2017年09月26日
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 4-9) 自転車は社会を、未来を、地球を救う!
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!
4-9) 自転車は社会を、未来を、地球を救う!
ジテツウは健康や環境、交通社会や経済などにおいて数多くのメリットがある。ジテツウをしている人は自分事だけでなく、地球や社会のための環境意識が高い場合が多い。また周りからもそのように見られる事が、ちょっとカッコイイ!?ひとりでも多くの人がジテツウを始めれば、移動を自転車にすれば、それは社会にも、未来にも、地球にも良いことにつながるのである。
<クルマからジテツウにするとトン単位でCO2削減できる>
地球温暖化対策のひとつとしてモーダルシフト(交通手段の変更)が提唱されているが、ジテツウはその最も有効な手段として、多くの自治体などから推奨されている。
ガソリンを1L燃焼させると2.4kgのCO2が発生する。例えば燃費が10km/Lのクルマで片道15kmの距離を通勤した場合、一日に往復で7.2kg、仮に1年間で210日クルマ通勤すると約1.5トンものCO2が排出されることとなる。
クルマはCO2排出だけでなく、騒音や道路上の粉塵、ガソリンを製造する段階におけ有害物質の排出など環境には好ましくない影響がある。燃料を使う交通機関は同様であり、電車も電気をつくる段階でCO2を排出している。
<徒歩やランニングよりもCO2削減効果は大きい>
いうまでも無く自転車の場合はこれらの影響は非常に少なく、地球環境に最も優しい移動手段である。ジテツウのエネルギーの源となる食べ物は、生産の過程でCO2が放出されているので総合的にはCO2排出はあるかもしれない。しかし、徒歩やランニングと比較しても自転車は少ない消費カロリーで多くの距離を移動でき、エネルギー効率が最も良いのである。ジテツウをしながら環境への貢献を直接的に実感することはできなくても、そういった意識を持てることは、ひとつの誇りになり、励みにもなるのである。
ジテツウは自分のためだけではなく、環境への貢献も意識すれば、より気持ち良く実践できるだろう
<渋滞やラッシュの緩和にもなる>
都会では多くのクルマが通勤時間帯に集中して走るため、慢性的な渋滞となっていて、さらに無駄なガソリン消費を加速させている。ジテツウが増え、クルマ通勤が減れば渋滞緩和につながり、クルマ利用による数々のデメリットの軽減にも貢献することとなる。ジテツウの増加に伴い、自転車にとっての走行環境の改善に行政が動きだしており、交通環境が整備されつつある。よりジテツウが増える事でその動きも加速していくだろう。
一方、電車通勤者がジテツウにモーダルシフトすることで、通勤ラッシュの緩和につながり、ダイヤの乱れやトラブルの低減の一助にもなる。ジテツウであれば、公共交通機関がストップするような事態でも、混乱の回避や帰宅難民となるリスクの低減が期待できる。また、有事の際、仮にその日は自転車で通っていなくても、電車通勤だけの人と比べて様々な経路の道を知っているので歩いてでも帰りやすい。ジテツウは地理に強くなれるのだ。
<経済的なメリット>
経済的にもジテツウはお財布に優しい。クルマ通勤と比べるとガソリンなどの燃料費、駐車場代、税金、保険料、車検代などはジテツウの場合はほとんどかからない。さらにクルマを手放せばもっと経済的メリットは大きくなる。ある試算では年間100万円程度浮くケースもあるという。
ただし、自転車にハマって、パーツなどをグレードアップしたり、用品やウエアなどに凝りだしたら、その限りではないので、浪費しすぎないように上手に楽しもう。しかしながら、経済的に余裕があればドンドン消費して日本経済の活性化に貢献していただきたい!?
電車やクルマ通勤で、会社から交通費が出ていて仮にそれが無くなる場合、自分のメリットにはならないが、会社収益に貢献し、それはいずれ社会に還元されることにもなるだろう。
<会社ルールの確認>
「環境」は多くの企業にとってキーワードである。環境問題に前向きに取り組んでいるというイメージをつくることは、どんな企業にとってもプラスになるだろう。世の中の自転車ブーム、ジテツウの増加は環境に好影響を与えている事は企業も認識している。
ジテツウを促進することにより、企業イメージの向上に加え、従業員の健康状態の改善への寄与、通勤費や通勤車用の駐車場コストの削減などの効果を得ることができるのだ。実際にジテツウを認めている、または奨励している企業はどんどんと増えている。ジテツウを始める場合、まずは会社のルールを確認しよう。ポイントは次のとおり。
・ジテツウを認めているか
・ジテツウの規定があるか
・駐輪場は会社にあるか、なければ近隣にあるか
・ジテツウ承認の手続きは(保険の加入、整備の義務、承認証の貼付など)
・通勤費の扱い
・事故の場合の対応(被害者/加害者それぞれの場合)
・労災の適用
・自転車運転に関する安全教育の有無
<通勤費の扱いは要注意>
注意しなければならいのは、通勤費の扱いだ。交通費は会社の就業規則等に基づいて支払われるもので、賃金の一種だがその支払いは法律で求められているものではなく、会社が任意で規定を定めて支払っている。従って会社によってルールが異なるのであり、ジテツウにも通勤費が出る場合もある。
会社に内緒でジテツウをしていて、別途一般交通機関を使ったベースの通勤費を受け取っていた場合には、過去に遡って返納させられる場合もあれば、人事評価に影響したり、処罰の対象になったり、酷い場合には懲戒解雇になる可能性も否定できない。
