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2017年04月11日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 3-6) 悪路走破の快感で、MTBにハマってしまう!

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瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第3章:快適に走る、楽しく走る、ライディングテクニック

 

3-6)悪路走破の快感で、MTBにハマってしまう!



自転車が世の中に広まり始めた頃、道路は未舗装路が多かった。
ツール・ド・フランスも初期の頃はほとんどが未舗装路であり、現代になってもダートや石畳の道がルートになることもある。
自転車は未舗装路の走行からその歴史が始まったのであり、ある意味それは原点であってライディングテクニックも未舗装路の走行から学ぶ事が多い。
様々なコンディションをクリアして行くテクニックの先には、大自然をフィールドにした広大な楽しみが待っている。

 

<ロードバイクでの悪路対応>

ロードバイクや細いタイヤのクロスバイクで走る場合は舗装路が前提となる。しかし舗装でない路面に出くわすことも郊外や山の中などでは良くある。
多いのは道路工事中で舗装が剥がされているケースだ。また山の中の林道などもほとんどは舗装されているが、途中で未舗装の区間があったりもする。
細いタイヤは未舗装には向かないのでそこはテクニックでカバーする必要がある。舗装路と同様のスピードで突っ込むと転倒やパンクのリスクがあるのは言うまでも無い。対応の基本は未舗装部分に入る前にスピードを十分に落とすこと。路面状況によっては歩くようなスピードにすることもある。
そしてギアを軽くしてケイデンスを上げ、安定を確保することが大切だ。重いギアで荒れた路面を走るとトラクションが確保しづらく転倒しやすくなる。少しでも危険を感じたら無理せずに降りて押すようにしたい。
視線は下を向かず数メートル先の路面をしっかりとよく見る。凸凹だけでなく石や木が落ちていたり水の流れた溝や穴があったりするので注意を怠らず、しっかり目を凝らす。

路面状況に慣れてくるとスピードを出したくなるが、調子に乗ると細いタイヤでは簡単にパンクしてしまう。さらにリムを傷めるケースも多くなるのだ。またスピードを出すと細いタイヤではハンドルの振れが大きくなり、取られて転倒するリスクが高まる。自転車も身体も大きなダメージを被ってしまうので、スピードを落とし細心の注意で走行したい。
とくに小径ホイール車の場合はハンドルが取られやすくなるので気を抜かないようにする。

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未舗装路にチャレンジしたくなる気持ちを抑えて、時には無理せず押して歩くことも大切だ


 

<ポジショニングとパンク回避>

未舗装路では走行が不安定になりがちなので、重心を下げて安定を確保することを意識する。ケイデンスを確保しながら、なるべくサドルには体重をかけず、少し尻を浮かすような感じでペダル荷重での低重心を心がける。
下りなどペダリングが必要ない状況ではペダルは前後に水平にしたボジションを取る。
路面の凹凸の衝撃を吸収できるように、肘や膝を軽く曲げて振動を吸収する。ハンドルは軽く握り、いつでもブレーキを操作できるように指をかけておく。

気を使うのはパンクである。まずはタイヤチューブの十分な空気圧を確保しておく。タイヤのサイドに記載されている推奨空気圧の上限に近い状況が好ましい。ロードバイクなら通常は8~9気圧程度である。
注意してスピードを十分に落としていれば、空気圧を確保することでリム打ちパンクは概ね避けられる。
タイヤサイドに石や突起物などをぶつけてのパンクは、しっかり路面を見て避けるしかない。但しサドルにドカっと座っていると衝撃を緩和できない。路面からの突き上げも膝と肘で吸収し、パンクのリスクを少しでも低減したい。

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とくに下りでは、少し尻を浮かすような感じでペダル荷重での低重心を心がけよう


 

<グラベルの対処法>

グラベルとは未舗装路の中でも、いわゆる砂利道のことである。
砂利の大きさや深さなどで走り難さは異なる。玉子やピンポン玉のような大きな石が敷き詰められた深いグラベルだと、タイヤが潜りハンドルが取られ、さらにポンポンと路面から跳ね上がったりして、ロードバイクの細いタイヤには難関である。
一定以上のスピードの保持が安定走行の条件となるが、ホビーライダーのレベルでは高速で安定して走行することは困難だ。降りて押すことをお勧めする。
小石が薄く広がっている程度のグラベルならば、経験とスキルで走行はできるようになるだろう。
ポイントは高トルクの確保である。かなり軽いギアでクルクル回してケイデンスを上げ、路面からの振動による減速を抑え込む。
ハンドルはしっかり握って左右に振れがちな動きを抑える。まっすぐ進むように補正しながらハンドルを取られないように進路を矯正していく。
両輪のトラクションを確保するため、ダンシングはしないでサドルに座ってバランスを確保し、とくに後輪が空転しないように意識して、高ケイデンスを維持する。
言うまでも無いが、タイヤを太いものに履きかえれば走行は安定するが、グラベル以外では重たくなってしまう。

