2018年01月16日
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 5-8) パンク!! スマートな対処はカッコイイ
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第5章:ゴキゲン! 「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!
5-8)パンク!! スマートな対処はカッコイイ
タイヤは人間のエネルギーや意思の最終伝達ポイントであり、自転車走行においては最も注意を払う必要のある部分でもある。しかしパンクは突然に襲いかかってくる。これに対処できなければ走行不能になってしまう。有事の際にテキパキとスマートに対処できれば仲間からは尊敬されるだろう。
また、その予防と快適走行の基本になるのが空気圧調整である。適正空気圧をつねに保持するのは大切な基本だ。こまめに空気と愛情を注入しよう。
<空気圧調整にはもっとも気を配る>
タイヤは自転車の全てのバーツの中で唯一地面に接する場所であり、曲がることも加速も停止も、すべてのエネルギーや意思の最終伝達ポイントである。そのタイヤの空気圧の調整は、最も大切で基本的なメンテナンスである。
どんなに他の調整が完璧でも空気圧が低すぎれば快適には走れない。空気圧によって振動吸収や走行抵抗、路面のグリップ力などが変動し、それが安全にも疲れ具合にも影響する。他のパーツと違って一度適正レベルに調節しても、空気が自然に抜けていくのは避けられないため、最も高頻度な調整が必要なのである。
空気圧が低いと接地面積が増え路面抵抗が大きくなる。そのぶん疲れやすくなり、パンクのリスクも大きくなる。しかし振動吸収性は向上し、乗り心地はソフトになる。またグリップ力が高まるため雨などで濡れた路面や、雪道などの滑りやすいコンディションでは走りやすくなる。
逆に空気圧が高いと接地面積は限られた範囲となる。ロードバイクでは親指の腹くらいの面積だ。路面抵抗は小さくなり軽快に走れて疲れにくい。パンクのリスクは少し軽減される。一方、路面状況が悪いとポンポンと跳ねてハンドル操作に影響することもある。振動吸収も小さくなり、グリップ力も下がってスリップもしやすくなることを認識しておきたい。
空気圧の高低では以上のような特徴があるが、いずれにせよそのタイヤの適正空気圧の範囲内で調整したい。
<空気圧調整は頻繁に>
空気圧の確認は乗車前に必ず行う。週一回未満の乗車なら毎回空気圧を調整することを習慣づけたい。適正な空気圧はタイヤによって異なる。タイヤが細いほどパンクのリスクが増えるため、それを軽減するためにも高い空気圧が必要になる。MTBなら3-6気圧、クロスバイクなら5-8気圧、ロードバイクになると7-10気圧くらいが適正の範囲となる。ちなみにクルマ(乗用車)のタイヤは2気圧台である。適正空気圧はタイヤの側面に表示してあるので確認しておこう。空気圧の単位はkPa(キロパスカル)かbar(バール)で表示されているケースが多い。例えば345-515kPaという表示があれば、ほぼ3.5~5気圧が適正と考えてOKである。
空気圧を量るにはエアーゲージ(空気圧メーター)のついた空気入れが便利である。自宅などで空気を入れる場合は、足で踏んで固定しながらポンピングする一般的なフロアポンプタイプにエアーゲージが付いているものが使いやすい。
<携帯ポンプは慎重に選ぶ>
携帯用ポンプでも足踏みタイプやエアーゲージ付きをお勧めしたい。サイズは大きめで携帯性は犠牲になるが、小さなポンプではロードバイクに必要な高い空気圧まで入れるにはかなりの労力と時間を要するし、上手く入らないこともある。無理に入れようとしたり着脱を力任せにすると、フレンチバルブの頭の部分が折れてしまいチューブが使えなくなることもある。見た目のデザインやコンパクトさだけでなく、しっかりしたものを選びたい。
携帯ポンプの代わりにCO2ボンベセット (バルブタイプ) を選択する人もいる。7-8cmのポンプを専用アダプターでチューブのバルブに押し込むと、一瞬で空気が適正まで入る優れものである。荷物をコンパクトに軽くできるメリットもある。実際に使用する際にはボンベが急速に冷えて、凍傷になるリスクあるので取り扱いには注意したい。また、二酸化炭素は空気が抜けるスピードが早いので、帰宅後には再度フロアポンプで空気を入れておくことが望ましい。
携帯用ポンプも足で踏んで支えられるものが安定感がありおすすめだ
携帯ポンプの代わりにCO2ボンベを使用するのも手だ
<身体で空気圧を覚える>
空気圧を測るのにエアーゲージは装着されていたほうが良いのは言うまでもないが、慣れてくれば、自分の自転車の適性空気圧をある程度手で覚えておくことができる。親指の腹と人差し指の中ほど横付近でタイヤの両サイドを挟んで力を込めてつまみ、どの程度凹むかを手の感覚で覚えておくのだ。MTBでは野球の軟式ボールくらいの硬さであり、ロードバイクになるとパンパンでほとんど凹まない感覚である。
