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2020年03月17日

【Mt.富士ヒルクライム】歴代チャンピオンに聞く 17th.富士ヒル 選抜クラス展望 2/3

tobira

いよいよ長文になってきました。3回に渡ってお届けする【歴代チャンピオンに聞く 17th.富士ヒル 選抜クラス展望】のその2をお届けします。出場を検討している選手の皆さんはどんなレース展開になるか、すでにシミュレーションをしていることでしょう。富士ヒルはもちろん、台湾KOMチャレンジも出場経験がある皆さんは、どんなレースになると予想したのでしょうか。
第1回の記事はこちらから

 

Question.
Q1.この制度の変更を最初に知ったとき、どんな印象を持たれましたか?
Q2.出場するとしたらどんな対策をしておきますか。
Q3.どんなレース展開になるか予想をお聞かせください。
Q4.選抜クラス・Jプロツアーそれぞれから、もっとも脅威と感じている選手を1名ずつあげてください。
Q5.たとえばアライアンスを組むなどの考えも検討しますか?
Q6.このレースにむけて抱負・目標を挙げてください。
Q7.このレースは楽しみですか? それとも回避したいですか?

 

324s
第14回大会選抜クラス優勝 兼松大和さん PHOTO:小野口健太

 

Q3.どんなレース展開になるか予想をお聞かせください。

森本「マトリックスのフランシスコ・マンセボ選手、ホセ・ビセンテ・トリビオ選手を中心にハイスピードで展開すると思われます。特にマンセボ選手は実力が頭一つ抜けてるので、それに食らいついて行ける選手がいれば、ラストは少人数でのスプリントかな、と」

ーここでも名前の挙がるマトリックスの選手。もう少し詳しくお聞かせください。
「マトリックスが両選手を投入してくることを前提に考えているんですが、仮にその2人がいなければ、集団は団子(大差ない展開)だと思います。
富士スバルラインは、平均勾配5.2%とはいえ上りっぱなしなので、普通のロードレースのように各チームが戦略を立てて組織的な展開を繰り広げる、という風にはならないと思うんです。チームプレイをしようにも、やはりそこはヒルクライムなので、こぼれ落ちるアシスト選手が多数でるんじゃないかな。中盤以降はエース級しか残らないと思います。

選抜クラスのトップ層、昨年の富士ヒル優勝者である佐々木選手など、正直彼らのレベルというのは、今のJプロツアーのクライマーと呼ばれている選手たちとそう変わらないと感じているので、先行したプロにただぶら下がるだけ、という一方的な展開にはならないんじゃないかと。
そうは言ってもあざみラインのように、ただ走っていればバラけていくというものでもないとは思います。もしかしたら、選抜クラスがレースを作るのかもしれないですね」

ー選抜クラスの選手も互角に戦えるということでしょうか。
「両者入り乱れる展開もあるかと思いますよ。ただ、先にも名前を挙げたホセ、マンセボ両選手次第。彼らにとってはUCIポイントのないこのレースはエキシビションマッチのような位置付けになると思います。注目されていることも考えて最初から高い強度で行くことも考えられる。ともすれば後続はバラバラになってしまう。
少なくとも、ぬるい展開にはならないと思うんですよ。それだとまったく面白くないですし、プロもプライドがありますからそういう展開にはしたくないはず。堂々と真っ向勝負になると思います」

兼松「Jプロツアーの5戦目にあたりますが、それまでのJプロツアーチームランキングの推移と、誰がリーダージャージを着ているのかによって展開が変わってくると思います。Jプロツアーは個人戦というよりもチームとしての勝利があるので、展開が全然変わってくる。
この時点でJプロツアーの出場選手が発表されていないので想像しづらいですね。ひとつ言えるのは『異次元の速さ』になるんじゃないでしょうか。
その中でホビーの選手は、集団から弾かれ、もしくは弾かれるのを避けるために自分たちの脚を使って前へ前へ、という動きになり、力を使わされる展開があり得ると思います。
ゴール手前の最後の一瞬だけ下りになるあそこでのプロの牽引って恐らく凄まじい。あそこで比較的大きい集団だとしたら、縦に長く伸びる中での位置取り合戦が起こると思うんですが、そこで後ろに位置していると、前との差が開きますから当然不利になりますよね…..。とはいえ、そのシーンで選抜の選手が先頭付近のポジションを取らせてもらえないでしょう。
では選抜同士が協調し、列車を組んで平坦を牽き、見事に「散る勇気」があるか、というと、そこはない、と思うんですね。千切れる覚悟、役割で踏んでいくプロ選手に対して、少しでもゴール前に脚を残したいと考えるホビーの選手となれば、差が出ると思います。
また、レース中盤の勾配が緩い箇所などでは、アタックなども予想されます。そこで高負荷のインターバルが掛かります。パワーウェイトレシオが高くても、パワーの絶対値が低い傾向にあるホビーの選手は、緩斜面の高負荷インターバルで苦しむことも予想されます。もしかしたら、中盤には数名の逃げが確定して勝負が決まるかもしれません」

