2017年07月04日
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 4-3) 遠くてもあきらめない、ジテツウは楽しめる!
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!
4-3)遠くてもあきらめない、ジテツウは楽しめる!
ジテツウはしてみたいけど、職場や学校までは遠いので無理だと諦めてしまう人、または具体的な検討にも至らない人もいるだろう。しかし例え何十キロ離れていようと、ジテツウは可能なのである。ひとことで言えば交通機関を併用すれば良いのだ。距離や時間であきらめる必要は無い。是非トライしてみよう。
<ジテツウ可能な距離と時間>
自転車での通勤時間は概ね1時間以内が目安であり、一般的には15-20km位以内が圏内であろう。もちろん片道1時間30分だとか30km以上をジテツウしている人もいらっしゃる。体力や時間に余裕があれば是非そうしたいところだが、最初からいきなり往復60kmは容易ではない。
ママチャリではなく、スポーツバイクでのジテツウの場合の距離と所要時間は、様々な条件にもよるが、概ね次のとおりとなる。
<片道20Km以上あればどうするか?>
職場や学校までは20km以上あるから、ジテツウは無理だとあきらめるのは早計である。何もすべてを自転車で行かなくても良いのだ。
例えば自宅から鉄道駅までバスを使っているなら、まずはその区間だけをジテツウしてみよう。距離を伸ばしたくなれば、鉄道の駅を隣駅まで、更にその隣駅までと変更して行く事もできる。
電車通勤をしているのならばいつもの乗車駅ではなく、幾つか先の駅までをジテツウしてそこから電車に乗っても構わない。乗換があるならその駅か、その先の駅まで自転車で行くのも手だろう。慣れるにしたがって乗車駅をどんどんと変更していけば、様々なルートを開発しやすくなるし、発見や楽しみの機会も広がって行く。その日の体調や仕事のスケジュールに合せて乗車駅をフレキシブルに変更する事だってできるのである。逆に途中までは交通機関を利用し、途中の駅から会社までを自転車で行くという選択肢もある。都会の場合、都心に近づくに連れて電車の混雑は激しくなるが、そうなる前に電車を降りて残りを快適にジテツウすれば、会社に着いた時には心身ともにリフレッシュされてメリットを享受できるだろう。
ジテツウする区間を工夫すれば、通勤ラッシュの混雑回避にもつながる可能性もある
<マイタウンが増えていく>
自転車を駐めておく駅については、駐輪場所を探す必要もあるだろうし、その駅で乗降するならその駅周辺にも馴染みが生まれてくる。帰りにはその街で買い物をすることもあるだろうし、夕食を摂る場合もあるだろう。起点となる街として、ある意味マイタウンといった感覚が芽生えてくるかもしれない。
交通機関を併用する場合、自宅と途中駅までのジテツウと、途中駅から会社までのジテツウを使い分けることも可能だし、その起点となる駅は、自宅と職場の間なら自由に選択できる。いろんな駅を起点にしてジテツウを楽しめば、マイタウンが増えていくのである。いろんな街を知ることで、自分に合った場所がみつかるかもしれない。気に入ればその街に引っ越して住むこともアリなのである。
ジテツウが前提ならば、駅の近くでなくても通勤通学には影響は少ない。駅から離れた場所なら予算的にも財布に優しい住まいが見つかりやすくなる。
<駐輪場所が課題>
ジテツウを始めるに際して駐輪場所は悩みのタネの場合がある。特に交通機関を併用するジテツウの場合は、起点となる駅周辺に安全な駐輪場所を確保する必要がある。
しかし昨今、多くの自治体が長年の放置自転車対策として、駅周辺に駐輪場を整備しており、ここ十数年の間で状況は大きく改善された。大都市圏の主だった駅には、安心して駐輪できる施設が増えている。起点となる途中の駅にもきっと見つかるだろう。
駅前の限られたスペースを最大に生かすため、最近では地下の駐輪場が増えている。最新式の施設は利用者が地下に降りることなく地上の入出庫ブースに自転車を入れてセットし、ボタンを押すと自動的に入庫される。ほんの十数秒の作業でOKでその後、自転車は地下に建設された収納スペースに格納される。自転車に取り付けられたICタグにより保管状況を管理していて、出庫時は磁気カードを読取機に通すだけで自動的に出庫されてくる優れものだ。地下の収納スペースには人は入らないので盗難やイタズラのリスクがほとんど無く安心して駐輪でき、公営施設のためコストもリーゾナブルである。
