2018年07月20日
【富士チャレンジ200】攻略法 阿部良之 「レース当日までのトレーニング方法」
富士チャレンジ200 攻略法 第3回目は阿部良之さんに、アドバイスをいただきました。20年以上にも及ぶ選手生活を経て、2017年に大阪阿倍野区にサイクルショップをオープン。ツール・ド・ポーランド区間優勝、日本人唯一のジャパンカップ制覇者(97年)、全日本選手権3度、全日本TT選手権優勝(1999年、2000年はプロアマオープン)と国内レースでも多くのタイトルを持ちます。
今回は富士チャレ100kmの部のトレーニング方法を中心として、レースイベント”あるある”なケースをもとに、阿部さんに解決法を教えていただきました。豊富な経験をもつ阿部さんだからこその回答。
もっと詳しく聞きたい! という人は、阿部さん主催のセミナーなども実施しておりますので、アベノバをお訪ねくださいね。
阿部良之さん
1969年生まれ大阪府出身
92年から2009年までシマノに在籍。 96、 97年と2001年にはヨーロッパプロチームでも走った。 日本選手権個人ロードおよび個人タイムトライアル、 アジア選手権個人ロード、 個人タイムトライアル優勝経験者。 2000年シドニーオリンピック代表。 マトリックスチーム在籍後ビチコルサ ・ アヴェルにてチーム ・ アヴェルを立上げ運営。 2017年新たにチームabenovaを立ち上げる。主な成績
1994年 愛知(わかしゃち)国体自転車ロードレース優勝
1994年 全日本プロ選手権自転車ロードレース優勝
1995年 アジア選手権自転車ロードレース優勝
1996年 ツール・ド・ポーランド 第6ステージ優勝
1997年 全日本プロ選手権自転車ロードレース優勝
1997年 ジャパンカップサイクルロードレース優勝
1999年 全日本選手権自転車個人タイムトライアル優勝
2000年 全日本選手権自転車ロードレースおよび個人タイムトライアル優勝
シドニーオリンピック代表
2003年 ツアー・オブ・チャイナ 個人総合優勝
(スポーツサイクル プロショップ アベノバ ホームページより抜粋)チーム遍歴
1992ー1995 シマノレーシング(日本)
1996 パナリア・ヴィナヴィル(イタリア)
1997 マペイ-GB (イタリア)
2001 コルパック アストロ(イタリア)
2003-2004 シマノレーシング(日本)
2005 シマノ メモリーコープ(オランダ)
2006-2008 スキル シマノ(オランダ)
2009 シマノレーシング(日本)
2010-2011 マトリックスパワータグ(日本)
スポーツサイクル プロショップ アベノバ
〒545-0014 大阪市阿倍野区西田辺町2-6-21
https://abenova.com/about_us/
⭐️ケース1 富士チャレではこれまで2時間40分がベスト。終盤1/3で集団から遅れてしまう。
サラリーマン。ときどき残業はあるものの仕事時間は不規則ではない。
平日は帰宅後に固定ローラーで30分〜1時間ほどのトレーニングを週2回くらい。週末は土日で合わせて150km(50km+100km)くらい乗っている。
年齢は30歳台。
A:トレーニング時間に合わせてインターバルトレーニングメニューを組み込んでみる
レース後半に弱いのは乳酸の処理能力が低い方が多いです。トレーニングにさける時間が少ない方は短時間・高強度のインターバルトレーニングをメニューに入れてみてください。平日にローラートレーニングされているなら、その中に30秒から1分程度の高強度タイムと回復走1~2分をセットにしたインターバルを5~10本程度入れます。
トレーニング時間が取れる方は、暑い時期ですが目標の2時間30分の20~30%増し(3時間前後)の持久的トレーニングや、週末にじっくり時間がとれるならファートレックをおススメします。具体的には高強度と、休みきらない回復走を組み合わせて15分から20分ほど運動強度を高めたインターバルトレーニングのこと。上り坂1本の中に組み込むと実行しやすいですよ。
⭐️ケース2:100km(あるいは200km)を走りきりたい
前回、初めて富士チャレに参加。100kmは4時間かかってしまった。とにかく序盤からきつい。3周くらいで足がいっぱいになり、息も上がってしまう。2ヶ月でどうにかなりますか。
35歳。週末に100kmくらい乗れたら満足(主にグルメライド:目的地に美味いものがあってそれを目指してロングライド)。
前回は仲間に誘われて富士チャレに参加。“もっと走れる”と思ったけどぜんぜんダメ。これが悔しくて向上心がある。
A.ライドをトレーニングと切り替えて考える
まずは目標タイムを走りきれる体力をつけましょう。2ヶ月あれば運動不足はそこそこ改善されます。グルメライドは一旦お預けにして、富士チャレ後の楽しみに取っておきましょう。まずは週末のライドの中で、できるだけ止まらずに走る1時間走を2~3回ほど行う“目標”をたてましょう。運動強度としてはメディオ(medio:最大心拍数の82%を維持して走るトレーニング)を30分以上維持して! というのは無理があります。これは熟練したサイクリストの練習メニューですので、あせらずに、まずは1時間止まらずに維持できるくらいのスピードで(すこしくらいのスピードの上下はかまいません)。加えて、上り坂も嫌がらずに走り、運動強度を高めた5分間走なども組み込めると良いですね。
そして回数を重ねるごとに少しずつ強度を上げていきましょう。このトレーニングで8月を乗り切ってみてはいかがでしょうか。
⭐️ケース3:チームで、ベストタイムを更新したい。
富士チャレは4人チームで参加。200kmの部で入賞を目指したい。
なんといってもフィニッシュタイム5時間を切るのが目標。しかし全員の力がバラバラなのが心配。
グループライドは頻繁にしたほうがいいのでしょうか?
