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2018年01月02日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 5-7) サイクリストの義務!自転車の健康管理

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第5章:ゴキゲン! 「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!

5-7)サイクリストの義務!自転車の健康管理

 

自転車の整備状況はサイクリストとしての人格を表す。どんなに高価なバイクに乗っていても、整備やメンテナンスがいい加減ではサイクリストとして尊敬できない。整備とメンテナンスはサイクリストの義務であり、自転車への愛情表現でもある。愛情は寿命にも大きく影響する。たった1本のネジの緩みがライディングを不快にしたりトラブルを引き起こしたりするのだ。スポーツバイクの性能をフルに引き出し、快適に乗り続けるためにも日頃のメンテナンスはしっかり行いたい。まめなスキンシップを続けることが、長い付き合いの基本である。

 

<注油と掃除は健康管理の基本>

注油と掃除はメンテナンスの基本である。ドロやホコリが付着したままのスポーツバイクは、乗っている人のサイクリストとしての人格が疑われる。自転車を愛する人ならば汚れたままの状態で放っておくことはあり得ない。我々人間は日々の汚れと疲れを風呂に入って落としているが、疲れや汚れが溜まると病気になりやすい。自転車も同じことでメンテナンスをしないとサビやガタがでてくる。それは自転車にとって万病の元となるのだ。

スポーツバイクのチェーンは露出した状態なっているので、雨やホコリの影響をモロにうけ、汚れが溜まっていく。また、チェーンは強い力で硬いギアと噛み合っているため、互いに僅かずつ削れていく。チェーンにオイルを注さずカラカラのまま乗っていると異音を発生したり、サビや付着したホコリなどが研磨剤的になりフロントギア、リアスプロケット、ディレーラーやプーリーも傷めてしまい寿命が縮まってしまう。さらに無駄な摩擦抵抗が大きくなり、自転車も身体も疲れやすくなるのだ。注油と掃除は自転車への愛情表現でもあり、長く付き合うための必須条件である。

 

<まずは掃除で小綺麗に>

日常生活でも部屋や身の回りの掃除を行うのと同様に、自転車も汚れたら掃除をするのがサイクリストとしての自然なスタイルである。こまめに自転車と向き合うことで、小さな異変にも気づきやすくなるのだ。毎回本格的な洗浄などをする必要は無いが、ちょっと汚れたかなと思ったときや雨の後、濡れた路面を走行した後などにはフレームなどに付いた汚れを落としておきたい。ウエスで簡単にざっと汚れを落とすだけでも良いが、油汚れなどがあればウエスや水だけでは落ちない。余裕があればパーツクリーナーやチェーンクリーナーなどを使ってこびり付いた油汚れをできるだけ落としておく。

本格的な掃除は車輪やパーツをはずしたりしてブラシや水洗いでの洗浄などを行うが、日常的にはそこまでしなくても、見た目がキレイになればよいだろう。ちなみに乗車前などの数分でカンタンに掃除するのには、軍手を使うと便利である。自転車に乗る前に、軍手を両手にはめてフレームやハンドル、ホイールやパーツなどの汚れの目立つところを撫でるように拭いていくのである。軍手は洗えば何度でも使えるので、カンタンで効率的で経済的なのである。

 

<チェーンの清掃>

自転車のメンテナンスで一番頻度が高いのはタイヤの空気圧調整とともに、チェーンなどへの注油である。いきなりチェーンに注油をする人もいるが、その前に汚れを落とすことが必要である。チェーンに残っているオイルは走行中に路上のホコリや細かな粒子などを付着させ、黒ずんだ汚れになりやすい。この汚れの上から注油しても付着物は除去できないので、そのまま乗っているとチェーンだけでなく、ギアやスプロケット、ディレーラーやプーリーなども傷めてしまう。

チェーンの汚れはウェスで拭いただけではキレイには落ちにくい。チェーンの外側ではなく、内部のつなぎ目の中やピンなどの可動部の汚れを落とす必要があるのだ。そのためにはチェーンクリーナーが必需品となる。チェーンクリーナーを使って汚れを溶かし、しばらくおいてから乾いたウェスやキッチンペーパーなどでチェーンを包み込むようにして、可動部の汚れを拭き取っていく。注油の際にクリーナーが残ったままだと、オイルが分解されて充分な効果を得られないので、しっかり拭き取る。さらにキレイにするのはチェーン洗浄器と洗浄液を使うと良い。ちょっと面倒だがこれならほとんどの汚れが落ちて気持ちいい。

 

<オイルの種類と特性>

自転車の寿命は注油で決まるといっても過言ではない。自宅の自転車置き場などにウェスとオイルを常備しておき、いつでもサッと注油と掃除ができるようにしておきたい。チェーンオイルは、ドライタイプとウェットタイプの2種類に大きく分類される。

