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2019年05月29日

富士チャレンジ200へのイメージトレーニング④「逃げへのチャレンジ」初山翔

今年から「敢闘賞」「ポイント賞」を新設し、表彰種目として「チーム表彰」を設けた「富士チャレンジ200」(9月7日開催)では「積極性」をテーマにレースを企画しています。そこで果敢なレースに挑む「心構え」のイメージトレーニングとして、一流選手のマインドに学ぶこの企画。第4回は3年ぶりにグランツールのひとつ、ジロ・デ・イタリアに出場しているNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネにて、出場メンバーに選出された初山翔選手にフューチャー。日本のサイクルロードレースファンの間でも話題となっているが、2ステージ合計259kmを、先頭をきって自ら風を受けて逃げ続けた。その覚悟と挑戦する意味とは。

たとえ無謀でも、向かい風が吹く真っ平らなステージでも、鼻息荒いスプリンターチームを振り切ってステージ優勝する可能性なんて限りなくゼロに近いかもしれないけど、チームの指示でファーストアタックを仕掛けて逃げないといけない日もある。

ジロ・デ・イタリアに初めて出場している初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)は、第12ステージを終えた時点で、すでに2回も逃げている。220kmという長い第3ステージで単独逃げを試みたため、一気にイタリア国内の知名度や人気度を上げたが、そんな話題などどこ吹く風で、本人は淡々と仕事をこなしている。

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「注目されるのはありがたいこと。なのですが、最近は自分の実力以上に注目されていて、少し怖い気持ちもあります」。
初挑戦のジロの規模やレベルの高さへの驚きを隠さずに、初山は少し恐縮しながらそう言った。

日本国内にいると、おそらくイタリアにおける初山の人気ぶりは感じることはできないと思う。第3ステージで勇敢にも単独で逃げ続けた初山は、イタリア人の心を鷲掴みにした。本人は「3週間続くレースのことを考えて、出し切らないようにペースをコントロールしながら逃げていた」とさらりと言うが、長時間テレビを独占したため、必然的に「ショー・アツヤマ(イタリア語でHは発音しない)」の名前はイタリアに知れ渡った。
翌日のガゼッタ・デッロ・スポルト紙は1ページ特集を組んで初山のこれまでのキャリアと言葉を綴った。イタリア語が堪能なことも人気に拍車をかけており、第8ステージ終了後には視聴率の高いジロ特別番組に出演。堂々と、流暢なイタリア語で受け答えしていた。

「チームの中で自分にできるのは、平坦ステージで逃げに乗ること」。
一貫して決して大きなことを言わない初山はそう自覚している。そして謙虚な態度を崩さずに、チームの指示通りに逃げに乗る。第3ステージに続いて第10ステージでも逃げたため、すでに合計259kmを逃げていることになる。

「結果を出したわけじゃないのにここまで注目されるのはどうかと思う」と言うが、プロ選手としていかなる方法でも(ネガティブな方法を除く)映像やメディアに出ることは正義である。
そもそもグランツールで逃げに乗る選手は年間せいぜい120〜140名ほどしかいない。逃げの中で重ねた距離がまた彼の自信となって、次なるステップに進む糧となるはず。
「買わないと当たらない宝くじ」に例えられる逃げ。
つまり逃げに乗らないと逃げ切るチャンスは出てこない。初山が出場するジロは厳しい山岳が連続する後半戦へと入っていく。

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◆富士チャレンジ200ホームページ
http://www.fujichallenge.jp/

写真と文:辻啓

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