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2017年11月21日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 5-4) カッコよく快適に!レイヤード術

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第5章:ゴキゲン! 「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!

5-4) カッコよく快適に!レイヤード術

 

スマートでクールなロードバイク! しかし乗っている人のファッションがダサければ台無しである。TPOをわきまえて、バイクとのコーディネーションを考えたオシャレをしたい。レイヤード術はオシャレのポイントであるとともに、アウトドアスポーツの必須科目である。様々に変化する外部環境に対応するレイヤード術は、オシャレの基本として身につけたい。

 

<レイヤードの基礎知識>

レイヤードとは重ね着のことである。気温や天候だけでなく、様々なTPOに合わせてスマートにウェアをアレンジし、快適なアクティビティを確保する術なのである。季節などにもよるが、基本は下着、保温着、ジャケットの3層のウェアの組み合わせでコーディネーションする。

ベースレイヤー(熱層)は肌に直接触れる下着、あいだに着て保温のために空気の層を作るのがミッドレイヤー(断熱層)、風雨などの外部環境から身を守る役目を担うウェアをアウターシェル(外皮層)と言う。

ベースレイヤーを選ぶ場合、汗を吸うコットンなどの素材は、濡れると乾きにくく体が冷えるためNGである。寒い季節には保温性と速乾性に富み、薄手で軽いポリエステル系素材のアウトラストやジオラインなどが良いだろう。暖かい季節には素早い蒸散作用でサーモレギュレーション効果があり、涼しく抗菌効果もあるクールマックスといった素材がお勧めである。

ミッドレイヤーはウィックロンやオーロンなどのアクリル系素材、ポリエステル系素材のフリースなどが軽くて保温性、撥水性、耐久性などに優れている。天然素材であるメリノウールは保湿力と除湿力を兼ね備え、さらに防臭力もあるがちょっと値段が高めである。

アウターシェルはゴアテックスなど、アウトドアでは定番の防水透湿素材のジャケットなら雨具も兼用にできる。防水機能が高く防風性や耐久性にも優れたジャケットをハードシェルといい、完全防水ではないが高い撥水性を有し、ストレッチ性や軽さなどを重視するタイプをソフトシェルという。ウインドブレーカーもソフトタイプのアウターシェルと言える。

 

<サイクリングでのレイヤード術>

サイクリングは外部環境の変化に長時間晒されるスポーツであり、つねに身体を快適な環境とするための、衣類の着脱によるレイヤード術が求められる。朝夕と昼間の気温差の大きい春秋や、衣類を着込むこととなる冬にはレイヤード術の上手な活用が、快適な走行の重要なポイントになる。

ウェアは気候や環境から身体を守り、常に体温を36-7度程に保つこと、及びライディングが身体に与える影響を軽減するためのギアである。サイクリング用のウェアが他のスポーツと違う点は、空気抵抗を考慮するところにある。風をはらんでバタつくようなウェアは適さない。体にフィットした動きやすいスタイルが基本である。

休憩や食事の際には身体が冷え始める前に早めに衣類を着ていく。とくに峠などを上りきった後の下りでは体感温度が急激に変化するので、下り始める前には多少暑くともウインドブレーカーなどのアウターシェルを着てからスタートしよう。

ちなみにゴルフ用のレインウェアはかさ張らず軽く動きやすく、足首も絞れるため機能的に使える。

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バックポケットに入るウインドブレーカー類を持参しておくと、気温の変化に対応できる

 

<小まめに衣類を調整する>

レイヤード術のポイントは、面倒がらずに小まめに調節することである。とくに冬の朝は寒く身体も暖まっていないため、スタート前に着込んでしまいがちだ。まずは必ず準備体操をして身体をほぐして温める。少し寒く感じる程度のウェアで走り始めるほうが良い。

走り出すと更に体温は上昇しはじめ、5~10分もすれば丁度良くなってくる。さらに上りがあれば暑くなってくるだろう。汗をかく前に先手先手で衣類での体温調節をしていく。まずはアウターシェルのジッパーの開閉で調整し、更にはアウターシェルを脱いだりミッドレイヤーを一枚ずつ減らしていくといった具合に、内からの体温と外からの環境の変化に対応して衣類を調節する。暑いと感じたら早めに止まって脱いでしまおう。ポイントは汗で身体を濡らさないことだ。

