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2018年02月13日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 5-10)命を預ける!?ブレーキのメンテナンス

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第5章:ゴキゲン! 「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!

5-10) 命を預ける!?ブレーキのメンテナンス

 

ブレーキは安全上最も大切なパーツである。命をあずけていると言っても過言ではない。そしてブレーキワイヤーは命綱でもある。ライド中に切れると大事故にも繋がりかねない。そのためレバーにも本体にも調整やメンテナンスがしやすい機構が備わっている。安全に直結する箇所だけにブレーキに少しでも違和感を覚えたら必ず確認し、対処しよう。微妙な調整加減を覚えておけば安心だ。

 

<命綱のブレーキワイヤーは伸びる>

ブレーキワイヤーは変速ワイヤーと同様に、細い鋼線を撚り合わせたものであるため、繰り返し引っ張っていると少しずつ伸びていく。ワイヤーだけでなくアウターケーブルも操作の度に圧縮されるので、僅かずつ縮んで行きブレーキの遊びが増えて行く。ブレーキングはシフティングに比べてずっと大きな力がワイヤーにかかる。特にダウンヒルの際などには過酷な使用環境となって伸びが大きくなりやすい。また、新車を購入した際や交換したばかりの新しいワイヤーは伸びやすいので調整が必要になる。新しいワイヤーの場合は、一度装着してボルトで固定した後、両手でブレーキレバーを思いっきり強く何度も繰り返し引く。少し伸びが出たら再度ボルトを緩め、伸びた分ワイヤーを詰めて新たにセットしなおすと、その後の伸びは少なくなる。

新車の場合は事前に伸ばして調整されている場合が多いが、それでも多小は伸びがある。しばらく使用していて、ブレーキレバーの遊びが少しずつ大きくなってくるとワイヤーが伸びている証拠である。ブレーキレバーの引きに対し、ブレーキの反応が鈍くなってきたら適宜調整を行う必要がある。そのままにしておくと徐々にブレーキの効きが悪くなって、安全性にも影響が出かねないので必ず対処したい。

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ブレーキワイヤーは必ず伸びるもの。適宜調整が必要なことを覚えておこう

 

<ブレーキ本体のワイヤー調整機構>

ブレーキ本体は、キャリパーブレーキ、 Vブレーキ、ディスクブレーキ、カンティブレーキ、ドラムブレーキ、コースターブレーキなどなど様々な種類があり、構造もしくみも異なる。まずはロードバイクに装着されていることが多い、キャリパーブレーキの調整方法を説明したい。

ワイヤーがブレーキ本体に最初にコンタクトする部分に付いているのが、ケーブルアジャスターボルトである。このボルトを回すことでブレーキレバーと本体をつなぐワイヤーの長さが調節でき、ブレーキシューとリムとの間隔の微妙なアジャストができる。ワイヤーが伸びたり、ブレーキシューが減ったりしてブレーキの効きや遊びに影響が出てきたら、まずはこのボルトで調整をする。ケーブルアジャスターボルトは上から見て左に回すとワイヤーを張る方向に動き、ワイヤーの伸びを吸収し、ブレーキシューの間隔を狭めることができる。少しずつ回しながらブレーキシューの間隔と、レバーの引き具合(遊びの量)を確認しつつ調整を行う。逆にブレーキレバーの遊びを増やしたい場合は、右に回すと調整できる。ブレーキレバーの引き具合が、前後ブレーキで同じになるようにきっちり調整したい。

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ケーブルアジャスターボルトで微妙な調整ができる

 

<レバー側での調整機構>

MTBやクロスバイクの場合は、ドロ詰まりに強くより高い制動力のあるVブレーキやカンティブレーキなどが装着されていることが多い。これらのブレーキは本体ではなくブレーキレバー側にケーブルアジャスターボルトとロックナットが装着されている。効き具合を高める調整は、まずレバー側にある固定用のロックナットをワイヤー側にゆるめる。その後、ワイヤー側のアジャスターボルトを左に回してワイヤーの長さを調整していく。少しずつ回しながらレバーを握って遊びの具合を確認しながら調整する。遊びの量は人によって好みは異なるが、1cm程度が程よいだろう。位置が決まったら今度はロックナットをレバー側までいっぱいに締めこむ。これでアジャスターボルトは固定され動かなくなる。これらの作業は全て手でできるため工具は必要ない。但しアジャスターボルトの長さは1~2cm未満であり調整の範囲は限られる。ボルトにはワイヤーの着脱を容易にするため、ケーブルを通すための横溝が切ってある。従って普通の貫通穴あきボルトよりも強度的に劣る。差し込みが少ない状態で使うと、ネジ山が壊れたり、変形したり、折れたり、外れたりのリスクがある。もしそれがダウンヒル中などに起こったら命の保証はない。ボルトは半分近くがブレーキレバーにねじ込まれていることが望ましい。

