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2021年11月19日

サイクリング・サイエンス コラム第八回/「キツイがこうかはばつぐんだ」インターバルトレーニングの組み立て方

ヒルクライムの名所は軒並み冬季通行止めとなり、平地の民となったローディーの皆様いかがお過ごしでしょうか。通年平地専門のランです。

前回のおさらい
前回はなぜインターバルトレーニングがローディーにオススメなのか、その理由をご説明しました。
レースで勝つにはVO2Maxを向上させることが必要。インターバルトレーニングは時間対効果が高く、忙しいローディーにオススメの練習法です。
前回の記事はこちら https://funride.jp/column/cycling-science7/

今回は具体的にどのようにインターバルトレーニングを組み立てるかをお話します。後半にはトレーニングメニュー例もご紹介していきます。

インターバルトレーニングの組み立て方

ステップ1 <基準>:MAP測定して強度を決定

インターバルの効果を決める上で、最も大事な要素は強度です。インターバルトレーニングはいわば軽い臨死体験。三途の川に片足を浸すような、ギリギリ耐えられる強度がインターバルには最適です。適切な負荷を決定するために、まずは自分の基準値を測定します。

インターバルのトレーニングはMAP(Maximal Aerobic Power:MAP)を基準としてトレーニング強度を決めていきます。MAPは有酸素運動での最大パワーのことで、ロードバイクにおける全力疾走と同義です。

MAPの測定方法として一般的なものはrampテストです。さて、zwiftユーザーであれば、ピンと来たでしょう。rampテストはzwiftで簡易FTP測定法として導入され、有名になった計側法です。このrampテストはもともとMAPを測定するために作られたものです。zwiftではこのMAPからFTPの推定値を算出しているのであって、あくまで測定しているのはMAPです(詳しくは FTPの回[第3回]をご参照ください)。
rampテストは、100Wから1分ごとに10-20Wずつパワーを増やし、オールアウトする直前の1分間最大パワーをMAPとします。レストあけのフレッシュな脚で計測をしましょう。

©︎Zwift

ステップ2 <持続時間>:1分以上維持を目標に

続いて考えるのは時間です。インターバルトレーニングは先ほど求めたMAPの強度で、どれぐらいの時間を維持するか、そしてそれを何セット繰り返すかで効果が変わります

現在主流の方法は、インターバルの持続時間を15秒から3分の範囲で設定しています。ロードバイクなどの持久競技においては、1分以上のLong interval のほうがVO2Maxに対して効果が高いと言われています。メニューを設定する際は1分維持-レストのメニューを検討してみましょう。

しかし、持続時間が長くなれば、当然体感のしんどさも増します。先ほども述べましたがインターバルは何よりも強度が重要です。初心者の方は、まず短い時間から挑戦し、徐々に時間を伸ばしてみましょう。

ステップ3 <セット数>:回数は1セットあたり5-10程度を目標に

繰り返すセット数は、インターバル持続時間にも左右されますが、5-10ラップを目安に設定しましょう。

インターバルのトレーニング時間は持続時間×ラップ数ですので、数を増やせば練習時間が伸びて効果が高くなりそうですが、実際は回数を増やしすぎるとトレーニング効果が落ちてしまうことがわかっています。この原因は諸説ありますが、インターバルのラップ数が増えすぎると、練習中に身体がその刺激に慣れてしまい、細胞レベルでのシグナル発現が減退してしまうことが一因と考えられています。1セットあたりの回数は適度にとどめ、慣れてきた場合は強度か時間を増やして練習強度を調整しましょう。

メニュー組み立て時のポイント

ポイント1:休憩時間にも強くなっている

インターバルトレーニングの特徴として、休憩が挟まれることがあります。この休憩時間は、決してさぼりではありません。むしろ休憩を挟むことでトレーニング効果が高くなるのです。踏み込んで説明すると、一度休憩を挟む練習のほうがエネルギー代謝に関わるタンパクであるATPKの濃度が上がることがわかっています。これは、敢えて休憩を挟むことで身体を刺激に慣れさせず、常にフレッシュな刺激を与え続けられるからと考えられています。インターバルトレーニングの休憩は、単なる休憩ではなくて次の刺激への準備なのです。

