2017年08月29日
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 4-7) 迅速に!交通事故での対応
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!
4-7) 迅速に!交通事故での対応
自転車の違反に関する道路交通法が2015年6月に改正施行され、2年が経過した。また、本年5月には自転車活用推進法が施行され、自転車の走行環境整備も進めやすくなってきている。おかげで自転車のマナーやルール遵守などの問題意識が高まってきたように思う。
しかし、自転車事故の割合は僅かながら減少しつつあるも、未だに事故全体の2割近くを占める高水準で推移しており、これは先進国では最悪レベルである。事故の際の対処を、間違わないようにきっちりするにはどうすべきかを考えてみたい。
<どんなに注意してもリスクは無くならない>
ジテツウにおいてもサイクリングやツーリングであっても、交通事故は最も致命的な事態を招いてしまう。
事故は乗車中の注意力や、先の状況を読む洞察力と判断力、自転車の安全整備や徹底したルール遵守などでかなりの予防はできる。しかし、自分では避けることのできない相手の不注意や不可抗力などで事故になってしまう事もある。万が一、不幸にも事故に遭った際には、きちっとした対処をしてその後の被害やトラブルを最小限に抑えることが重要である。
負傷者が出た場合は、自分が被害者であれ加害者であれ最も迅速に対処すべきであり、少しでも対処に不安があれば迷わずに119番に連絡すべきである。何よりも人間の身体が、そして人命救助が最優先なのである。
グループライド中に仲間が事故に遭ってしまうケースもある。人命救助が最優先を念頭に、対処に不安があれば、すぐに119番に連絡しよう
<クルマの運転者を確認し、必ず警察へ連絡する>
自転車が被害者となるケースは相手がクルマであることがほとんどである。怪我の治療や壊れた自転車の修理代、場合によっては休業補償や慰謝料なども相手の自動車保険で支払われる。
事故の際、なにはともあれ必ず警察へ連絡し、必要に応じて救急車を手配しよう。
自分の保険を使う場合でも、事故証明は必要になる。そして相手の免許証は必ず確認し住所、電話番号などを記録し、免許証の写真を撮っておこう。また免許証の裏面に住所変更などが記載されている事もあるので確認しておきたい。
仮に相手が逃げようとすればクルマのナンバーと車種だけはおさえておこう。事故直後は当事者は気が動転しがちであり、判断を間違わないようにとにかく落ち着くことが大切である。深呼吸をして怪我の有無や状態を確認し、警察への連絡を直ぐにすることを念頭に置いておきたい。
<警察には真摯に対応する>
警察が来たら現場検証にできるだけ立ち会って協力し、状況をきちっと説明する。警察官のその時の気分や相性により、事故証明の内容にも影響する可能性もあるので、警察官にはまじめに好意的に対処する。また警察にはできるだけ自分から連絡をしたほうが良い。警察は必ず誰が連絡したかを確認するし、相手に対しても心理的に優位に立てる事もある。
クルマが相手の場合、過去の犯歴などからも相手が警察への連絡を嫌がることがある。しかし仮に相手が高額とも思える示談を示してきても応じてはいけない。怪我はその後の後遺症になるかもしれず、その場の示談ではカバーされないこととなるし、休業補償や慰謝料などについてもうやむやになる可能性がある。
警察への連絡がダメだというのなら必ず救急車を呼ぼう。それなら相手も認めざるを得ないだろうし、救急と警察はリンクしているためちゃんと警察が来て現場検証と事故証明をしてもらえる。これがないと後々のトラブルの発生につながる。また、被害者でも加害者でも単独の場合でも、その後の余計なトラブルを抑え、処理がスムースに行くように、事故の状況はできるだけ詳細にメモしておこう。目撃者は大切な証人になるので、真摯に協力をお願いし名刺などを貰うか、その写真を撮らせていただき連絡先をおさえておきたい。
<怪我をさせてしまったら>