ドライタイプは潤滑剤の中でも乾いている部類のため、走行中にホコリの付着が少なくチェーンが汚れにくい。しかしオイル自体が蒸発しやすく、雨で流れ落ちやすいため耐久性に乏しく、頻繁にオイルを注すまめなメンテナンスが必要になる。雨天時や濡れた路面以外での乗車用にはお勧めである。

ウェットタイプのオイルは粘性が強く、油分がチェーンから離れにくい。雨天、泥、雪などのコンディションの使用にも耐えうる。蒸発しにくいためオイルの注入頻度はドライタイプに比べて少なくて済む。ロングライドやブルベなどにはお勧めである。反面、ホコリを付着しやすくオイルが固まりやすいため、チェーンが汚れやすい。見た目が黒くなり、足や手が触れると汚れやすい。

チェーン用の専用オイルはお勧めだが、ホームセンター等で扱っているWD40やクレ556といった万能タイプのケミカルスプレーは価格がリーズナブルだ。潤滑だけでなく、サビ落とし、光沢、そして多小の汚れなら落とせてしまい1本あれば重宝する。ただしこれらのケミカルスプレーもドライタイプなので長持ちはせず、頻繁な注油が必要となる。ちなみに一番長持ちするのはマヨネーズ状のグリスを直接チェーンなどに塗りこむことである。

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チェーンオイルをはじめケミカル類にはさまざまなタイプがある。いろいろ試して自分の好みのものを探してみよう

 

<注油の手順>

まずは手が汚れないように軍手をする。そしてチェーンの下に汚れてもいいシートや新聞紙を敷いておくと良い。屋内で作業するときは換気にも気をつける。スプレータイプのオイルは回りに飛び散りやいので、タイヤやホイールなどに付着させないようにウェスなどでガードする必要がある。事前にトップギアに入れておけばホイールから少し離れて作業しやすくなる。なお、フロントアウターギアの最下点後部で注油すれば、タイヤやホイールには付着しにくくなる。

注油はチェーン全体にかけるのではなく、コマとコマの間にあるリンク部分(可動部)に一コマずつ丁寧に行う。チェーンの外側(プレート部分)には注油の必要はない。チェーンの表面ではなくリンク部分を狙って、少しずつチェーンを動かしながらスプレーし、ゆっくり1周回して吹き付けていく。1周の目印には、1カ所だけ見た目が違う「コネクトピン」を基準にするといい。「コネクトピン」がなくても1周以上すれば良いので、少し余分に回しながら注油すれば安心だ。

チェーンのすべてのピンに注油し終わったら、ペダルを回してディレーラーを操作し、すべてのギアに変速させる。チェーンにオイルを馴染ませるとともに、オイルをスプロケットにも行き渡らせるのである。その後数分~十数分時間をおいて内部にオイルを染み込ませてから、チェーン表面などに付着している余分なオイルを拭き取る。表面のオイルは汚れの元になるので、乾いたウェスやキッチンペーパーなどでチェーンを握るようにして、そのままクランクを逆回転させてしっかりと拭き取る。内部に必要なオイルは浸透しているので大丈夫だ。

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表面のオイルをチェーンをまわしてしっかりと拭き取ろう

 

<チェーン以外の注油箇所>

日常の注油箇所はチェーン、ワイヤー類(ブレーキとディレーラー)、リア及びフロントのディレーラーなどである。どの箇所も、注油の前には汚れをウエスなどでしっかりと落としておくこと、注油後は余分なオイルを綺麗に拭き取ることが基本だ。

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<注油の禁止箇所>

注油はどこにでもしたくなるが、厳禁の場所もある。一番の注意箇所はリムとブレーキシューだ。ここにケミカルスプレーがかかるとブレーキが効き難くなる。チェーンにスプレーをする際にリムにかからないようにウェスでガードしておきたい。タイヤにもスプレーがかからないようにしよう。ゴムを傷めることとなる。またベアリングが入っている部分は、グリスを溶かしてしまうので注油は厳禁である。

ペダルシャフト、ボトムブラケット(両クランクの回転軸)、ハブ(車輪軸)、ヘッドパーツなどの回転部分にオイル類が入ると中のグリスが溶け、回転がスムーズでなくなるだけでなく、ダメージを与え壊れやすくなってしまう。とくに汚れを落とすディグリーザーや、WD40などの万能系スプレーは要注意である。ブレーキ本体やレバー、ワイヤー類など可動部への注油も、少量ずつ周りにかからないように注意しながら行いたい。

 