ただし、月極め駐輪は満車のこともある。その場合は利用申請をしておいて、待っている期間は日払いで利用すればよいのである。1日利用はどこの駐輪場でも行っているので、利用している期間に安全性や利用状況などをウォッチしておくこともできる。
<職場での駐輪>
職場や学校に駐輪場があれば問題ないが、安全な保管場所が見つからないこともある。その場合は、歩いて数分程度の場所に駐輪場が確保できるか探してみよう。最近のオフィスビルは駐輪場があるところも増えており、誰でも利用できるケースもあるので積極的に調べてみたい。
オフィス内や倉庫内などに置かせてもらえるかを職場と相談することもできるだろう。折りたたみ自転車や小型のミニベロなら比較的簡単に持ち運べるので、職場に承諾をとった上で、倉庫に入れさせてもらったり、フロアの邪魔にならない場所に置かせてもらうこともできるかもしれない。ちなみに東京都の場合は条例で自転車通勤を認めている事業者に、従業員が駐輪場を確保しているかの確認を義務付けており、その動きは全国にも広まっていくだろう。職場での駐輪は、難しい場合もあるが、あきらめずに探しつづけ、交渉していれば必ず見つかるはずだ。
<サイクルステーションを活用する>
昨今のジテツウの急増により、自転車を預けておくだけでなく、シャワーやロッカーなどもある施設が次々にできている。「バイクステーション」「チャリステーション」「ジテツウハウス」「エコ通ステーション」などと言った名称で、東京をはじめ大都市にここ数年どんどんと増えており、ジョギングを楽しむ方々のためのランナーズステーションに併設されているところも多い。都心にある場合がほとんどで、会社近くにあればジテツウには非常に便利な施設なので是非探して見よう。
空気入れなどの工具の貸し出しのほか、ショップを併設し、最新モデルのバイクが展示してあったり試乗会や休日のサイクリングなどのイベントを行っている施設もある。中にはトレーニング施設があってインストラクターによる指導が受けられたり、セミナーを開催するだとか、独身者には嬉しいサービスであるシャツやスーツのクリーニングまで行ってくれるところもある。ジテツウのみならず自転車に関する様々な情報もあり、仲間ができるかもしれない。上手く活用すればジテツウライフの充実につながるだろう。
サイクルステーションはシャワー設備を完備しているところも多く、リフレッシュして仕事に向かうにはぴったりだ
<コストと営業時間を要チェック>
但し、施設が良いところほど利用コストは高くなる。場所にもよるが1ヶ月の料金は数千円から万単位になるところもある。利用するには会員登録が必要な場合もあり、月極めや3ヶ月などの期間を決めた利用制度、1日利用可能や回数券があるところなど施設や場所により様々だが、都心の地代や利便性を考えれば、多少のコスト高は許容範囲であろう。また営業時間もジテツウ利用者の多い朝と夕方から夜にかけてのところが多い。残念ながら深夜営業や24時間オープンしている施設は未だ多くはなく、営業時間を気にしながらの残業になる場合もあるだろう。
ジテツウは素晴らしい。距離や時間で諦める必要は無いのである。交通機関を併用することにより、様々な楽しみが新たに生まれる。自宅と途中駅までのジテツウと、途中駅から会社までのジテツウを使い分けることも可能だ。自転車を駐めておく途中駅も自宅と会社の間であれば何処にしても構わないので、体調や天候、季節、仕事の都合などに応じて柔軟に対応することができる。
いろんな楽しみやメリットを享受するためにも、様々な形態のジテツウを自分で創造して行けば良いのだ。
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は7月18日(火)に公開予定です。お楽しみに!)
(写真/本人、編集部)
第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!
3)遠くてもあきらめない、ジテツウは楽しめる!
4)ジテツウ用バイクと必須アイテム
5)安全第一!市街地、幹線道路の走行テクニック
6)ミニマイズ!事故を事前に回避する
7)迅速に!交通事故での対応
8)確実に!盗難対策と自転車保険
9)自転車は社会を、未来を、地球を救う!
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。