はにはなんとも言えませんが、当たり前ですがほかほかおいしい白米は出てこないでしょう(笑)。
海外のスーパーはいつ行ってもテンションあがります!Google Earthで事前に調べておいた近くのスーパーには水や補給食の調達などでお世話になりました!
今回は移動、宿、食事でセットプランを利用しましたが、プランの内容についても運営の方に質問メールを送りながら選びました。些細な質問にも迅速に返信をくれたり、お勧めを教えてくれたり早速お世話になりました。メール送っておいてよかったぁー! ちなみに他にはマッサージセット、メカニックセット、アフターパティー参加セットというのもありました。運営の方から「是非!」という事でメールを頂きアフターパーティーセットも追加してくれました。
なぜ私がこのレースに挑戦しようかと思ったのか、出発までの準備段階を書きましたが、次回からはいよいよレースレポートです。思い出すだけで興奮する最高の6日間をシェア出来るのはとても嬉しいです。
次回もお楽しみに〜!
Single Track 6 → http://singletrack6.com/
著者プロフィール
布袋田沙織ほていだ さおり
ピラティスインストラクター・ボディメイクトレーナー としてアクティブなカラダやココロを目指してモデル、アナウンサーやスポーツ選手にトレーニングを行っている。2013年よりマウンテンバイクを始め、国内レースへの参戦の他、2017年よりamity mountaincrewとして海外のレースやフィールドに挑戦するなど、さらに活動の場を広げている。