年齢は30〜40歳台。それぞれ週末はロングライドをしている。そのうち2人は平日もトレーニングをして、週末はかなり乗り込む。
ほか2人は好きなときにライドするていど(週末のみ・気ままに)。全員仕事で多忙な日々を送る。
A.週末ライドはチームで練習メニューを工夫して走る
まずは週末のライドは、富士チャレまでは一致団結してチームトレーニングを行いましょう。時間も決めしっかりと目標タイムを走るようにします。
1周の周回タイムを想定して自分たちが何周回で交替とするのかを“目標”にし、その時間ごとに先頭交代しながらロングライドをします。30分交代なら30分タイムトライアルの後は交代して後ろに回って持久的トレーニングに切り替える。4人1チームなら2時間走になります。スピードをつけるのが目的なら、メニューの時間を半分にして1時間走の中で先頭交代していきます。時間を区切ってトレーニングするのでダラダラとしないでぱっと切り上げることができます。このトレーニングなら200kmも走らなくても100km程度のライドで効率的にトレーニングできます。力がバラバラの時は、強い選手が先頭を引くときは長めにするなど割合を調整してチャレンジしましょう!
TIPS
・エンデューロあるある
エンデューロレースは色んなタイプの方々が入り乱れて走るので、スピードの変化や思わぬ斜行等に気をつけて走りましょう。皆さんご自身の事で精一杯で周りを見れてませんので、特に前から落ちてくるスローペースの方には大声で「どかす」のではなく、優しい気持ちで抜いていってあげてください。・残り2ヶ月でなにができるか? (練習プランの組み立て方など)
2ヶ月という時間は長そうですが短い練習期間です。何をするのも中途半端な期間かもしれません。
実力的にワンステップ上げようとすると短すぎて疲れが抜けなかったりします。
今あるものを出し切る方向でトレーニングを積むほうが有効です。かといって同じことばかりやっていると飽きてしまう期間ですので、少々の変化も必要になります。
2~3週間を区切りに3パターンくらいの変化で本番に望めるように区切っていきましょう。
区切りを1週間にするのではなく、4~5日で組み立てる方法もあります。しっかり休日も組み込みながらトレーニングすることで2ヶ月という短期間でも効率良く自分の実力が出し切れる身体作りが行えます。・このところの暑さ対策
暑さ対策は大会当日までしっかり行いましょう。8月は暑さにも慣れてくるので少々楽ですが、水分補給とトレーニング前日のアルコールの取りすぎに注意しましょう。
トレーニング後はアイシングに近い状態でしっかり身体を冷やし、ビールもそこそこに大会当日の打ち合わせをしましょう。
チーム員でのシミュレーションは大会当日に非常に有利になるトレーニングの1つです。大会数日前から大会当日まですべてを打ち合わせして、必要なものを徐々に用意していきましょう。
大会直前だと手に入らないものがありますので前もっていつもお世話になっているショップで相談して手配しましょう。
またメカニック的にも準備は必要です。2週間目にはパーツの組み込みを終了させ、前週には試用も済ませてバッチリの状態にします。洗車や消耗品の交換は1週間前をめどに完了させましょう。
当日使用の用品は出来る限り一度使ってみてから、本番に臨むことをおススメします。
グッドラックです!
関連URL:富士チャレンジ200 : http://www.fujichallenge.jp/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得