 

<ロードバイクに活かせるMTBテクニック>

未舗装路の中でも、荒れた地道、泥でぬかるんだ道、深い砂利道などは路面状況が目まぐるしく変化する。路面からの突き上げや抵抗も大きく縦にも横にもスリップしやすくなり、ブレーキはすぐにロックしてしまう。ハンドル操作も俊敏さとしなやかさが要求され、絶え間なく不安定で不規則な変化に直面しつづけることとなるが、これらをテクニックでクリアしていくのが快感であり、また新たな自転車の楽しみでもある。
ちなみに世界で最も格式あるワンデーレースである、「パリ~ルーベ」は相当な悪路を走るレースである。しかし出場選手の多くは23Cタイヤのロードバイクに乗っており、テクニックを身につければ悪路でもロードバイクで走破できることを証明している。
また、シクロクロスはもともとロードレース選手の冬季トレーニングであり、不整地を走る事によって自転車の操舵能力、瞬発力を高める良い練習になっている。

しかし、我々がロードバイクで悪路走行をするのは限界があるし、そもそもそのようなコンディションでの走行を楽しむモデルではない。
MTBのように極太タイヤでゴツゴツのトレッドがあれば、走行不能と思われた悪コンディションでも驚くほど簡単にクリアできてしまう。MTBによってそこはとても面白いフィールドに変化し、新たな楽しみの世界が広がっている。
そのMTBのテクニックを身につければ、ロードバイクのテクニック向上にも大きく役立つだろう。

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未舗装路の走行を可能にするMTBに乗れば自転車の世界はぐっと広がる


 

<ギャップを超える快感>

MTBに乗ってまずトライして欲しいのは、ギャップ超えである。実際ロードバイクで走行していても路面の段差や緊急時の歩道への乗り上げなどの際に役立つテクニックだ。

① 段差やギャップが近づいたらスピードを落とし、尻を浮かせるポジションをとる。
② 段差に対して直角に入るように進路を整える。
③ ペダルの位置は効き脚を前にして、2時くらいの位置で踏み込みに備える。
④ 肘を少し曲げて前傾になり、しっかりハンドルを握る。
⑤ 段差の手前でペダルの上に立ち上がるように踏み込む
⑥ 同時に上体でハンドルを引き上げ、前輪を段差の上に乗せる。
⑦ 前輪が段差に乗り上げたショックがあれば、肘で吸収する。
⑧ 直後に全体重を前方に移動させ、ハンドルを前方下にグッと押し込む。
⑨ 両ペダルのビンディングを同時に引き上げて後輪を浮かせるようにする。
⑩ 後輪が段差の上に乗り上がったら、軽くペダルを回し安定を確保する。

MTBで山道のシングルトラックを走行する際には、このギャップ越えは頻繁に行うこととなる。思い切ってトライすると意外にクリアできてしまい、ちょっと快感になる。
スキルを磨けば、数十センチのギャップなら難なく超えられるようになり、そのたびに快感が連続的にやってくるので、やめられない!?

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ロードバイクでも使えるギャップ越えのテクニック。安全な場所で練習してみよう


 

<階段を下るのはリズムが大切>

次は段差下りである。実際に山道のシングルトラックを下っていて多く出くわすのが、丸太などを利用した階段である。とくに長い階段に怖じ気づいてしまい、自転車を降りて下るのは、MTBライダーとしては忸怩たる思いを抱いてしまう。
ちょっと勇気を出して、階段下りにトライしてみよう。

① 下り始める前にサドルをシートポストの一番下まで下げておけば、よりラクにポジションをとりやすい。
② 階段手前でスタンディングに近い状態までスピードを落とす。
③ スタンディング状態でペダルを水平に保ったまま、前輪を階段にさしかける。
④ 前輪が落ち始めると同時に、腕を伸ばし、しゃがみ込むような感じで尻をサドル後方、もしくは後輪の上に持ってくる。
⑤ 前後輪の着地のショックを膝と肘で吸収する。
⑥ 傾斜が緩い階段の場合、両輪が落ちた直後にポジションを少しニュートラルに戻す。
⑦ 次の段差に落ち始めると、またサドル後方に尻を置くポジションを取る。
⑧ 傾斜がキツイ場合は、尻をサドル後方、もしくは後輪の上のポジションを取り続ける。
⑨ 下りだしたら途中で止まらないように、一定のスピードを維持する。
⑩ ドンッドンッドンッっと一段ずつリズムを取りながら下り続ける。
⑪ 傾斜がキツクなり怖くなっても、勇気を持ってなるべく止まらないように踏ん張る。迷いは禁物、覚悟を決めたなら、思い切り良く最後まで挑戦を続ける。
⑫ 残り数段程度になったらブレーキを緩め一気に転がして下りきる。

