2016年03月08日
バラ♥サイ VOL.4(前編)ちゃんぬ さん
こんにちは! バラ♥サイ第4回はアメ村のディーバ “ちゃんぬ”にお越しいただきました! 一体なんなんでしょう。この鮮烈な印象は。アメ村のディーバってなんなん?この人ほんまに自転車乗ってんの?まずはそのヴィジュアル、見た目のインパクトに興味をかき立てられます。ピストブーム全盛の頃、通学用に買ったクロスバイクから始まった自転車ライフ。それがどうしてこうなった?今日もセキララに紐解いていきましょう~。
ちゃんぬ:お店を始めたいと思って、準備期間のつもりで仕事もしてなかった頃、飲み仲間として知り合った人たちが自転車関係の仕事をしていたんです。普通にただの飲み仲間だったんですけど。彼らがシクロクロスを始めたって盛り上がってて、1シーズンずっと見に行ったんですよ。それでその翌年から始めよっかなぁと。
ちゅなどん:それ、見に行って、面白かったんかな? なんで担いで走ってんの?とか?
ちゃんぬ:ですねー。頭おかしいなぁって。あと会場へ行くたびに友達も増えて、せっかく行くんやったら、と。
ちゅなどん:同じアホなら踊らななんとやら、ってやつで?
ちゃんぬ:そうです(笑)。乗っていたクロスバイクでそのまんま出られるよ、って言われて。それやったら初期投資も少なく済むし、この体型(身長170cm うらやましい!)のおかげで、みんながいろんなものを譲ってくれたんです。ジャージもワンピース(シクロクロスレースではスキンスーツを着ることが一般的です)も友人からのお下がりで。……で、自分の通学バイクでタイヤを変えたくらいの改造をしてレースで乗ってみたら、最初のレースはグダグダやったんですよ。練習もしてないし、自転車乗るといっても通学だけやし。で、1回出てみたら今度は負けたくない気持ちがでてきたんです。
どうしたら速くなるんか、ってみんなに相談したら「ロード乗ったらいい」「とりあえず自転車に乗れ」って。でもロードバイクは持ってないので、クロスバイクで山を上り続けたんですよ。自宅から30分くらいのところに十三峠っていう4kmずっと上れる山があって、最初上った時は30分くらいかかったんですけど、そこへ毎朝ひとりで通いましたね。
ひとりトレーニングに打ち込むちゃんぬを「まぁまぁ勝手にやっとけ」と遠巻きに見守っていた周囲の友人たちに変化がおこる。
大事なのはシュっとしてる(かっこええ)こと。
ちゃんぬ:ある日、自転車(ロードバイク)貸したるわ、って言ってくれて。そこからロードは乗り始めたんです。乗ってみると、もう、全然違いましたね。
ちゃんぬ:最初のシーズンはレースもスニーカー+フラぺで出てたんですよ。何がかっこいいか、何がダサいんかもわからんまま始めて、周りを観察すると(ペダルを指差して)みんなこんなんつけてるし、やっぱこれがかっこええんやわ、と思ってビンディングのペダルに交換して。ジャージもピターって着るのがかっこええんやわ、って。私にとって良かったのは、周りにかっこええ人が多かったんです。やっぱりね、周りにどんくさい感じの人が多かったら、私もそっちに寄ってたか〜、もしくはそもそも自転車に乗ってなかったと思います。
ちゅなどん:それはわかるなぁ。最初はわかんないから周りの人を見て、真似するから、かっこいい人が周りに居たなら自然とかっこよくなるし、そうじゃなければ…推して知るべし、ですねー。
心斎橋アメリカ村
ちゃんぬ:販売業なので、日曜日も休めないんですよね。でも、オープンを午後にずらして朝のうちにレース出てます。もちろん終わったら急いで帰ってくる。関西は2時間以内でアクセスできる場所での開催が多いので、それができるんですよ。先シーズンの一番燃えてた時期は、夏から寒くなるまでの間に、週2~3回、出勤前に山を上るっていう練習をやってましたね。往復60kmくらい乗ってたんですけど、最近は……起きられなくて乗ってないです……。
ちゅなどん:寒い時期は誰でもそうだねー。
ちゃんぬ:最近は水曜日に友人が誘ってくれる北欧練(と呼ばれている練習会)に起きられたら行く感じですね。八の字の周回コースなのでみんなから千切れたあともラップされないのを目標に走ってます。だいたい1時間くらい走って、その後2時間、モーニング食べながらおしゃべりして、すっかり身体が冷えてからみんなそれぞれ帰っていく、みたいな感じで。
仲間と走れることが成長の証。そして生まれた「ちゃんぬジャージ」
ちゃんぬ:わたしが自転車をはじめたきっかけが周りの飲み仲間と楽しくサイクリングできたらいいな、ってところだったんですけど、結局そのみんなはレースがあるから、私と楽しくサイリングする時間がないんですよね。みんなそれぞれトレーニングしたいから。これじゃ私はついていけないな、ってずっとひとりで走ってたんですけど、それが徐々に誘ってもらえるようになったんです。
ちゅなどん:そろそろ行ってみるか? みたいな感じだね。ちゃんぬにとって、みんなと走れるっていうのはステップアップやったんやね。
ちゃんぬ:そうそうそうなんです。で、プレステージ(Rapha Prestige NISEKO)に誘ってもらったんです。
ちゅなどん:そうだった! 写真で見たよ!【ちゃんぬジャージ】で走ってたよね。このジャージはどういういきさつで作ることになったの?
