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2018年01月30日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 5-9)センシティブ!ディレーラー調整のコツ

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第5章:ゴキゲン! 「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!

5-9)センシティブ!ディレーラー調整のコツ

 

ディレーラーやチェーンのトラブルはパンクに並んで多い。異音などに悩まされるサイクリストも少なくない。下手にいじってますますおかしくなってしまった経験がある人も多いだろう。トラブルの発生要因は変速機系統の調整不良だ。異音や違和感から開放されるために、ちょっとしたノウハウを身につけたい。

 

<スーパーローには要注意>

スプロケットギアのオーバーシフトをスーパーロー、スーパートップというが、いずれもすぐ足を止めるのが鉄則である。そのまま踏み込むとスーパーローの場合は一番大きいギアとスポークの間に、スーパートップは最小ギアとフレームのエンドとの間にそれぞれチェーンが噛み込んでしまい、直すのが面倒になる。スーパーローの際、足をすぐ止め、噛み込みがなければ、ゆっくり逆回転させつつ、ほんの少しリアディレーラーをトップ側に操作すれば元に戻る。ただし決してロー側に操作してはならない。ディレーラーのガイドプレートがスポークにひっかかって回転すると、それが巻き上げられてホイールもディレーラーもフレームも破損して使えなくなってしまうリスクがある。噛み込んでしまったらすぐに下車して、ドライバーなどでチェーンを引っ掛け上部後方に引っ張りあげる。ダメなら軍手をはめて手で直接引き上げる。チェーンがスポークを傷つけたりホイールのバランスを崩してしまうリスクがあるので、慎重に行いたい。

スーパートップの場合も同様に引っ張り上げるが、ダメなら車輪をはずせば解決する。この場合もディレイラーハンガーやフレームを傷つけたり歪めたりするリスクがあるので、慎重に作業しよう。

縄倉洗足池自転車撮影 005
スーパートップになってしまった状態。無理に直そうとすると、フレームやホイールを傷つけてしまう恐れがある。慎重に作業しよう

 

<ワイヤーの調整がまず大切>

自転車の変速は、シフトワイヤーを引っ張ったり緩めたりすることでディレーラーが稼働し、チェーンを強制的に他のギアへ動かしてシフトチェンジする。ワイヤーが引っ張られるとチェーンは大きいギアのほうへ引き上げられて、ペダリングは軽くなっていき、張りが緩まるとディレーラー内のバネの力で小さいギアに落ちていき、ギア比が大きくなって行くというのが基本的な仕組みである。しかし、長く使えば使うほど細い金属線が集まってできたワイヤーに力がかかり続け、僅かずつだが伸びていく。

新車の場合や、ワイヤーを新品に交換したときなど、しばらく乗っているとワイヤーの初期伸びが出て、変速の調子が悪くなりがちである。シフトチェンジしようとしてもうまく変速しない場合や、走行中にディレーラー部分から異音がするなどのトラブルの場合、ワイヤーの伸びが要因であることが多い。

ワイヤーが伸びるといっても非常に微妙な伸びだが、快適な変速でストレスのないライドを楽しむために、この微妙な伸びが異音や違和感の元凶になる。昔に比べてワイヤーの性能向上により、伸びは少なくなっているが、それでも微妙な伸びは完全には無くならない。

伸びによって、異音だけでなくシフトチェンジ時に滑らかな変速ができなくなったり、放置しているとそのうちに走行中に勝手にギアが切り替わるなど、トラブルの要因になる。これはメンテナンススタンドに乗せた状態では確認しにくい。実際走ってみて駆動系や変速機系統に負荷をかけて、ペダルを踏んだときの脚の感覚や、変速の音やスムーズ感で異常を感知したい。少しでも違和感があれば早めの対策を行おう。

 

<ワイヤーテンションアジャスターボルト:その1>

ワイヤーの伸びを調整するためにあるのが、ワイヤーテンションアジャスターボルトという長い名前の調整ボルトである。ワイヤーがリアディレーラーに最初にコンタクトする部分にあって、指で摘まんで回せるボルトで、調整するのに工具は必要ない。

ワイヤーの伸びを吸収するには、まず最初にリアギアを一番小さいトップに落とす。つまりワイヤーの張りが一番なくなる緩んだ状態にするのである。そしてボルトを左に回すと、ワイヤーが張られていく。一気に回さずに1/4~1/2回転ずつ徐々に回し、ワイヤーをピンと張り、変速の具合を確認していく。

トップギアでワイヤーがしっかり張られている状態にすれば、他のギアで緩むことはない。この微妙な張り具合でシフティングがビシッっときまる位置を、ボルトを回して少しずつ調整していくのである。逆にギヤがトップに落ちにくい場合は、ボルトを右に回してワイヤー緩めてやれば良い。