<汚れやサビは早めに落とす>

フレームは布を少し湿らすか乾いた状態で汚れを落とし、布にケミカルスプレーを少し染み込ませて磨くと美しい光沢がよみがえる。リムは汚れが目立ちやすい。ブレーキシューの削りカスが黒くこびりついていたり、またドロが付着していたりするとリムもブレーキシューも傷めてしまう。湿った布でしっかり拭き取っておこう。不覚にもサビを出してしまった時にはケミカルスプレーを少し多めにかけてサビを溶かそう。20-30分毎に拭き取ってまたかける。これを繰り返すと普通のサビならば大体は落ちる。しかし何よりもサビを出さないことが愛車に対する最低限のマナーである。

 

<どんなネジも必ず緩む>

自転車は100個以上のネジがあるが、どんなネジでも乗っていれば必ず緩んでくる。緩まないのは雨ざらしで錆付いたネジだけであり、それはサイクリストとしては論外である。とくに新車はネジがまだ馴染んでいないので緩みやガタが出やすい。自転車はネジ類によって組み上げられたパーツの集合体であり、たったひとつのパーツが無くなったり壊れたりしても走れなくなることもあるのだ。整備の際にはネジの緩みをちゃんと確認しよう。

ネジが無くなったり潰れたりのトラブルは多いので予備を持っていれば安心だ。また針金も持っていると役に立つ。サドルのやぐらやキャリアが折れるなどネジでは対処できないところも針金だと固定できる。細めの物ならあまり嵩張らないので是非持っていたい。走っていて異常を感じたら、その場ですぐにできる限りの対処をする。そして帰ってからはきっちりと整備し、次回には持ち越さないのが鉄則だ。

 

<乗車前点検は習慣づける>

ライドの前には乗車前点検をするのが望ましい。ハンドルとサドルを持って自転車を10cmほど浮かしてそのまま落としてみる。ガタや緩みがあればゴトゴトといった違和感のある鈍い振動音がする。場所が特定できなければ前輪、後輪それぞれ別々に落としてみて調べよう。次に両方のブレーキを強く握って前後に揺さぶる。ブレーキ本体の緩みとヘッド部のガタの確認だ。さらにハンドルを横に切って前後に揺さぶると前輪のハブ軸の緩みがチェックできる。後輪のハブ軸は後輪とサドルを持って持ち上げ後輪を左右に振って手の感触でガタを見る。

次にディレラーの操作の確認だ。後輪を持ち上げたままペダルを回してシフトレバーを動かして変速がスムーズかを確認しておきたい。とくに車輪を出し入れした輪行の際などには要チェックである。安全な場所があれば乗車しながら変速の確認をすれば良いが、注意のポイントはオーバーシフトにならないように確認することだ。リアならばローギアに力を込めて押し込んだ際や、数段飛ばしで一気にトップギアに落とした際にスーパーロー、スーパートップになる可能性があるのでしっかりチェックしておきたい。タイヤの空気圧も大切なポイント。タイヤが細いほど路面障害の吸収力が小さいので適正レベルに入れておかないと簡単にパンクしてしまう。様々な項目を入念にチェックしていたらキリがないので、乗車前点検はこれらの重要項目に絞って行えば良い。

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10cmほど浮かして異音を聞いて、緩みや整備不良がないかセルフチェックができる

 

<定期点検のポイント>

日々の整備をしっかりしていれば、大きなトラブルになる可能性は小さくなる。しかし、走行の状況に応じて月1回か数カ月毎には、各部の健康状態をきっちりチェックしてトラブルを未然に防ぎ、いつまでも快適に気持ちよくライドを楽しみたい。

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<たまには本格的に洗車する>

雨の中を走ってドロ水がかかったり、濡れた未舗装路を走ったり、グラベルなどのダート走行を行った後などは洗車が必要だ。そうでなくても汚れが気になれば、キレイに洗車するのが自転車への愛情だろう。洗車は両輪をはずし車体ごとひっくり返して作業する。タイヤが巻き上げたドロが裏側にこびりついているのだ。タイヤやホイールはホースの水を直接かけて大きめのブラシでゴシゴシ洗っても大丈夫だ。

クランクやペダル、ハンドル周りなど回転部分はシールドがされているものの、あまり勢い良く水をかけると中に水が入りトラブルの元となる。バケツに薄めにクルマ用洗剤、もしくは台所用洗剤を入れてウエスかスポンジを使って身体を流すように洗ってあげよう。クランクは時々回しながら、ブレーキや変速機は操作しながら汚れを落として行く。洗車後は乾いた布できっちりと水分を拭き取り、必ず注油する。仕上げはウエスでフレームをピッカピカに磨き上げて、愛車とともに気分爽快になろう。

基本的に自転車はメンテナンスさえしっかりすれば、耐久性に優れた乗り物である。1台で何十万キロにもおよぶ世界一周などを成し得た猛者もたくさんいるのだ。スポーツバイクはその性能をフルに引き出してこそ価値がある。メンテナンスを楽しみながら、自転車への愛情を育んで行こう。

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は1月16日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

(写真/本人)


第5章:ゴキゲン!「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!

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