2015年11月28日
パリ・ブレスト・パリ ランドヌール2015 VOL.9 三船雅彦×矢野大介&ファンライド 鼎談【最終回】
ルールは参加者の命を守るためにある。
それをよく表しているのが、このイベントだ。
命を守るためのルール
三船:これはさすがにというルールは信号無視かな。先頭には車とオートバイが管理していますが、審判というよりは交通の妨げにならないように、先回りで先導したりする役目だったかな。前回ちぎれたときは、夜になるとオートバイが横にきて声をかけてきた。これに反応できなくなると寝落ちしているな、と判断するんでしょうね。前回も死傷事故がありましたからね。それでもこの大会は続く。一度、自分も寝落ちして谷に落ちかけたんですけどね(笑)。とっさに脚が出なかったら、とっくに終わっていた可能性がありました。2日目の夜はみんな強烈なカフェインのようなものを摂取していると思います。誰もふらつきもせず、自分だけ何度も寝落ちしそうになった。
矢野:コントロールポイントの前後5kmはサポートして良いことになっていますが、それはきっちり管理されていましたね。でも結局コース上でピクニックしている人に、補給を求めて、貰っていたりしますからね。日本はそれもダメですけどね。国民性が出ているのだと思います。ロードレースなんかは最近厳しくなっていますけど、なにが懸かっているかですよね。PBPならそれがプライドというか。それを超えられるならばOKなんでしょうね。やっぱりツール・ド・フランスを生み出した国のイベントだと思いましたね。100年前の自転車レースを走っている気持ちになれるのはそこにありますね。
三船:80時間の部は1000人くらい出ていてトップを狙う人とゴールをすることに人生をかけているような人まで幅広い層が一緒にやっているというのがフランスらしいなと思いますよね。
編:まさに文化ですよね。
パリ・ブレスト・パリは文化への挑戦だ
矢野:あるべき姿のブルベを体験したかったらPBPとかヨーロッパのイベントに出ることですね。
三船:自分との戦いという部分、そして先頭集団ではロードレースの名残を感じさせる、ツール・ド・フランスがある国だからこそ特殊で面白い。貴族社会というか、歴代のランドヌールの部門でもフランス人が多いというのは民族性というものが感じられるし、そこにあえて入って行くのが面白い。なんかイノーの時代にグレッグレモンが入っていたように。入って行く楽しさがあったと思うよね。
矢野:それを楽しみに思える人ならいいですね。それをチャレンジとかモチベーションにするとか楽しみにするとか。客観的に見たら面白おかしいし、その姿勢で素直に受け入れられたら楽しいし、そのうち認められるステージがくるだろうし。その満足感は通常の世界よりも何倍高いはずだし。
三船:PBPも百歩譲って、フランス人、ヨーロッパ人以外があそこに入ってくるって、起こってはならない事態だったと思うんだけど、アジア人が入っていたときって絶対ゴールの雰囲気は違っていたと思うけど?
矢野:そうですね…もちろんプラカードを見れば日本とわかるんですけど、こう…比較的色黒ですし、典型的な日本人の感じでもないですし、日本人として最初は認識されてなくて、ゴールした後も多分….基本的にスペイン人だと思われてますよ?
三船:そう今回、スペイン人と思われ率が高かったわ(笑)
矢野:走り方も、風貌もまったくアジア人とは思われてなかったんじゃないですかね(笑)。彼らにとって、アジア人が居るなんてことは常識として入っていないはずだから、ああ、スペイン人が居る、と。フラマン語や英語もしゃべるので、特にそう思われたんじゃないですかね。
編:インタビュー前に、三船さんのPBPにおける次の挑戦としてはタイムだ、とおっしゃっていましたが、ナショナリズムへの挑戦という意味もありますね?
三船:選手のころからそうだけど、日本を最初に出てから、ナショナリズムというか日本人ということを強く感じていた。だから日本人の誇りをもとうぜというのがあって、どんな大会でも日本の国旗を揚げることが目標というか。次回もし出るとするなら狙うは一番のタイム。今回、歴代タイムではおよそ30番には入っているはず。メイングループのメンバーも歴代3番目くらいのタイムで入っているし、ここまで来ているということは1番を狙えるんじゃないかと思う。
(おわり)
(写真/海上浩幸 取材/編集部)
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。