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2015年11月20日

パリ・ブレスト・パリ ランドヌール2015 VOL.8 三船雅彦×矢野大介&ファンライド 鼎談

日本でも1000kmのブルベは存在する。

もちろん世界では、異次元の距離を走るものがある。

パリ・ブレスト・パリに並ぶイベントとは。

4年後の挑戦に向けて。あるいは??

三船:俺たちは4年後のPBPしか考えていないかもしれないけど、現地では皆、次のことを考えていた。同じ集団にいた二人のベルギー人が会話をしていた。ひとりは元気で、もうひとりはフラフラだった。最後の街からゴールまでの間に会話が聞こえてきて、“ロンドン〜エジンバラ〜ロンドン走らないか?” というもの。PBPを超える距離の1400kmのイベントで、それを今話すことか?って。さすがにフラフラのほうのベルギー人は、えっ??って顔になっていたけどね。

編:そういう大会はやっぱり同じような顔ぶれで、高い頻度でイベントに出ているんでしょうね。

矢野:PBPの受付会場にはロンドン〜エジンバラ〜ロンドンのジャージを着た人が大勢いた。ヨーロッパにはそういった大きなブルベがいくつかあって、1年間のなかでやりくりするんでしょうね。

編:来年にも彼らはPBPのようなイベントに出ているということなんでしょうね。

矢野:2017年からオーストラリアを横断するTRANS OZ(トランズ・オズ)というのが始まるんですが、距離はなんと4000kmです。特に英語圏は比較的、新しいロードサイクリングの地として、グラベルロードというのが数年前から人気が出始めていますが、その延長線上にあるアドベンチャーライド、ブルベというものが見直されてきていて。特にイギリスやオーストラリアでぐわっと人口が増えていますね。次のロードサイクリングの波として確実にグローバル的にはあります。今回の先頭グループや、三船さんの装備を見ればわかるんですが、Pack Light(身軽に長く乗る)というアドベンチャーなんですよね。いわゆるロードバイクとして速くないと快適ではないというのが基本にあり、その延長線上でどれくらい長く乗れるのか、というのがすごく人気があります。もちろんキャンプ、旅行をテーマにしたものは根強い人気がありますけど、ロードバイクを使おうとすると本来の性能を出せない。また準備も大変なので愛好家も増えにくい。だけどPack Lightっていうのは誰でも挑戦できる。入りこみやすいけれど、あとは自分の身体と精神の問題ですね。グラベルと同様に伸びると思います。いままでの遊びの延長だから。

三船:ブルベもそうだけど人間力というか、そちらのほうに人気があるというか。機材の絶対的性能は二の次で、人間力みたいなものを求めている傾向が強いのかな。PBPにはレースの名残りはあるけど、2日目なんて人間力が強いかだけなんだよね。そういう面白さに、ハセツネとか長距離のトレランなんかでも人気があるのがわかる気がする。

競い合うことに人は惹かれる

矢野:スポーツなので競い合う。誰よりも速く、長くという要素は入ってくる。キャンプは競争ではなく“楽しもう”なので、そこがクリアに違うところですよね。ブルベはレースではないといっても誰でも目標を立てます。前回のタイムを更新するとか90時間以内にゴールするとか設定をします。それってただの楽しみだったら設定はしないですよね。他人との戦いではないですが、自分のなかでもっともっとというのがある。次回はもっと更新したいという思いはあるでしょう。そういう意味では世界中でわーっと広がるのはやはり競うもの。人間ってやっぱり競争が強くして、賢くなった。そういう要素があるから、広がるのかな。

だから結局自己満足で終わらない。他人が関わって完結する。原点がここにある。競い合うレベルが違うだけで、人それぞれ持っている。目標を立てるということは、大きな意味でレースをしているんですよね。競い合うレベルをそれぞれに持っているんですよね。それぞれのレースです。これだけ幅広い層を受け入れるのはフランスだからこそと思いましたよね。いい意味でのいい加減さ。ルールがどこで線が引かれているかわからない(笑)。

(つづく)


(写真/三船雅彦 取材/編集部)

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