記事ARTICLE

2019年04月29日

ファンライドアーカイブス 読むトレーニング「住田道場」④

2007年12月号から約1年にわたって月刊ファンライドに連載された「住田道場」の第4回です。シマノレーシングに所属し、アトランタオリンピックロード日本代表にも選ばれた住田修氏によるこの連載は「モノクロ1ページ」という地味な企画ながら、トレーニングに励むサイクリストの心をがっちりつかんだ大人気連載になりました。10年以上の月日を経た今も、「強くなるために今何をすべきか」は不変のテーマだと気づかされます。
※掲載※月刊ファンライド2008年3月号 構成/浅野真則 写真/高田賢治 題字/住田修      

今月の教訓
一、サプリメントに頼りすぎるな。栄養の基本は食事できちんと摂れ
一、高性能な身体は時間をかけて作るしかない
一、欧米人との体格差を補うために、ウエイトトレーニングをしろ

其の四、選手は体が基本だ

まずはサプリメントに頼るな 食事で栄養を摂れ!

自転車乗りは身体が資本や。ワカモノよ、日ごろからきちんと体に気ぃ遣ってるか?きっと、「そんなん言われなくてもわかってる」と、心の中で反発したヤツも多いんやろな。

でも、近ごろのワカモノを見て思うんや。「気ぃ遣うポイントを間違ってるんとちゃうんか」と。実業団でも上のレベルでエエ勝負しとるヤツは、さすがにジャンクフードのたぐいは食べてへんとは思うけど、食事は適当にすませて、摂れなかった栄養をわざわざサプリメントに頼り切ってる人も少なくないんとちゃうか?何で食事で摂れる栄養をわざわざサプリメントで摂るの?おかしないか?

ちなみにぼくは、現役時代サプリメントを摂ったことないで。サプリメントは、あくまで栄養「補助」食品。その効果を十分に生かそうと思ったら、もっと食事に気を遣って、栄養素はすべて食事で摂るぐらいの気持ちでいかなアカン。サプリメントだけに頼っとるようなヤツは、整備不良の軽自動車に一生懸命ハイオクガソリン入れてるようなもんやで。

日々のトレーニングのエネルギーは日々の食事に直結している。それはトレーニングによって日々進化していく身体の材料になるんや。「食事と思うな、燃料と思え」これは某コーチの言葉。あながち間違いではないと思う。まぁ、食生活は子どものころからの積み重ねが大事やさかい、子どもにはエエもん食わせてやってや。そこで、はじめてサプリメントの性能が生きてくるわな。

高性能な身体は金では買えない

デュラエースを買って使ってるワカモノよ!デュラエースはハイエンド機材やから、きっちり整備していればきっちり動いてくれる。ただ間違ったらアカンのは、自転車は自分でこがんと進まん乗り物や、ということ。なんぼ効率を追求し、軽量化を進めて機材を使っても、ロードレースちゅうのは突き詰めると「ペダルをナンボ踏めるか」にたどり着くわな。

高性能機材は金で買えるけど、高性能な身体は身体では買えん。時間をかけて作るしかないんや。ある意味これはみんなにチャンスがあるっちゅーことや。ワカモノには、デュラエースは早いかもね。その分、身体に投資するのもアリちゃうか?まずは身体を鍛え上げて、デュラエースの実力を引き出したってほしい。

あと、マッサージオイルを使ってるヤツ。確かにエエのかもしれんけど、本当にマッサージオイルでマッサージする必要があるほど練習してる?あれにしても決して安いモンやないし、練習前に全身に塗って、練習後にオイルを落としてからのケアオイルを塗って・・・・・なんてやってたら時間がかかってしゃあないで。ただでさえ短い練習時間が余計に短くなってしまうんやったら本末転倒や。そんなことしとえるヒマがあったら、5kmでも10kmでもエエから余分に走ってこい!それで本当に疲労困憊になったとき、はじめてマッサージオイルの効能がわかるんちゃうか。

ウエイトトレーニングはニッポン人を強くする

毎号毎号「自転車に乗れ」を口を酸っぱくして言ってるけど、それは今のワカモノは練習足りへんと思うからや。前号で「3カ月で1万km乗れ」と言ったけど、世界で勝負しようと思うなら、それ以上に乗り込んだ上で、ウエイトトレーニングをせなアカン。

自転車選手のウエイトトレーニングに関しては賛否両論がある。アメリカでは積極的に取り入れられているけど、ヨーロッパではそれほど行われてへん。でも、日本人は、欧米人との体格差を補うためにやったほうがいいと思う。自転車に乗ってるだけでは、体幹部の筋肉は十分鍛えられへん。レース後半でバテたときに、もうひとがんばりするには、経験から言ってウエイトトレーニングは有効や。

勘違いせんといてほしいのは、自転車選手のウエイトトレーニングは、ベンチプレスみたいに重いモノを持ち上げることが目的やないということ。早く動かせる強い筋肉を作るのが目的や。極端な話、フリーウエイトで自分の体重を負荷するんでもエエ。ワカモノよ!もっと身体を強くるすことに気を遣え!練習を毎日続けられる丈夫な身体を作れば、ハードな練習を毎日しっかりこなせて、結果として強くなれるから。

sumida
住田修/すみた・おさむ(写真・プロフィールは連載時のもの)
ロードレース2×10段と称される名人。立命館大学を卒業後シマノに入社。アトランタ五輪日本代表。現役時代、その圧倒的な存在感はロードレース界随一と言われ、実力だけでなく、ハートでも魅了する熱い男。現在は仕事中心ながら、走ることはやめない生涯サイクリスト。すね毛を剃らない選手としても有名だった。

記事の文字サイズを変更する

記事をシェアする