記事ARTICLE

2017年01月31日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 3-1)ビシッと決める、乗車ポジションとフォーム

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第3章:快適に走る、楽しく走る、ライディングテクニック

1)ビシッと決める、乗車ポジションとフォーム

 

乗車ポジションはメッチャ大切である。
安全性、快適性、効率に大きく影響するのだ。
しかし、はじめにショップで合わせただけで、それ以降はあまり気にせずに乗っている方が多いのではないだろうか。
もちろん、走行条件や身体の状態などにあわせてこまめに調整している方もいらっしゃるが、それが理想の姿なのである。
ポジショニングのセオリーはいろいろあるが、万人に通ずる正解は無い。
ひとりひとりそれぞれに、ベストなポジションがあり、フィッティングの最終判断は自分の感性となるのである。

快適で効率のよいポジションは、乗り方や身体の状態、走行環境によっても微妙に変わってくるし、経験や技術、筋力や心肺機能など身体の出来具合によっても徐々に変化してくる。
最初は深い前傾姿勢には無理があるが、体幹の筋肉がついて柔軟性が増し、技術も身についてくると難なく取れるようになってくる。つまり「未経験者」「初心者」「中級者」「上級者」でそれぞれ適切なポジションは違うのである。
ポジションとフォームは、疲れや楽しさにも大きく影響するので、上級者を目指すのでなくても自分に合わせてしっかりと調整したい。

自転車での乗車ポジションとは身体が自転車に接する部分、つまり、ペダル、サドル、ハンドルの位置で決まる自転車と身体各部の位置関係のことである。
効率、快適性、安全性の何に重点を置くかでポジションは変わってくる。
速く走りたい人は、限られた力を最大限に発揮し、ロスを最小限に抑える『効率』を求めることに重点を置くだろう。楽しいサイクリングやロングライドを目指すならば『快適性』を求めたポジショニングになる。しかしこれらのみを追求して『安全性』を犠牲にすることはNGで、慎重に対応せねばならない。

_B6H6840
プロのライディングフォームはたしかに美しいが、一般のサイクリストにとって適切なポジションとは必ずしも言えない

 

<サドルの調整>

サドルは身体が自転車に接する部分のなかで最も設定変更がしやすく、フレキシブルで簡単に調整でき、こまめに対応できるポジショニングの要である。
ポジションを決める、または変更する際にはまず乗ってみてフィッティングしながら、元のサドル位置からどれだけずらしたかをきっちり認識しておく。
ビシッと決めるには、できれば都度記録しながらセンチ単位でなく、ミリ単位で調整していく必要がある。
サドルの調整は、シートポストやサドルレールにある目盛をチェックしながら、もし目盛がなければチョークかテープ、マーカーなどで印をつけながら行うと良い。調整するたびに実際にある程度の距離を乗車して、変速やカーブ、ブレーキングしながらフィーリングを確認しながら行うのがポイント。

サドルの高さは、踵をペダルに置いて、ペダルが下死点にあるときに足が緩く伸びる程度といわれている。
サドルを低くすると、トルクがかけやすくなるが、ケイデンスは上げにくくなる。逆に高くすると、パワーが出しやすくなり、トルクよりもケイデンスを重視する走りに向いている。
もちろん、いろんな状況に対応しやすいペダリングは、低すぎず高すぎず、適正のサドル位置にするのが一般的だ。

サドルの前後位置は、クランクを水平にした時に前側のヒザの先端の真下にペダルシャフトが来るようなセッティングが基本と言われている。
ひもか糸の先に、ちょっとした錘(小さなアーレンキーなど)を結びつけ、ひざ下+αの長さにして、反対側を曲げた膝のお皿の縁部分にテープなどで張り付けて垂らす。
クランクを水平にして、ヒザから垂らしたひもとペダル軸が合うように、サドルの前後位置を調整する。
サドルをその位置より前に出すと、ペダルに体重をかけやすく大きな力を出しやすくなる。後ろにさげると太もも裏側のハムストリングスを使ったペダリングで、瞬発力は劣るが疲れにくいポジショニングになる。