一方で、休憩時間を長くとりすぎて心拍数が大きく下がるようでは、練習効果が落ちてしまいます。休憩時間に関する研究はまだ調査の余地がありますが、心拍数が20も下がるような休憩は少々長すぎると考えます。休憩時間を短くするか、ペダルを漕ぎ続けるアクティブレストにしてみましょう。

ポイント2:頻度は週1-3まで

TSSの回[第4回]でも触れましたが、インターバルトレーニングは身体への負荷が非常に大きなトレーニングです。これは、EPOCと呼ばれる、トレーニング後の自己修復期間に入るため、普段よりも疲れやすい状態になるからです。特に初めてインターバルを試す方は、まずは週1から始め、多くても3回までに留めましょう。

「インターバルの疲れは練習後にやってくる(第4回より)」

インターバルトレーニングメニューの一例

では、これらを踏まえた上でトレーニングのインターバルトレーニングの一例を紹介します。

初心者向け:30-30 IT 7×2set

まずインターバルトレーニング初心者にオススメ。30秒ダッシュ(MAP×110%パワー)と30秒アクティブレストを7×2セットの合計14回繰り返します。セット間は5-10分ほどアクティブレストを挾みます。30秒なので苦しむのは短時間にみえますが、セット後半、4本目あたりから休憩時間が体感3秒くらいになってきます。お手軽地獄です。

©︎Zwift

中級者向け:60-30 IT 6-8set

慣れてきたらダッシュ時間を延ばします。MAPのパワーで1分間維持した後に30秒のアクティブレスト。4本目あたりから何も考えられなくなります。セット中の1分間は永遠に、レストの30秒は刹那に変わります。時間の流れが歪んでくる、これぞサイクリストの相対性理論

©︎Zwift

コーチを頼むのも選択肢

ここまでメニューの解説を行いましたが、ここからパワーや時間の微調整も必要です。インターバルトレーニングはメニュー設定が難しい練習のひとつですので、コーチングを頼んでみるのも一つの選択肢だと思います。特に昨今はオンラインで完結するサービスも沢山登場しています。
コーチを委託するメリットは、メニューを考えてくれることと、それをこなすために鼓舞してくれることです。メニューを考えたり、トレーニングを継続するのに不安がある方はコーチを依頼するのも一つの手です。

第2回から8回までに渡りトレーニングの基本についてお話してきました。皆様のトレーニング計画の一助になれば幸いです。
次回は誤解され続けている乳酸にスポットを当ててお話ししていきます。

参考文献

Rachelle N Sultana et al. Sports Med. 2019 Nov
The Effect of Low-Volume High-Intensity Interval Training on Body Composition and Cardiorespiratory Fitness: A Systematic Review and Meta-Analysis

Florian Azad Engel et al. Front Physiol. 2018 Jul 27
High-Intensity Interval Training Performed by Young Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysi

Zoran Milanović et al. Sports Med. 2015 Oct;45
Effectiveness of High-Intensity Interval Training (HIT) and Continuous Endurance Training for VO2max Improvements: A Systematic Review and Meta-Analysis of Controlled Trials

J Physiol. 2017 May Martin J MacInnis et al.
Physiological adaptations to interval training and the role of exercise intensity

Physiological Correlations With Short, Medium, and Long Cycling Time-Trial Performance

ance runners/American Council on Exercise/パワートレーニング・バイブル 第二版

これまでの記事はこちら
第1回 サイクリストと情報リテラシー」
第2回 FTPを信じていいのか?
第3回 FTPとどう付き合っていくか
第4回 TSS700の呪い
第5回 HRV 心拍数でわかるコンディション
第6回 ゆるポタで強くなる? 注目のPolarized Trainingとは
第7回 時間がなくても強くなれるインターバルトレーニングの極


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