2016年05月18日
リアディレイラー変速調整のちょっとしたコツ【FUNRiDEアンケートより】
毎週木曜日発行のメールマガジン「WEEKLY FUNRiDE」にて【一番苦手なセルフメンテナンスは何?】というアンケートをとったところ、以下のような結果となった。
1位 リアディレイラーの変速調整 (47名)
2位 パンク修理(14名)
3位 バーテープ交換(13名)
4位 フロントディレイラーの変速調整(12名)
5位 チェーン交換(9名)
6位 駆動系の洗浄・注油(7名)
7位 ブレーキ調整(6名)
7位 ホイールの振れ取り(6名)
9位 クリート交換 (3名)
苦手なメンテナンスの第1位はリアディレイラーの変速調整。たしかに難しそうな響きだ。自転車の機構の中でもシフトチェンジはもっともテクニカルかつ原始的な構造といえる。ギアからチェーンを脱線させて変速させる機構はメーカーによってアプローチは異なるものの、同じような仕組みである。今回はリアの変速機能の基本的な部分と、日常で起こりうるちょっとしたトラブルに対応できるような、対策を記事にまとめてみた。※もっともポピュラーなコンポーネント、シマノを用いている。
リアディレイラーの調整って実は単純
ディレイラーはシフトレバーとシフトワイヤーで繋がれていて、そのワイヤーをシフトレバーが巻き取ったり、戻したりすることで可動する単純な機構だ(各メーカー諸氏に怒られそうですが…)。このワイヤーの巻き取り量を微調整することで、ギア、チェーン、ディレイラーの動きが調和するのである。プロメカニックにしっかりと組付けられていることを前提として話を進めよう。新車によく起こるのが馴染みの段階で、ワイヤーが緩くなってしまうような現象が起きるのだ。要因としてはワイヤーが伸びる、アウターケーブルに馴染みが出るなどで、いずれにしても微調整が必要だ。その調整はこのように行なうといい。
SISの調整
【1】シフトレバーをトップギアから1回操作して2段目のギアに変速する。
シフトレバーを押してカチッという手前のテンションをもっとも感じるアタリで止める。かなり絶妙。
【2】シフトレバーの遊び分だけ操作し、クランクを回転させる。
微妙な動きだが、それに意味があるのだ。(※クリックしてみよう!)
【3】その段階で、まったく音鳴りがしないときは、3段目のギアにチェーンが接触し、音鳴りがするまで調整ボルトを緩める(反時計回転方向に回す/青)。あるいはチェーンが3段目のギアに変速してしまう場合は、チェーンが2段目に戻るまで調整ボルトをしめる(時計回転方向に回す/赤)
ベストな状態はシフティングレバーをレバーの遊びぶんだけ操作した段階で、チェーンが3段目のギアに接触し、音鳴りがする状態だ。
出展:シマノ リアディレイラーのご使用方法(マニュアル)
この方法はシマノのコンポーネントに封入されている説明書に書かれていることだが、これ以上もこれ以下もなくベストなセッティングへの最短ルートだろう。
それでも、変速がおかしいな、と思ったときは
【1】リアエンドが曲がっていないか
落車などでダメージを受けやすい部位である。バイクを倒してしまったときも要注意。輪行(空輸など)のあとにも必ずチェックしよう。
【2】チェーンが伸びていないか
鳥類を模したものではない。チェーンの伸び、摩耗を測定するためのツールでチェック。これでチェーンの消耗度がわかる。
【3】スプロケットの歯が減っていないか
歯が減ってくると、トルクをかけたときにチェーンが飛ぶような現象が起きる。
【4】ケーブルが痛んでいないか
アウターケーブルが折れていたり、インナーケーブルの錆、あるいは経年劣化によってライナーが摩耗していたりすると正しいストロークができなくなる。
【1】の場合は、した場合、右側に倒れると高い確率でディレイラーに衝撃が加わる。この際にリアエンド(フレーム側)にもダメージが及ぶ場合が多いのだ。 【2】と【3】は使っていれば必ず訪れる現状。よく乗る人なら3ヶ月。半年、遅くても1年おきにはチェックするようにしよう。
またトラブルとしてよく耳にするのは、レース用ホイールに交換したとき、ディレイラー調整をせずに乗った結果、ホイールにリアディレイラーを巻き込んでしまったという話だ。同じ段数のホイールでもメーカーによってわずかに設計がことなり、交換のつど調整を行なうべきだろう。
極端ではあるが、起こりえない話ではない。さきほどのエンドを曲げてしまった場合は、このような状態になることが間々ある。
スムースに変速できないと、それだけでパフォーマンスは一気に低下してしまう。良いバイクに乗っていても、良いホイールを履いていても重く鈍い動きになってしまうだろう。そんな状態では乗っていてもつまらない。定期的なメンテナンスはバイクの寿命を延ばしてくれるし、なによりも気持ちよく走るために必要な儀式なのである。
(写真/編集部)
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得