春や秋は冬に比べ、ミッドレイヤーが少ない、もしくは無い状態での調整になる。ベースレイヤーは下着でないタイプを選び、暑いときには速乾性のシャツ一枚のスタイルになれるようにしておけば安心だ。気温差の大きい季節なので天気予報を良く確認してから何を着るか、準備しておくかを決めたい。

夏のサイクリングでは、レーサーシャツにレーサーパンツだけでOKである。素材は吸汗性と速乾性が高く、汗の蒸散での冷却効果があるクールマックスなどが良い。日焼けが心配な人はアームカバーやレッグカバーで保護しよう。

 

<レーサーシャツの特徴>

サイクリング用ウェアはレーサーシャツとレーサーパンツに代表される。これらは乗車時のペダリング効率と快適性を追求した専用設計であり、ライディングには機能的に最も適している。

レーサーシャツは前傾の乗車姿勢でも背中が出ないようにバックが長くなっており、腰の部分の後ろ半周はポケットである。ここにサイフやスマホ、補給食、カメラなどを入れておくのだ。人によっては予備チューブや工具まで入れている場合もある。胸はファスナーで大きく開くため、温度調節がしやすい。素材は即乾性の化繊で身体にぴったりとフィットして風でバタつかず、余計な疲れを起こさない機能満載の設計である。

レーサーシャツ/パンツのデザインは、安全面から周りに認知されやすい派手でカラフルなものが多く、チーム名やメーカー名がプリントされているものも人気だ。自分の自転車メーカーのチーム名が入ったシャツはカッコイイが、あくまで全体がコーディネートされていることが肝心。最近は自分でデザインできるオリジナルシャツが増えており、自分たちのチーム名を入れたりブラック系で統一したようなものまであるが、安全面を考慮することを忘れないようにしたい。

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サイクルシャツは視認性の高いカラフルなデザインのものがおすすめ

 

<レーパンは歩きにくい>

レーサーパンツ(通称レーパン)はペダリングのための専用設計であり、歩くことを想定してないので自転車を降りると機能的ではない。伸縮性の高い化繊素材が使われているものが多く、股ずれ防止用の大きなパッドが入っておりそのクッション効果でサドルに座り続けても、お尻が痛くなりにくい。素肌に直接履くのが原則で下着を着けると肌が擦れて痛くなりやすい。腿までのパンツが一般的だが、膝までのタイプやロングパンツ、タンクトップとレーパンとを合体させたスタイルのビフショーツやビフタイツなどいろんなタイプがある。

どのタイプも前傾して腰を大きく曲げたロードバイク乗車スタイルでカッティングされている。きつめにキュッとフィットしているため、普通に立ったり歩いたりするにはパッドなどに違和感があり快適ではない。ライディングを中心に楽しむのなら良いが、観光や散策、食事などを楽しむ際にはこのスタイルは快適ではないだろう。

 

<レーパンは恥ずかしい!?>

「まるで江頭2:50みたい!?」。ロングタイプのレーパンや、ビフタイツだけを履いた姿にそう思う人も多いかもしれない。ビギナーや女性にはこのぴちぴちしたレーパンは恥ずかしくて履けないという人もいる。街中のライドやちょっとした距離にレーパンを履くのは抵抗ある方もいるだろう。レーパンの着用を義務づける法律など無いので、そのような方のためにレーパン以外のサイクリングパンツを紹介しよう。

・パッド付きアンダーウェア

これは下着としてのパンツに厚いパッドが付いているもので、その上から自分の好みのズボンやパンツを履くことができる。パッドでお尻も痛くなりにくく、手持ちの普段着も活用できるので経済的にもラクである。

・バイカーズパンツ

街中でもスマートで、カジュアルに使えるパンツ。ストレッチ素材で動きやすくペダリングもスムーズである。お尻が擦れて痛まないように、サドルと接する場所や中央部などに縫い目がなく、パッドのあるインナーパンツ付きのものもある。スリムタイプで裾は調節して絞ることができ、チェーンなどの巻き込みや汚れを防止できる。

・MTB用ショーツ

MTBでもレーサーパンツを使う人もいるが、ぴちぴちではなく自然な余裕があり、動きやすいMTB用ショーツも人気である。ポケットなどもあって、見た目には普通のハーフパンツなので、街中で履いていても違和感はない。

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レーパンが苦手なら、パッド付きアンダーウェアなどの選択肢もある

 

<春夏秋冬の服装>

瀬戸さん表完成

 

