2019年08月22日
執念 〜入部正太朗、2019年全日本選手権優勝への軌跡~(前編)
2019年6月30日、富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催された全日本自転車競技選手権ロード・レースで、シマノレーシングの入部正太朗が悲願の初タイトルを獲得した。引退も考えるほど精神的に落ち込んだ時期も経験したが、そこから気持ちを切り替え、トレーニングも見直し、新たな戦いのスタートラインに立った。
CONTENTS
1.愛に勝るパワーはない
2.自信を失い、引退も考えた
3.練習量が1.2倍に
4.集団前方でレースを進める
5.序盤でチームメイト3人を失うも、焦らずレースを進める
6.「阿吽の呼吸」で集団コントロール
7.体の異変も冷静さで切り抜ける
8.心のバトンパスをつなぎ、後半戦へ
愛に勝るパワーはない
「愛と感謝とリスペクト」
今年の全日本選手権を制したシマノレーシングの入部正太朗は、自らその勝利をこう表現した。
「全日本に関しては、愛と感謝とリスペクトしかない。この3つに埋め尽くされますね。大阪に昔からお世話になっている整体師の方がいるんですけど『愛に勝るパワーはない』と教えてもらったことあって、まさにそうだなと思いました、すごい力に変わるんですよね」
「みんなの愛、家族もそうですし、監督がチームのためにやってくれている思い、(メカニックの)大久保さん、(マッサーの)鳴島さん、すべてのスタッフの人が夜遅くまで準備してくれています。応援してくれるファンの方も、今回のような雨の中もそうですし、いつもレース来てくれる人もいます。愛を感じますし、その人たちにも感謝があふれます」
「すべての選手にも、大会を運営してくださるすべての人にもリスペクトです。新城さん、別府さんはじめ、すべての選手に真剣にぶつかりあえる戦いにリスペクトという思いがあります。愛と感謝とリスペクトしかないです。そして、それが力になりました」
チームメイト、スタッフと全日本タイトル獲得の喜びを分かち合う入部
そう語る入部が、自身最大の勝利をつかむまでの道のりは決して簡単なものではなかった。
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。