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変速がいまいちと感じたらまずはアジャスターボルトで調整してみる

 

<ワイヤーテンションアジャスターボルト:その2とその3>

このボルトはリアディレーラーには装備されているが、フロントディレーラー本体には無い。リアもフロントも対応できる調整ボルトは、ダウンチューブ上部のアウターケーブルを受けるダボの部分についているものがある。もしくは、デュアルコントロールブレーキレバーの横から内側にシフトケーブルが出ているタイプなど、露出しているケーブルの途中に、ケーブルインラインアジャスターという調整ボルトが付いているものもある。

どちらもワイヤーテンションアジャスターボルトの一種だが、使い方は同じで左へ回すとワイヤーは張り、右は緩む。もちろん指で摘まんで手で調整できる。フロントディレーラーのシフトワイヤーの伸びの調整はこのどちらかのボルトがあれば対応できるが、自転車によってはどちらも無い場合もある。

 

<ボルトで調整しきれなければワイヤーを引っ張りなおす>

フロントディレーラーのワイヤー調整ボルトが無い場合や、リアでもワイヤーの伸びが大きくボルトでは調整しきれない場合は、ワイヤーの長さを固定ボルトで調整する必要がある。まずは各ワイヤーテンションアジャスターボルトを右に回して一番緩んだ状態にしておく。ディレーラーにあるワイヤー固定ボルトを緩め、リアディレーラーはトップギアで、フロントディレーラーはインナーギアのポジションでディレーラーを手で押さえて動かないように固定し、プライヤーなどでワイヤーを引っ張りながら、テンションが落ちないようにしてボルトを仮止めする。

仮止めの状態でシフターを操作しスムーズに変速するかを確認する。シフターを一番緩めたトップギアのポジションで、ギリギリで一番小さいギアに落ちるようにしておくのがポイントだ。上手く作動するポジションでワイヤー固定ボルトをしっかり締めこむ。微調整は各ワイヤーテンションアジャスターボルトで行えば良い。

 

<ストローク調整ボルトでチェーン落ち防止>

ディレーラーの稼動範囲の調整は大切である。とくにスーパーローやスーパートップになった際には、ワイヤーの調整の前にまずやっておくべき対処なのである。リアもフロントもディレーラー本体にある2本のストローク調整ボルトを回して、スーパーロー、スーパートップに陥らないようにディレーラーの動く範囲を制限する。

2本のストローク調整ボルトには、それぞれLとHのマークがあって、リアの場合はLは一番大きいギアのポジションでディレーラーの動きを止めるボルトであり、Hは一番小さいギアいからそれ以上落ちなようにするボルトで、ストッパーの役割を担っている。フロントの場合はLはインナー、Hはアウターのポジションで稼動範囲を固定することとなる。

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ストローク調整ボルトでディレーラーの稼動範囲を調整しておくと、スーパーローやスーパートップを防ぐことができる

 

<リアディレーラーの稼動範囲調整>

リアディレーラーのストローク調整ボルトは後方から見ると、ワイヤーテンションアジャスターボルトの上部に、縦でホイール側に傾いて2つ並んでいるケースが多い。上にあるボルトはトップ側の調整用でトップアジャストボルトという。それを時計回りに回せば右方向、反時計回りで左方向へケージが動く。その際まずはチェーンをアウター×トップにいれておく。そして少し時計回りにボルトを回してトップギアに落ちにくくしておく。

クランクを回しながら変速状況を確認しつつ、少しずつ反時計回りにボルトを回して、ギリギリトップギアに落ちる場所で固定する。その際、余裕でトップギアに入るようにセットすると、ワイヤーが伸びた際にスーパートップに陥るリスクが高まるので注意しながらセットする。ガイドプーリーがトッブギヤのほぼ真下にくるように調整すれば良い。

ローギアの調整ボルトは、2つ並んだボルトの下側になる。まずチェーンをインナー×ローにセットする。そして少し反時計回りにボルトを回してローギアに入りにくくしておく。クランクを回して確認をしながら、少しずつ時計回りにボルトを回して、シフターを強く押し込んでやっとローギアに入る場所で固定する。簡単にローギアに入る状態だとスーパーローに陥りやすくなるのでここはシビアに調整したい。スプロケット間のギア変速で異音が出たりギアがピシッと決まらない場合は、ワイヤーテンションアジャスターボルトで微調整を行う。

 

<フロントディレーラーの稼動範囲調整>

フロントのチェーン外れは誰もが経験したことのあるトラブルだろう。その最大の予防策は、フロントディレーラーの稼動範囲をきっちり調整することである。ストローク調整ボルトはフロントディレーラーの上部に横に2つ並んでいる。外側のボルトがアウター側へのストッパーであり、内側のボルトがインナー側へのストッパーとなる。外側のボルトを時計回りに回すとアウターからチェーンは外れにくくなる。