一般的にはロングライドやヒルクライムは、サドルが低めで後ろにさがっているほうが、長い時間粘り強く走りやすい。前よりで高めのセッティングはタイムレースやスプリント向きである。
言うまでもなく、スタンダードな高さ、前後位置が基本であり、それが自分のフィーリングに合っていれば更なる調整を無理に行う必要はない。

DSC_2207
ミリ単位の調整で、走行フィーリングが大きく変わるサドルまわり。変更する場合は、元の位置をしっかりメモしておこう

 

<足の位置のフィッティング>

シューズのクリート位置は母指球の真下か少し後ろにペダルシャフトがくるようにセッティングする。クリート位置を前よりにするとケイデンスを上げやすくなる。逆に後ろよりにセッティングすれば、踏み込んで力を入れやすくなる。
人間のパワーのアウトプット地点であり、自分の好みやフィーリングに合わせしっかりフィッティングしたい。
シューズも自転車ポジションの重要な一部。特に海外メーカー品は日本人の足にフィットしにくい場合もあり、自分に合っているかどうかは試着して良く確かめよう。

クランクの長さも5㎜刻みで設定がある。一般に身長の10分の1、つまり身長170㎝の人ならクランク長は170㎜というのがわかりやすい目安である。
しかし、実際にクランクを5㎜刻みで取り換えて乗ってみて確認をするのは、現実的ではない。ケイデンスで、回転数重視の回す人は短めに、ヒルクライムやスプリントなど踏み込み重視の人は長めにするのがセオリーだ。
購入するバイクに装着されているものが、身長や好みに合っているか、そうでなければ購入時に合わせておくのが良いだろう。

DSC_2220
クリート位置も調整しやすい箇所のひとつ。ソールに参考となる目盛がついていることも多いので参考に

 

<手のポジショニング>

手のポジショニングはハンドルやステム、ブレーキブラケットの形状や位置、角度や長さなど様々な調整ができ、選択肢が豊富である。
ハンドルはサドルやペダルよりも選択肢が広く、いろんな形状がある。
ドロップハンドルのロード用だけでも、アナトミック、アナトミックシャロー、シャロー、コンパクトなどの形状があり、ポジショニングもそれぞれに応じて多様になる。
ハンドルのサイズも380㎜くらいから440mmくらいまで数種類の設定があり、基本的には肩幅に合わせる。大きめだとポジションの幅が広がり個人的には好みだが、車体の取り回し易さや空力などへの影響を懸念する人もいる。
肩幅といっても図り方は容易ではない。肩の一番高い部分(肩峰)の幅を図るのだが自分では難しいから、ショップのスタッフに頼んでみよう。
肘が伸びていたり、腕が肩幅の内側にはいっていると、ハンドルからの衝撃を吸収できないだけでなく、ハンドル操作にも支障をきたすのでしっかり調整したい。

手のポジショニングの要はハンドル位置や高さを決める「ステム」である。
「ステム」とは、言うまでもなくハンドルとフレームをつないでいるパーツであるが、様々な長さや角度、材質があり選択肢は豊富だ。
しかし、多くの場合初めから付いているパーツであり、自転車を購入後に長さの調整は行い辛い。従って事前にどの長さや角度が良いのか、ショップの人と良く相談し試乗してポジショニング調整を行ってから、ステムを決めて、適切なサイズのものに自転車購入時に交換することをお勧めする。
長さや角度の調整は困難だが、高さはスペーサーを使って調整可能である。ステムはフレームヘッドに数枚のスペーサーとともに差し込んであるが、このスペーサーをステムの下部に多く入れればハンドルは高くなり、ステムの上部に入れれば低くなる。
それでも調整しきれない場合は、ステムの「天返し」というワザがある。つまりステムの上下をひっくり返して装着することで、ポジションの変更ができるのである。