タイヤによっての適正空気圧には幅があるため、その範囲内で高めが良いのか低いほうが乗りやすいのか、自分の好みや路面環境に合わせて対応できるように意図的に空気圧を変えて乗り比べて、身体で覚えるようにしておきたい。
<フレンチバルブの空気の入れ方>
スポーツバイクのチューブはフレンチバルブが主流だが、空気が上手く入らないことがある。バルブが固まっている場合があるので、必ず一度バルブを手で押し込んでシュッと一瞬空気を漏らしてから入れるようにしよう。
とくに携帯ポンプではバルブ止めナットを曲げたり折ったりしてしまいがちなので、正確に使いたい。バルブ止めナットをいっぱいに緩めてポンプの口をリムに対して垂直にきっちり奥まで入れる。口の背面にあるレバーを締めて固定してから空気を入れるが、その際つねにリムに対しての垂直をしっかりと維持するようにする。
ポンプを抜く際にはレバーを緩めバルブから垂直にさっと引き上げる。ゆっくり引き上げると曲がりやすく場合によってはバルブ頭が折れて使えなくなることもある。バルブには仏式、英式、米式の3種類があり、それぞれ互換性はなく、リムも専用のものしか対応できないのでチューブ購入の際には良く確認しておこう。ただし空気入れにはアダプターによってそれぞれのバルブに対応できるものもある。
<パンクは不可避だがリスクは軽減できる>
メカトラブルはよほどのことが無い限り、対処できるか騙し騙しでもなんとか乗っていけるようにはなる。しかしパンクしてタイヤがぺしゃんこになってしまったら乗ることはできない。無理やり乗ったらタイヤやリムなどが使い物にならなくなってしまう。路面には様々な障害物があり、それらを完璧に避けることは不可能である。が、パンクしやすい人としにくい人がいるのも事実。いかに注意して走っているか、日頃のメンテナンスをしっかりしているかの現れでもある。
パンクにはいくつかの種類がある。原因はいろいろとあるが、注意力とメンテナンスでリスクを軽減できるのであり、経験を積んだベテランほどパンクは少ない。
<パンク修理の基本はチューブ交換!>
パンク時の対応はチューブを取り替えるのが原則である。一人でサイクリングしている場合で時間に余裕があるのならばチューブ修理をしても構わないが、チューブの交換だけならば、時間もかからず修理をするよりも確実に対処できる。とくに仲間と一緒の場合には迅速にチューブ交換をして、他のメンバーへの迷惑を最小限に抑えるのがマナーだ。パンクしたチューブは持ち帰って自宅でゆっくり修理すれば良い。
ただし、タイヤにガラス片などが刺さっている場合には、チューブを交換してもすぐに再びパンクしてしまう可能性が高い。チューブ交換の際には、パンクの原因を突き止め、タイヤの状態も確認したい。
また2度以上のパンクや、万が一にも替えチューブを忘れた場合にはその場でのチューブの修理が必要になる。もし、仲間から予備チューブを借りることができればそうするほうが望ましい。チューブを2本以上持ち歩いても良いが、荷物が増えるのでチューブ+パンク修理キットがスマートだろう。100円ショップでもコンパクトなパンク修理キットを売っているので持っておきたい。チューブの交換や修理の仕方は、事前に練習して習得しておくのが安心であり、同行者に迷惑をかけないマナーである。
<パンク修理の手順>
- まずは安全な場所に移動し、チューブの空気を全て抜いて車輪をはずす。
- チューブをリムに固定しているリムナットをはずす(手で行う)。※リムナットがある場合。
- リムとタイヤの間にタイヤレバーを入れ、タイヤのふち(ビード)をリムから持ち上げて出す。タイヤレバーのフックをスポークに掛けて固定する。その際タイヤレバーでチューブを挟まないように注意して慎重に行う。
- 2本目のタイヤレバーを10センチほどずらして差し込み、同じ作業を繰り返す。
- 必要に応じて3本目のタイヤレバーを使い、はずれはじめたタイヤとリムの間に指を入れ引き出すようにタイヤをはずす。慣れればタイヤレバーは2本ではずせる。
- タイヤの片側が全て外れたら、中からチューブを引き出す。バルブ部分は最後にはずす。タイヤの状態やタイヤ内に異物が残っていないかもチェックしておく。(チューブ交換の場合は⑫に飛ぶ)
- チューブに空気を入れ、耳とほほに近づけて音と空気の感触でパンク穴を探す。ただしパンク穴は1箇所とは限らない。
- 穴が見つかったら貼り付けるパッチよりも一回り大きくチューブの表面にサンドペーパーをかけ、表面を荒らして接着しやすくする。進行方向に平行にだけヤスリがけすると空気が漏れやすくなるので様々な角度から行う。削りカスはウェスできれいに拭き取る。
- 穴を中心に接着剤を薄く均一に塗る。その後接着剤がべたつかなくなるまで2~3分乾かす。ただし接着剤のいらないイージーパッチやスーパーパッチならこの作業は不要。
- パッチを進行方向に対して45度の角度を付けて貼り付ける。チューブに対して正方形でなく菱形になるようにするのがポイント。(円形のパッチなら角度は不問)親指でパッチを強く押し付けてしっかりと圧着し、馴染ませる。