 

<ワイヤーの長さを直接調整する>

ケーブルアジャスターボルトでの調整はせいぜい1cm未満であり限界がある。それ以上の調整はブレーキ本体にあるワイヤー固定ボルトでワイヤーを短く締めなおす必要がある。この調整はキャリパーブレーキでもVブレーキでも同じである。

①まずはケーブルアジャスターボルトを一番締めこんで、ブレーキが開いた状態にしておく。

②ブレーキ本体とワイヤーを繋いでいるワイヤー固定ボルトを緩め、左手でブレーキシューを両方から押さえてリムを挟むようにする。

③その状態で、右手でプライヤーなどでワイヤーを引っ張ってテンションを確保して、ワイヤーを固定する位置の目処をつける。

(簡易的な調整ならばその状態で仮止めして⑦に進むこともできる)

④一旦左手を放して、フレームに直付けしてあるアウターワイヤーを受けるダボからその横溝に沿ってアウターワイヤーごと外してしまい、ワイヤーのテンションを開放してやる。つまりワイヤーには力のかかっていないダランとしたゆるゆるの状態にする。Vブレーキの場合はブレーキ本体にあるケーブルを受ける金具から、インナーケーブルのガイドパイプ(通称バナナパイプ)を外す。もしくはレバー側にあるケーブルアジャスターボルトの横溝をロックボルトの溝と横⼀線に合わせてワイヤーを外すと開放される。

⑤ゆるゆるの状態で、先ほど目処をつけた固定位置にワイヤーを合わせ、ブレーキ本体の固定ボルトを7~8割程度に締めてワイヤーを仮止めする。

⑥その状態でブレーキシューを両方から押さえてリムを挟むようにし、フレームのダボにワイヤーを入れる。Vブレーキの場合はケーブルアジャスターボルトに横溝からワイヤーを元に戻す。

⑦ブレーキレバーを握って遊びや効き具合を確認する。

⑧問題がなければそのままボルトを締めこんで固定する。

しっくりこなければ上記作業を繰り返し、納得いく状況になったらワイヤーを固定する。

⑨最後にケーブルアジャスターボルトで微調整をする。

 

上記⑧でしっくりこない場合に何度かワイヤーを仮締めしなおすこととなるが、7~8割程度の仮締めとし、その回数もできるだけ少なくする。ワイヤーの固定はワイヤーをつぶして挟み込みので、何度も繰り返したり何箇所でも行うと、ワイヤーがほつれやすくなり、強度も低下する。

 

<ワイヤーの種類を認識する>

何千キロも乗った場合や数年間使用し続けた場合、ほつれやサビが出てきたりした場合はワイヤー交換の必要がある。ワイヤー交換は知識と経験を十分に増やし、専用工具が使えれば自分で交換することもできなくはない。しかし、ブレーキワイヤーは命を預けるある意味最も大切なパーツであり、その装着やセッティングはミスやいい加減さは許されない。素人がヘタにいじると事故を招くリスクもある。ワイヤー類の交換についてはショップに持っていってプロに完璧にやってもらう事をお勧めする。ちなみに、ブレーキワイヤーとシフトワイヤーは別物である。一番の違いは太さ。ブレーキ用は直径1.6mm程度あるのに対しシフト用は1.1~1.2mmである。大きな力がかかり命を預けるブレーキワイヤーは太いのだ。

ワイヤー先端にあるレバーとつながるストッパーの形状も、ブレーキ用とシフター用で異なるし、ブレーキ用でもフラットバー用とドロップハンドル用では異なり、メーカーによっても形状が違う。シフター用をブレーキワイヤーと間違えないようにはなっているが、無理やり装着してトラブルになった例もあるので、認識しておきたい。

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ほつれが出てきたワイヤーはライド中に切れてしまう恐れがある。ワイヤー交換はショップにやってもらうのがお勧めだ

 

<ブレーキシューの調整>

ブレーキとリムの当たり具合も性能に影響する。というかブレーキ系統の最終アウトプットはここであり、他がどんなに素晴らしくセッティングされていても、シューが曲がって装着されていれば意味が無い。ブレーキシューはカートリッジ(ホールダー)にはめ込まれており、カートリッジは固定ボルトでブレーキ本体に装着されている。この固定ボルトを緩めるとカートリッジ全体が前後左右、そして上下にも動くので微調整を行うことができるのである。