田中「はじめに、今までの富士ヒルってどういうレース展開だったかというと、緩斜面ゆえに誰も前を牽きたがらない。前半は譲り合い、ゆっくりしたレース展開なんです。これはなぜかというと、参加してる全員がエースなんですね。みんな自分のために走ってる、己が勝つために走ってるので、前を牽くと不利になるので牽制します。
今年はどうなるかっていうと、Jプロツアーのチームはアシストを何枚も持っている。アシスト選手らはゴールをする必要はないのでエースを勝たせるために、かなりハイペースでアシスト選手を使いながら進んでいくでしょう。
そのペースの中で我々が何かをする必要はなくて、ただ食らいついていくような。そして中盤以降、エースが勝負を仕掛けるところが必ず来るので、そこに乗れるかどうかというレースになるかと思います。
たとえマンセボ選手や増田選手であっても、あのコースを30分や40分で走りきる、というのはかなり至難の技と思うので、後半勝負になるとみています。
若干ロードレース寄りの展開になると思うので、駆け引きの要素が肝心。力で押し切る展開にはなりづらいのではないか。Jプロツアーのチームが前で何枚か固めてペースを作る。そこに選抜クラスの選手の出る幕はないでしょう」

ーでは、選抜クラスの選手は何名くらいが最終局面まで残ると考えますか?
「結構多く残ると思います。1時間くらいのヒルクライムレースですから、Jプロツアーの選手と選抜クラスのトップ選手って、そこまでの実力差が出ないのではないか。
むしろ選抜クラスの選手の方が若干強いケースもありえます。前でアシスト選手が仕事をしてる中で脚を温存し、エース級が動き始める局面までは選抜クラスの選手は大半が残っているでしょう」

ー具体的に「最後の局面」とはどの辺りを指していますか?
「4合目の和太鼓を叩いている大沢駐車場を過ぎた少し斜度が上がるところがあります。コースがちょうど九十九折になるので、1回アタックをするとすぐに視界から消えるので動きやすいです。
とはいえ、レースは生物なので、序盤からエース級がドカンといってしまって、誰も動けず勝負が決まってしまうということも考えられなくはないです。基本的にはレースを組み立てる上では、先に述べたような展開になると思います」


中村
「Jプロツアーがチームでプロの意地で積極的に前を牽いて、ロードレースのような展開が繰り広げられるのか? もしくは選抜クラスの選手がヒルクライムに特化した能力を活かしてプロを苦しめるような展開となるのか。
例えば、個々の選手のもつ力、ということで考えていくとJプロツアーを走っている選手が皆揃って富士ヒルクライムのコースを走って速いのか、というと、決してその限りではないと思います。選抜クラスの選手であっても、Jプロツアーの上位に入る選手もいると思います。ですから、プロの選手が強烈に前を牽くような、強度の高いいわゆるプロらしい走りで一方的に集団を壊すような展開になるのか、というと、一概にそうとは言えないかなと。
レースの雰囲気によっては、選抜クラスの選手が積極的にレースを作っていく展開もありえるんじゃないかと思います。
ホビークライマーのパワーウェイトレシオもレベルは低くはない。終盤で数人で逃げられるようなことがあれば面白い展開になると思います。
ただ、絶対的なパワーはやはりJプロツアーの選手の方が高いはずなので、最終局面までJプロツアーの選手が残るのであれば、選抜クラスの優勝は難しいかもしれません。
いずれにせよ、Jプロツアーから参加するチームが「勝利」に拘るのか「魅せるレース」にするのかによって展開も変わると思います。勝ちに拘るあまりに牽制のオンパレード、ということになると、レース自体は面白いものではなくなってしまうかもしれないですね」