下りきると思わずニヤッと笑みがこぼれて、ちょっとした達成感が味わえる。
MTBシングルトラックでは、こんな小さな喜びが次々に味わえるのである。

 

<急登は一気に上る>

急登は、あまり長い距離でなく路面状況が酷くない場合は、一気に上り切るのが気持ちいい。

① 急坂にさしかかる手前でギアを軽くし十分に加速する。
② 登り始めたらペダルが重くなる前に一気にギアを軽くしていく。
③ お尻の位置はサドルの前方に移動し上体を前傾させ、ハンドルに近づけて前後輪にかかる体重を均等にする。
④ ハンドルをしっかり引きつけつつ覆いかぶさる感じで体重をかける。
⑤ 前輪が浮きやすくなるのでしっかり地面に押し着ける。
⑥ 後輪をスリップさせないため、できるだけ立ち上がらずにトラクションを確保し、円滑に一定のリズムでペダリングする。
⑦ 急登の前方を見据えて、ペダルをしっかり回し続け、あきらめずに上り切る。

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未舗装の急登へのチャレンジはヒルクライムとはまた違った達成感を得られる


 

<急な下りは度胸の見せ所>

急坂下りは度胸だめしである。傾斜に対する恐怖にどこまで打ち勝てるかが大きなポイントになる。

① 急坂にさしかかる前に尻をサドルから後方にずらし後輪の上に持ってくる。
② ペダルは水平にして両脚に体重をかけ、尻を浮かせる事で重心を下げて安定を確保する。
③ 手を軽く伸ばしてブレーキをしっかり握る。
④ 前輪・後輪同時にブレーキをかけ、タイヤがロックしないようにジワーと握る。
⑤ できるだけ直線的にラインをとる。
⑥ ハンドル操作はしないほうが転倒のリスクは少ない。
⑦ 膝と肘に余裕をもたせ振動を吸収させながら、思い切って下る。
⑧ 終盤になったらブレーキを緩め一気に下りきる。

なお、階段下りと同様に、事前にサドルをシートポストの一番下まで下げておくと、よりラクに下りやすい。

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恐怖に打ち勝ち急坂の下りに挑んでみよう


 

<ライン取りは、状況の即時判断と思い切り>

スムーズな走行には上手なライン取りが必要になる。大切なのは「いちばん簡単に走れるライン」を見極める事である。路面を読み、ラインを決めるポイントを考えてみよう。

・石や岩、木の根などの障害物が少ないか
・石の上は通れるか
・右側、左側、真ん中どこが走りやすいか
・凹凸はないか
・タイヤのグリップが確保できる路面か
・砂などが浮いていないか
・泥濘は突破できる状況か
・落ち葉の状況は
・グレーチングはないか
・空中に枝や草、ツルなどが張り出していないか
・雪の状況は
・カーブのきつさは
・傾斜の変化は
・ペダリングのニーズは
・先の状況につながるラインか

などをしっかり見極め、瞬時に判断しラインを決め操作して行くのである。
判断の基準になるのが自分のスキルであり、自分でクリアできるラインを常に見つけ、想定より難しくても思い切ってトライすることが上達につながっていく。

MTBの基礎テクニックを紹介したが、これらのスキルを身につければ、ロードバイクでも転倒やパンクなどのリスク対応力が増し、様々なライディングテクニックの向上にきっと役立つであろう。

最後に、MTBを楽しむ際、山の中ではハイカー優先であることを徹底認識いただきたい。
どけどけっ! といった態度は言語道断である。ハイカーがいれば「こんにちは」と挨拶をし、道を譲ってくださった際には、互いの安全を確保し「ありがとうございます」とお礼をするのは最低限の常識である。
また、山での常識やリスクについても理解しておくのが原則である。
自然へのインパクトは最小限を心がけ、トレイルは外れないようにするだとか、山の天候を理解するだとか、ゴミは持ち帰るだとか……。
残念ながらこのような基本的マナーを守らないMTBライダーがいるのも現実だ。
その結果、自転車進入禁止の山道が増えてしまった。
これ以上閉めだされないように、マナーとルール厳守の徹底を、ひとりひとりが心がけたい。

(写真/本人)


(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は4月25日(火)に公開予定です。お楽しみに!)


第3章:快適に走る、楽しく走る、ライディングテクニック

1)ビシッと決める、乗車ポジションとフォーム

2)心臓と肺で走る!ペダリングの極意

3)こまめなシフティングが快適ライドのコツ

4)ラクに上る、坂を楽勝でこなす方法

5)テクニックの差が出る!下りを速く安全に!

6)悪路走破の快感で、MTBにハマってしまう!

7)過言ではない!天候が全てを左右する

8)疲れない走り方

9)身体と自転車と家族と、アフターケアが大切

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