会社がジテツウを認めていない場合は、会社との交渉になる。ジテツウを認めることにより、前述のような会社にとってのメリットがあることをしっかりとPRしてみよう。不幸にも会社がどうしても認めないなら、自己責任で行うこととなるが、リスクをとってもジテツウを選ぶ人々が多くいる(筆者もかつてはそうであった)。
<自転車に優しい都市No.1>
「自転車シティ」化がどれだけ進んでいるかが、世界の先進都市のバロメーターのひとつであるとも言われている。ある調査では、自転車に優しい都市No.1はデンマークのコペンハーゲンである(2015年)。
日本の都市の「自転車シティ」化のためにも、見習って欲しいポイントをあげてみる。まずは、都市全域を網羅する自転車レーン網の整備である。日本でも各地で自転車レーンの整備が進みつつあるが、断続的でありネット状になるにはまだまだ程遠い状況だ。途切れることなく、何処にでもつながっている自転車レーン網の整備が必要であろう。交差点では自転車の停止線はクルマより5mほど前方に引かれていて、クルマの前に出て停止するようになっている。そして自転車用の信号はクルマ用よりも早めに青に変わり、先に発進できる。これによりクルマによる巻き込み事故などの防止になるのだ。
さらに、自転車レーンにはLED の案内灯が埋められおり、その輝きに従って進めば交差点では赤信号で止まらずに進めるようにプログラムされている。LED が埋設されていなくても、速度メーカーが設置され、時速20 ㎞前後で走ると信号にかからないような仕組みになっているところもある。
他にも、電車には輪行せずにそのまま載せられるし、冬の雪道も自転車レーンは、車道より優先して除雪されるなど、自転車利用者の視点に立って様々なインフラが整備されているのだ。これらにより、コペンハーゲンの通勤通学の自転車の利用割合が60%程度に増えたのみならず、CO2排出量は、2009 年から2年間で21%も削減されたという。
<自転車シティ化が街を活性化させる>
全国の町で中心部の「シャッター商店街」化が進んでいる。クルマ優先のインフラ整備で郊外のバイパスや幹線道路沿いに、大型ショップや商業コンプレックスなどがどんどんできて人々を吸引し、クルマの駐車スペースの少ない中心部の商店街には人が来なくなっているのだ。
しかし、自転車は商店街を復活させる可能性を秘めている。自転車インフラの整備が進み利用者が増えれば、人々は街中に行きやすくなる。往来が増えれば来客も増えて、商店街が潤うという状況を作り出すことに、世界の自転車シティは成功している。自転車と歩行者のインフラ整備を優先させ、クルマを街中心から締め出すことにより、売上が上がった実例は、欧米の自転車先進都市で証明されているのだ。例えば、アメリカのニューヨーク市では自転車レーン網の整備で、商店街の売上が49%アップしたとの報告もされている。自転車に優しい都市は、街を活性化させ、持続可能な社会を推進する街になると言えるだろう。
気軽に商店に立ち寄れるという自転車のメリットが今後商店街復活のカギを握るだろう
<発展途上国を自転車で支援する>
放置自転車を発展途上国に譲与することで、その国の交通環境を向上させ、人々の生活や経済にも貢献している事業がある。「ムコーバ」(再生自転車海外譲与自治体連絡会)という慈善団体が、地方自治体などと連携して、回収後に持ち主が引き取りに来ない放置自転車を修理・再生し、団体・企業・市民などからも協力を得て、海外に譲与している。ちなみに、2016年3月までに91カ国に8万台以上の自転車が、発展途上国に寄贈されたという。
こうした国々では道路が整備されていないことが多く、届けられた再生自転車は、例えば現地の助産師や保健師が地域住民を巡回訪問する際の足として、保健医療の普及活動に役立てられたりしている。WBR(World Bicycle Relief)というNPO団体も同様の活動を行っており、そこからアフリカへ譲与された自転車によって、何時間も歩かないと学校に行けなかった子どもたちが、通学できるようになったり、荷物を積める自転車のおかげで仕事が効率化されたりなど、様々な形で発展途上国への貢献に繋がっている。
燃料や複雑な整備の必要のない自転車は発展途上国での人々の生活にも大きく貢献している
<自転車を通じて、社会に貢献する>
クルマをハイブリッド車や電気自動車に変えたり、太陽光発電を家庭に導入するなど、環境意識の高い人は増えているが、自転車は健康にも交通環境にも社会にも、もっともっと良いのである。環境意識のある方々は、率先してジテツウを始め、ずっと続けて広めていただければと思う。
ひとりでも多くの方々がジテツウをして、日々の移動を動力に頼らない自転車にすることにより、人にも社会にも地球にもメリットがあるのだ。しかし、3日坊主では意味が無い。ずっと続けることが大切なのである。ジテツウをしていると、環境や健康、交通社会への改善意識が芽生えてくるし、周りからもスマートでクールに見られるかもしれない!
物事にもアクティブになり、自然と笑顔が増えてくるのだ。自分と世の中を変える小さな一歩に、自己満足のヨロコビを感じるだろう。自転車を楽しみ続けることで、より良い社会づくりに貢献して行こう!
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は10月10日(火)に公開予定です。お楽しみに!)
(写真/本人)
第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!
9)自転車は社会を、未来を、地球を救う!
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。