相手が歩行者や自転車などのケースで加害者となった場合は、何よりも被害者の救護が先決である。もちろん加害者であるなしにかかわらず負傷者を救うことが最優先であるのは言うまでもない。状況に応じて早急に救急車も呼ぶ。警察にも必ず怪我人がいる旨を連絡しておこう。
仮に相手の自己判断で警察に連絡しないこととなっても、後に相手側が連絡をした場合は立場が悪くなることもある。その場で自ら連絡したほうが結果的には良いこととなる。もし何らかの保険に入っている場合、賠償保障が使える場合もあるし自転車保険などを使うなら、必ず警察の事故証明が必要になる。
そして最も大切なことは被害を与えた相手への真摯なお詫びである。その後のお見舞いやきちんとした説明など、出来る限り被害者に対して誠意を尽くすことが加害者としての当然の義務である。
<自分が怪我しても身体最優先>
構造物に激突したり、激しく転倒したり転落するなどの自転車単独の事故であっても、怪我の度合いが大きければ救急車を呼び、警察に連絡すべきである。保険のあるなしにかかわらず、後で症状が出てきたり、思わぬところで誰かに損害を与えてしまったり、思ったよりも身体へのダメージを被っていることもあり、事故証明は必ず取っておくようにしたい。怪我は何ともないと思ってもしっかりと応急処置を行い、病院で手当てを受けるべきである。
自分の怪我の治療も最優先で行うべきだが、自分で出来ない場合は相手やまわりの人に救いを求める。処置が遅れると悪化するだけでなく、場合によっては深刻な事態となってしまう。必ず病院で治療を受け、今後の保険などの請求に備え領収書は取っておこう。
頭を強く打った場合など、少し時間が経ってから症状が出てくることもある。その場では大丈夫だと思っても、救急車を呼んだ方が良い
<擦り傷の対処方法>
自転車で一番多い怪我は擦り傷である。転倒のほか木や壁などといった固形物に擦ってしまったり、準備中や作業中にもちょっとした不注意で怪我したりすることもある。出血があれば、コンビニやガソリンスタンドなどのトイレや水道を借りて、まずは流水でキズ口をしっかり水洗いする。汚れを完全に洗い流し清潔なティッシュやハンカチ、タオルなどでさっと拭き取り、できるだけ乾燥させる。
空気に触れさせても乾燥せず血が止まらなければ止血剤を使う。また傷が深かったり汚れが酷い場合には化膿止めを塗っておき、最後に滅菌ガーゼを絆創膏などで止める。
ファーストエイドキットがなければ、コンビニなどでバンドエイドなどを買い、貼って傷を保護しておく。ジテツウの際にはバンドエイドなどは数枚をつねに携帯しておきたい。交番や駅などでもファーストエイドキットを貸してくれることがあり、事態が深刻なら遠慮せずにお願いをしよう。
<大怪我は初動が大切>
擦り傷程度なら何とかなるが、骨折など大きな怪我や身体に深刻なダメージがある場合は、とにかく慌てず冷静になり落ち着くことである。そしてすぐになにをすべきか、さらにその次にどうアクションとるべきかを想定しながら初動を開始しよう。
初動を間違えばトラブルが拡大することにつながる、まずは心構えに余裕を持とう。よく起こる主なトラブルに対処するため、下記表のような基本知識を頭に入れておけば慌てずに初動できる。
もし対処に自信が持てなければ携帯電話で119に連絡すれば良い。救助を求めなくても対処方法についての適切なアドバイスを受けられる。救助する方も初動と対処をきっちり指導することでトラブルの悪化を防ぐことができるし、救助出動の減少にもつながるので、決して迷惑なことではない。対処への不安があれば余計な躊躇はせずに消防署でも病院でも警察でも役所でも積極的にコンタクトをとろう。そのためにも高い税金を払っているのではないか……。
<怪我の応急処置>
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は9月12日(火)に公開予定です。お楽しみに!)
(写真/本人)
第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!
7)迅速に!交通事故での対応
8)確実に!盗難対策と自転車保険
9)自転車は社会を、未来を、地球を救う!
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。