- チューブに空気を入れ、その場所が漏れていないか、他にも穴がないか確認する。
- チューブがドーナツ形をかろうじて保てる程度に少しだけ空気を入れて、タイヤに収めていく。最初はバルブ穴部分から入れて両サイドに均等に進め、バルブの反対側で完了する。チューブはリムの中心にきっちりと落としこむようにする。
- タイヤをバルブの部分からリムにはめ込んでいく。チューブのバルブを一度押し込んで、タイヤのビードがチューブを噛まないようにしておく。
- 両手でホイールを抱きかかえるようにして左右均等にはめていく。その際タイヤのビードがリムの淵底にきっちりはまるように、こまめに何度も揉む様にして、しっかりと落とし込んでいくのがポイント。
- 最後にバルブの反対側で押し込む。その際タイヤレバーは使わず手で全て入れる。無理なら再度タイヤ全周をよく揉んで⑭の作業を繰り返しビードをきちんと落とし込む。どうしても入らなければタイヤレバーを使うが、チューブを噛んでそこがまたパンクすることがあるので細心の注意が必要。
- テニスボールくらいの硬さまで空気を入れ、タイヤ、チューブ、リムを左右にねじるようにしながら馴染ませる。タイヤについているリムラインがリムのふちから均等になるように手で調整する。
- チューブをリムに固定しているバルブのネジを手で締め、空気を適正気圧まで入れる。
- 車輪をフレームにセットして完了。
3.タイヤレバーでチューブを挟まないよう、注意しながら落ち着いて作業しよう
7.チューブからの空気の漏れを「音」と「肌」で感じて、パンク箇所を探そう
14.左右から均等にはめていく。終盤はまりづらい場合は、すでにはまっているところをもみ込みビードをきっちりと落とし込もう
<ゴムのり不要のパッチが便利>
パンク修理をする際に必要なゴムのりだが、100円ショップなどの小さなチューブのものは一度使って時間が経つと、きちっとフタを締めていても蒸発して使えなくなっていることがある。サイクリング中にパンク修理が必要な状況で、ゴムのりが使えなければ致命的だ。ゴムのりを必要としない新しい方式の「スーパーパッチ」や「イージーパッチ」という商品を準備しておけば、その心配から開放される。
これは強力な粘着剤加工のされているウレタンシート製のパッチで、ゴムのりを必要としないため、取扱いが簡単でコツさえつかめば作業はより早く確実に対処できる。保管性や携行性にも優れているため急速に普及しており、スタンダードになりつつある商品だ。
<タイヤが裂けたら>
バーストとは破裂のことだが、その場合チューブだけでなくタイヤまで切れてしまうことがある。チューブは大きく裂けてしまいパンク修理はまず不可能である。替えチューブで対応するが、タイヤはそのままでは使えない。空気を入れるとタイヤの切れ目からチューブが膨らんで飛び出してしまうのだ。
タイヤの裂け目が1cm未満程度ならチューブに貼る一番大きなパッチをタイヤの裏から貼ってみる。ただし、高圧になるとタイヤの膨らみを抑えられないことがあるので、パッチは2枚以上重ねて貼っておいたほうが良いだろう。
1cm以上の裂け目は対処が困難である。パッチだけでは足りないのでガムテープや養生テープがあればそれでタイヤを巻きつけて2~3重、もしくはそれ以上重ねて貼り付ける。サロンパスや大きなバンドエイドなどがあればそれらを活用することもできる。
またタイヤブートというタイヤ用のパッチも販売されているので、それを利用するのも手だ。空気を入れても裂け目が開かないようにしっかり貼り付けてからリムに固定する。
バーストしたチューブは修理できず、予備のチューブも無ければ空気を入れることは諦めざるを得ない。その場合はタオルやTシャツ、新聞紙やビニールなど何でも構わないがタイヤの中に詰め込む。形を整えつつ、できるだけぎっしり詰め込めばかろうじて走行できるようにはなる。もちろんスピードは出せず安定もしないので、慎重に徐行しながら走行する。
パンク修理は、やればやるほど慣れてくる。これをスマートにこなせればベテランサイクリストらしくてカッコイイのだ! タイヤとチューブは命を乗せていると言っても過言ではない重要なパーツだ。トラブル対処はとても大切であり、サイクリストとして是非ともしっかりと身につけておきたい。
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は1月30日(火)に公開予定です。お楽しみに!)
(写真/本人)
第5章:ゴキゲン!「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!
8)パンク!! スマートな対処はカッコイイ
9)センシティブ!ディレーラー調整のコツ
10)命を預ける!?ブレーキのメンテナンス
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。