ブレーキブラッケットのセッティングでも調整ができる。
ブラケット上面を水平にする人が多いが、その場合指先が下向きになってしまい、単なる前傾姿勢ではなく、肘を伸ばすようなポジションになりやすい。肘は余裕をもったほうが良いし、ハンドル荷重が大きくなって掌も痛くなりやすくなる。
少し前上がりの上向きにセッティングすると、手首の角度も無理に伸ばさない自然体に近くなり、ヒジにも余裕が生まれる。
但し、下ハンドルを多用する場合にはブレーキを握り辛くなるというデメリットもある。ブラケットは外向きにも内向きにも角度をつけた装着が可能だが、少しだけ内向きが人間工学的にも良いとの意見もあり、最近のちょっとしたトレンドのようだ。

ハンドル位置と高さは、最初は「近め、高め」がラクなポジションがとりやすく、身体ができて技術が身に付くほど「遠く、低く」なっていくのが一般的である。

DSC_2186
ハンドルまわりはパーツ構成が多いこともあり、さまざまな調整ができる

 

<フォームをつくる>

一般に、快適さとスピードは両立せず、胴角度が小さく前傾姿勢が強くなるほどスピードを出しやすいが、快適さは減少し前方視認性も悪くなる。
胴角度が小さいほど空気抵抗が少なく、かつ臀筋(お尻の筋肉)も有効に利用できてペダルにより大きな力を加えることができ、スピードを上げるのに適している。
手のポジションがサドルから遠くなると、前傾姿勢はとりやすいが、肩角度が90°を越えると、肩および背中への負担が増える。
ポタリングや景色を見ながらのサイクリングには、胴角度が大きくアップライトで楽な姿勢が適している。呼吸が楽になる利点もある。胴角度が45°以上あれば首に負担をかけずに前方を見ることができ快適である。

但し胴角度が大きいとお尻が痛くなりやすい。その場合は少しサドルを高く、ハンドルを低くして体重を分散する。さらにペダルの上に重心を持ってくることでお尻への負荷は少なくなる。

腕は、肘を曲げて緩くし、ハンドルも力を入れるとき以外は緩くそっと握る。
肘が伸びるポジションだと、ハンドルを押しがちになり、力が必要なときに引きつけがしづらくなる。
肘をカルク曲げ、ハンドルを柔らかく握る事により、路面からの振動を吸収して身体への負担を和らげ、また、負荷がかかった時や登りなどで踏み込みを強める際にハンドルを引き付けやすくなる。

ベストなポジションは自分でいろいろと試しながら創っていく。そして体調や外部環境のコンディション、走るコースによっても微調整ができるようになるのが理想である。
体調も気象条件も良く軽快に飛ばせそうな場合は、サドルを高めで前出しに、クリート位置も少し前に出す、ロングライドやゆったり走りたい時にはサドルは低めで後ろにさげ、ハンドルもアップライトなポジションにするといった具合である。

今回の紹介したポジショニングは、私が中学生の頃から長年いろいろと試し培ってきた、私のセオリーである。フィッティングセオリーにはいろいろとあり、専門書や雑誌などでさまざまな方法が紹介されている。
しかし最終判断は自分の感性である。自分に最適なポジションを自分で創造していくのも、自転車の奥の深い楽しみのひとつなのである。

DSC04608
ひとりひとり体格や骨格が違ければ、走行スキルや走る目的も違う。そのため、自分に合ったポジショニングは自分で創造していくしかない。それも自転車の楽しみのひとつである

(写真/本人、編集部)

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は2月14日(火)に公開予定です。お楽しみに!)


 

第3章:快適に走る、楽しく走る、ライディングテクニック

1)ビシッと決める、乗車ポジションとフォーム

2)心臓と肺で走る!ペダリングの極意

3)こまめなシフティングが快適ライドのコツ

4)ラクに上る、ヒルクライムのテクニック

5)テクニックの差が出る!下りを速く安全に!

6)悪路走破の快感で、MTBにハマってしまう!

7)過言ではない!天候が全てを左右する

8)疲れない走り方

9)身体と自転車と家族と、アフターケアが大切

関連記事

記事の文字サイズを変更する

記事をシェアする