<都会にはシティライドウェア!>

最近ではシティライドウェアなどと言った新たなジャンルで、街乗りやツーリング向けのサイクルウェアが充実しつつある。当然サイクリングに必要な機能は持ち合わせており速乾性素材などを使い背中のポケットもある。パンツも普通に立ったスタイルでのカッティングが施されており歩きやすく、ストレッチ性能を持たせたバイカーズパンツ、スリークオーターパンツなどがあり、街中のウェアとしてもオシャレに着こなすことができる。

また、手持ちの普段着をサイクリング用にコーディネーションしても構わない。ただし素材にはジーンズやコットンは避けたい。とくにジーンズ素材のパンツは膝の動きを妨げ腿も擦れるし、さらに濡れるとペダリングに大きな抵抗になる。手持ちの普段着を選ぶ際には、クルマからの視認性を考慮して、彩度の高い明色の選択が望ましい。自分の個性を生かしたカジュアルなウェアで、自転車とコーディネートして乗ればオシャレに楽しめる。

街乗りにもツーリングにも似合うのは、オーソドックスなニッカーズボンとハイソックスだ。これは膝の動きへの抵抗が少なく普段着にも合わせやすい。渋めのカッコイイおじさんっぽくてかなりオシャレである。今でもこのスタイルの愛好者は多い。ツイードを着こなして、街を自転車で楽しく走るイベントも毎年秋に東京と名古屋で開催されており、素敵な自転車おじさんがたくさん集まっている。

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ニッカーズボンにハイソックスというスタイルはヴィンテージバイクにも良く似合う

 

<女性が好むウェアを作れ!>

女性サイクリストが増えないのはファッションにも大きな原因がある。女性好みのシンプルでカワイイ洗練されたレーサーシャツなどの品揃えはまだまだ豊富ではない。レーサーパンツを素肌に直接履くのは女性には抵抗が大きいし、下着を着けてもその線が見えやすく敬遠されがちだ。太ももやお尻など体の線を出すのは恥ずかしい、という女性心理もあるだろう。スカートを着用する女性も多いが、機能的には空気抵抗を増やすだけでマイナスになる。

機能重視のためかデザイン的には派手なものにかたよっていて、ファッションに敏感な女性が憧れを感じるようなウェアは少ないとの声をよく聞く。また、女性からの視点は自転車そのものよりも、ファッションに注目される傾向にあるという。女性ライダーのためにも、女性が好むファッショナブルなウェア類の品揃えをメーカーに期待したいものだ。

 

<アイウェアもヘルメットもオシャレに>

衣類だけでなく、身につけるすべてのものが、レイヤード術にもオシャレにも大切である。サイクリングで風を切るとチリやホコリが目に入りやすく、とくにコンタクトレンズの人には辛いこととなる。さらに紫外線からの保護の意味もあり、アイウェアは機能面でも大切なアイテムだ。サングラスは見た目にカッコイイデザインは多いが、自分の顔やその形に合っているかがポイント。調光機能のあるものや、レンズが取り替えられるタイプもあるので、TPOに応じて身に着けよう。

ヘルメットも派手なカラーが多い。安全のための周りへの認知性向上のニーズからであるが、派手な色なので他とのコーディネーションが合わなければ、アンバランスさが目立ってしまいがちだ。フレームと色を合わせるなど工夫しておきたい。値段は数千円~数万円と幅があるが、これは主にデザインと重量の差である。

グローブはクッションでハンドルからの振動を吸収して疲れを軽減するとともに、転倒時の保護の役目を担う。手の甲がタオル地のものは汗を拭きやすくて便利だ。手ごろな価格なので幾つか持っておいて、ウェアの色に合わせてコーディネートできればオシャレである。

どんなにファッションをビシッと決めても、イイ気になって交通ルールやマナーを守らずにカッ飛ばしたりするのは人間としてカッコ悪い。マナーを遵守し内面から湧き出る、スマートな大人のオシャレを身に付けたいものだ。

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は12月5日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

(写真/本人)


第5章:ゴキゲン!「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!

1)生活習慣病に、メタボ対策に、効果絶大!

2)ダイエット、シェイプアップに最適!

3)違和感なし!快適乗車で生涯サイクリストに!

4)カッコよく快適に!レイヤード術

5)予防する!身体のトラブル

6)カラダの異常!どうする!?

7)サイクリストの義務!自転車の健康管理

8)パンク!!! スマートな対処はカッコイイ

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