まずは取り付け位置を、シューの上部がリムの上端の1mmほど下に来るように平行にセットする。次にシューとリムの隙間である。左右のブレーキシューとリムの間を2mm程度に均等に確保する。500円玉などのコインを両方に挟んで手で押さえると丁度2mmくらいが保てる。その状態で一旦仮止めをする。

そのままではブレーキからキーキーと音がでる可能性があるので、シューの先端側をほんの僅かに内側の角度(トーイン)をつけてやる。その幅はシューの長さによっても異なるが0.4~0.6mm程度である。これによりブレーキをかけた時にシュー全面がリムに張り付くようになって音鳴りは発生せず、効き具合も良くなる。最後に固定ボルトを締め込むが、その際に折角調整したシューの位置が動かないように、シューをしっかり押さえながら慎重に行いたい。

 

<ブレーキシューの交換>

ブレーキシューは自転車に乗っている限り必ず摩耗していく。一般的には溝が薄くなってきたら交換だが、安全を優先して例えば半年ごとに交換するということをルーティンにしておけば安心だ。また、雨天時にはブレーキシューが摩耗しやすい。ブレーキシューの溝がまだ少し残っているから大丈夫と思っていても、濡れたりした場合は突然不具合が発生するリスクがあるので早めの交換をお勧めする。カートリッジごと交換するならば固定ボルトを緩めて取り外し、新しいカートリッジを上記の方法で調整しながら取り付ければよい。その際一緒に取り外したワッシャーなどの小物をなくさないように注意したい。しかし、減っているのはシューでありシューのみを取り替えたほうが経済的であり簡単である。

シューの交換はホイールを外せば、カートリッジをブレーキ本体に付けたまま行えるのである。前ブレーキはフォークに固定しているセンターボルトを緩めて本体を傾けて作業する。後ろブレーキはそのままで作業できる。まずは、カートリッジの後方にあるシューを固定するボルトをはずす。次にシューをカートリッジからプライヤーやラジオペンチなどで摘まんでスライドさせてはずす。

新しいシューの取りつけは外し方の逆で、シューをカートリッジにスライドして入れる。カートリッジの後方の穴とシューにある穴を一致させて、そこに固定ボルトを入れて締めこめばOKだ。但し低グレードのブレーキカートリッジはシューの交換ができないものもあり、その場合はカートリッジごとの交換が必要になる。ブレーキ本体が低グレードであっても、交換するカートリッジを例えばシマノの105以上の高グレードにすれば、シューのみの交換も可能である。そのほうが、経済的で調整もしやすくなるのでお勧めだ。

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ブレーキシューは使用するたびに磨耗していく。溝がなくなる前に新品に交換しよう

 

<ブレーキシューのセンタリング調整>

ブレーキはフレームにセンターボルトで取り付けられているが、取り付け位置が緩んでいないかを確認しよう。ブレーキをかけるたびにこの部分に力が入るため、いつの間にか緩んでしまうのだ。本体を台座に固定しているボルトで取り付け角度の調整を行って、しっかりと締めこんでおこう。ブレーキシューがリムに左右均等に当たらずに方効きすることがある。カートリッジで調整すればよいのだが、方効き調整だけならばもっと簡単にできる。キャリパーブレーキ本体のアーチの肩の部分などに小さな六角ナットが埋め込んである。それをレンチで回して開閉具合を調整する。右に回すと右のブレーキシューがリムから離れていき、左に回すと左が開く。少しずつ交互に回しながらセンタリング調整を行う。

Vブレーキの場合は本体の2本のアームの付け根サイドにそれぞれ片効き調整ボルトがあり、ボルトを右回りに回すとブレーキシューがリムから離れ、左回すと近づく。左右のブレーキアームはブレーキワイヤーで繋がっているため、左右を少しずつ交互に回して微調整を繰り返し、ブレーキアーチの左右の開きが対称になるように調整する。

ブレーキは安全を確保する一番大事な機能である。きっちりと作動しなければ生命をも脅かす危険に晒される。日ごろのメンテナンスはしっかり行いたいが、自分の命が係わるこのパーツの整備に僅かでも不安があれば、必ずショップに行って腕の確かなプロにきちっとメンテナンスしてもらおう。

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ブレーキシューの位置を正しく調整することで、ブレーキの性能も高められる

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は2月27日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

(写真/本人)


第5章:ゴキゲン!「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!

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10)命を預ける!?ブレーキのメンテナンス

 

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