ーやはりそこは『面白い』レースになってほしいと思われますか?
「Jプロツアーが極端に勝ちに拘らずに展開するなら、走っても観ていても面白いレースになるでしょう。
例えば、この富士ヒルクライムでのJプロツアーの獲得ポイントを高くすると、彼らは年間を通してのランキングもあるので、勝ちにこだわる走りに寄ってしまうのではないかと考えています。そうすると『面白い』と思えるエンターテインメントに振った走りは自ずとやりずらくなってくるのではないでしょうか。
面白さ、と言う部分をルール(ポイント数を低くする等)で助けることができるのであれば、面白くなるのではと思います」

 

 

Q4.選抜クラス・Jプロツアーそれぞれから、もっとも脅威と感じている選手を1名ずつあげてください。

森本「選抜クラスでは田中選手。2018年の優勝者、かつ台湾KOMチャレンジなど、ここ何年か一緒に走っていて、ヒルクライムの基本的な走力としては一歩抜きん出ていると思います。
彼は気分のムラみたいなものが見て取れやすい選手でもあるのですが経験もあるし、そこは合わせてくると思いますよ。本人も今回はバッチリ仕上げていくと言っているようなので、その通りになれば強いと思います。
Jプロツアーはマンセボ選手。彼は、43歳か44歳か……いい歳なんですけど、持ってるベースの次元が違いすぎる。
日本のUCIレースでの走りを見ていると違いは明らかです。当日、彼自身がどういうモチベーションで走るのかにもよりますが。安原監督が“思いっきり行け”というのか“ちょっと遊んだれ”と言うのか……このさじ加減ひとつでも変わってくるんじゃないでしょうか(笑)」


兼松
「選抜クラスからは過去にJプロツアーを走っていて、ロードレースの経験もある森本選手。
Jプロツアー選手たちも、彼のポジション取りに関しては容認するのでは、と考えています。全日本選手権でも上位に入るほどの実力者ですから。集団の中で一目置かれていることによって、これまでの選抜クラスのレースよりも、力を温存して走りやすい=能力が発揮されやすいかもしれません。
そして田中選手。台湾KOMでアジア人1位になっていますし、彼は全体の能力が高いので(密度の高い集団で上手く立ち回るというよりも)力で前に出ていく走りが可能なんじゃないかと思っています。
Jプロツアーからは増田選手やホセ選手。マンセボ選手も強いですが……アシストに回ると予想しています」

田中「Jプロツアーはマンセボ選手。別格ですね。修善寺などで実際の走りを見る機会もありましたが、もう圧倒的に強いですよね。正直、本気を出されたら勝負にならないでしょうね。
ただ、その圧倒的な強さを生で“見たい”です。僕が出場するとしたら、マンセボ選手の走りは見てみたい。どんなアタックをするのだろう……。

ーマンセボ選手の走りを間近でみられるならば、ご自身の成績を捨ててでもついていきますか?
「行きたいですね。去年は台湾KOMチャレンジを目指して1年頑張っていました。これもまったく同じ理由で、海外のワールドツアーの選手たちのアタックを見たくて出たんです。結果、それを見て電流が走ったというか。人間はこんなにすごいんだ! と」

ーある意味で達観されたというか?
「日本の中で“乗鞍を勝つ”とか“富士ヒルを勝つ”といっていても、本当に上には果てしない上があるというのを台湾KOMで体感してしまった。今回のレースで、マンセボ選手との走りの中でもきっと、そういう感覚を味わえることになるんじゃないかと思います。
自分が今年の富士ヒルを走るかっていうと、まだ心が決まってないのにこんなに語ってしまいましたが(笑)」

ーでは選抜クラスからは?
「いない、ですかね。ホビーの頂点を争う選手たちは実力が肉薄してるところがあって“この人には本当に勝てないな”ってずば抜けた選手は正直おらず、その日のピーキング次第で、その日の勝者が変わる。コースによって違うとか、その人との相性・得手不得手みたいなところが勝負を左右しています。ですから“脅威”となると“いない”という回答になります」

中村「個人名を挙げての回答は差し控えたいのですが、Jプロツアーの赤城ヒルクライムで上位に入っていた選手たちはこのコースでも強いのではないでしょうか。選抜クラスは昨年優勝の佐々木選手や森本選手など、ロードレースにも強い選手がプロツアー混戦となる富士ヒルクライムで強いと思います」

 

写真:小野口健太 武智佑真

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