フロントディレーラーのチェーンガイドプレートの中心位置がアウターギアの真上かやや内側に来るように調整して、インナーxトップの状態からアウターへのシフトアップがギリギリできる状態で固定すれば良い。締め過ぎるとインナーからアウターにシフトアップしなくなるので何度も操作を確認しながら行う。内側のボルトを反時計回りに回すとインナーからチェーンは内側に落ちにくくなる。

チェーンガイドプレートの中心位置がインナーギアのやや内側に来るように調整して、アウターxローの状態からインナーへのシフトがやっと落ちる状態で固定するとチェーン落ちは防げる。

 

<フロントディレーラーの取り付け調整>

リアディレーラーはフレームのエンドに取り付け位置が決められているが、フロントディレーラーはアウターギアの大きさにより取り付け位置が変動するため、シートチューブに取り付け場所と角度を自分で決めて装着しなければならない。

変速のたびにチェーンがガイドプレートに微妙に接触して異音を出することがあり、ストローク調整ボルトで場所決めをしても完全に違和感が取れないことがある。その要因が取り付け位置や角度の不適切である。つまりチェーンガイドプレートの向きと高さがポイントだ。向きはギアにきっちりと平行であれば問題ない。高さはアウターギアとガイドプレートのすき間が1-2mm以内となるようにする。変速の切れ味を左右する重要ポイントだ。スッキリと変速しない場合は取り付け位置をチェックしてみよう。モデルによってはフロントディレーラー本体に、その高さを調整する機能が付いているものもある。

 

<チェーンが外れたら>

チェーンがフロントギアの外側にはずれた場合、まずは乗車したまま足をゆっくり回しつつフロントディレーラーをインナー側に慎重にそぉーっと操作する。コツをつかめばそれで元に戻るのだ。上手く行かなければ下車してチェーンをフロントディレーラーの前の部分、つまりアウターギアの上の部分から掛けてゆっくりペダルを順回転させる。インナーギアの内側に落ちた場合は下車してチェーンをインナーギアの下側から持ち上げるようにして掛けながらペダルをゆっくり逆回転させれば良い。このほうが簡単なのでアウター側に外れた際もフロントディレーラーをインナー側に操作してからインナーギアにチェーンをかけたほうがラクである。もちろん、その後はストローク調整ボルトでしっかりセッティングしなおそう。

駒沢サイクリングコース 029
ディレイラーの調整不良は思わぬチェーントラブルの要因になる。きっちり調整しておきたい

 

<エンドが曲がると大変>

何度リアディレーラーの調整をしても、どうしても変速がうまく決まらず、異音や違和感が消えないことがある。その要因として、転倒したり輪行中にぶつけたり、何らかの衝撃が加わったりしてディレイラーハンガーやフレームのリアエンドが歪んでいる可能性がある。ディレイラーハンガーは、転倒、衝撃があった時にフレームを守るために少し柔らかくできているのだ。

真後ろから見て、ディレイラーハンガーやディレーラーがフレームに対してまっすぐになっているかかどうかチェックしてみよう。曲がりが大きいと変速がスムーズにできず、走行中も異音に悩まされてしまう。とりあえずの応急処置は車輪を外して手で曲がりを直すことだが、無理に大きな力をかけるとフレーム自体が歪んでしまったり、エンドが折れたりすることもあるので慎重に行いたい。専用工具がないときっちり修理することはできないので、必ずショップで対処してもらおう。

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変速の調子が悪いときは、リアエンドが曲がっていないかも確認しよう

 

<シフター操作がスムーズに行かない>

シフターも長年使っているとロー側にギアが上がって行き難くなったり、トップ側に操作すると一気に何段も飛んでギアが落ちたりすることがある。これはシフターやデュアルコントロールレバー内部にある、ワイヤーを巻き取るドラム部分をレバーに連動させる為の、ツメの部分の動きが悪くなっているのが要因だ。

注油をしてやると改善するので、リリースレバーの根元などからドライタイプのオイルを吹き入れてみよう。それでも改善しない場合は、ラチェットや爪が寿命を迎えている可能性がある。上級グレードならば交換パーツがあるが、それが無ければシフターやデュアルコントロールレバーそのものを取り替える必要がある。

走行中の異音や違和感は、ライドそのものの快適性を阻害し、疲れにもつながってくる。変速機系統の調整を身につけて、精神的にもパーツ的にもストレスのないスムーズなライディングを快適に楽しもう。

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は2月13日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

(写真/本人)


第5章:ゴキゲン!「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!

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6)カラダの異常!どうする!?

7)サイクリストの義務!自転車の健康管理

8)パンク!! スマートな対処はカッコイイ

9)センシティブ!ディレーラー調整のコツ

10)命を預ける!?ブレーキのメンテナンス

 

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