ちゃんぬ:わたし、服を売ってる仕事だし、さっき言ったみたいに何がかっこええかわからんうちに始めたんですけど、着たいジャージがなかったんです。文字が入ってるのとか洋服でも好きじゃなくって。それで作ろうと思ったんです。店が80年代をメインに置いてる古着屋なので、どうしてもその空気感を着て走りたかったんです。ただ、オリジナルのジャージを作るとなったら最小ロットもあるし、それこそ、いち古着屋が作ったサイクルジャージがどんだけ売れるんかもわからん。でもとりあえず作りたいもんを作ろうと。
それで、インスタグラムでずっとフォローしてた80年代のイラストを描くデザイナーさんにいきなりメールを送って、お店のアカウントやURLを送ってこんなお店をやってて、ってイメージを伝えて。デザイナーさんはもちろんサイクルジャージのデザインなんて初めてだったんですけど、もし共感してもらえるならデザインしてください、ってお願いして。
ちゅなどん:ネオン管、カクテル、ブラックライト。マイアミバイス(ある一定の年代以上の人にはきっとわかるはず!)、やね。
ちゃんぬ:そうです! ネオンのイメージでビブショーツのイラストも描いてもらいました。
商品撮影、ってことで、友達のカメラマンに声をかけて、出来上がったジャージ着て、夜の京橋(関西の歓楽街)のネオン街で写真撮ったんですよ。自転車持って。こんなん作ってます、って。そうしたら、予想以上に問い合わせが来てしまって「マジか」と。結局3回、追加注文とりましたね。合計30…もうちょっといくくらい。
このジャージがあったから、プレステージも「ちゃんぬ、これ着て出ようや」ってみんなが応援してくれたんです。宣伝がてらやろうぜ、って。
ちゅなどん:自転車乗るのも、ジャージ作るのも、ちゃんぬが一生懸命やってたの見てくれてたんやね。
ちゃんぬ:プレステージへ出るにあたって特訓もしてもらいました。出るって決めた時点ではまだ100km以上の距離を乗ったことがなかったんです。私が知らないところにひとりで行くっていうのがめっちゃ嫌で。ものすごく方向音痴なんですよ。地図も読めないし、ピコっていうやつ(サイクルコンピューターのことですね)もつけてないし。知ってる道しか走れないんで、いつもの練習コース60kmを出られないんです。それで、仲間に琵琶湖一周(約170km)、とか淡路島一周(約150km)に連れてってもらって距離を走る練習をしました。淡路島のときは、早朝から走って15時からお店開けましたね。
ちゅなどん:すごい! どちらも高いレベルで両立しようとしてる!!
ちゃんぬ:とはいえ、ほぼ開店休業状態だからできるんですよ……めっちゃお客さんがいっぱいくるような人気店じゃないので(と謙遜するちゃんぬ。でもわかります。好きな人が繰り返し、何か面白いものが入ってきてないかな、って足を運ぶ、そんなお店なんですね)。
ちゅなどん:自転車を始めて変わったことってある?
ちゃんぬ:夜更かししなくなりましたね。以前は飲食店で夜を中心に働いてたんですけど、今の生活になって、朝に自転車に乗ろうと思うと寝るのが早くなる。あと、身体も引き締まりました。体重は変わってないんですけど、足の筋肉にスジが入ったり……。私の店はレディースの古着屋で、男の人のものは何一つないんです。なのに、自転車始めて、レース出て、ジャージとかボトル作ったら、スーツ着たおっちゃんがお店に来るようになったんですよ。ボトル買いにきました、って。服屋をやってる私が、ただ自転車が趣味です、って言うてもね、お店のお客さんからしたら店主の趣味なんて普通は関係ない話しなんですけど、ジャージいいですね、から話が始まったりってこともあるんですよ。店があったからこのイメージが伝わったし、このジャージがあるから店にも返ってくる、そんな手応えはあります。
あと、人との出会いが濃くなりましたね。一緒に走ってる仲間はもちろん、それ以外にも、濃く知り合うことが増えました。大人になると普通なかなかないことなんですけど。マリさん(ちゅなどんとちゃんぬ、共通の友人であります)とは、今日もお互い「負けへんで!」って言ってるんです。ライバルっていうかーーー。彼女はRaphaのWomen’s Prestigeで一緒に走ったのがきっかけで仲良くなって、今はお互い別の会場でもレースに出るのがわかってたら「今日どうでした?」「今日は○位でしたわ」って報告しあってるんです。他にもレース走っている女の人ってたくさんいるんですけど、彼女はそういうことができる初めての女の人、ですね。
ちゅなどん:マリちゃん、今日来てるやんね?(※1) ちゃんぬ、今日は直接対決やん!
ちゃんぬ:そうですよー! 今日負けたら大阪帰られへん。「もう一回!」って言わなあかん!
ちゅなどん:あっはっは! 子供やな!
ちゃんぬ:負けませんけどね。
※1:取材は東京シクロクロスの日に行なわれたのでした。
その後、この二人のレースの結果はーーー最終周回まで前後入れ替わりながらのデッドヒートを繰り返し、ゴール直前、フライオーバーを駆け下りた勢いを使い最後の舗装区間で先行するマリちゃんをスプリントで差したちゃんぬ。とっても白熱していましたよ。見てたわたしも応援に熱が入りました。よかったね。ちゃんぬ、大阪に帰れるね(笑)。ゴールした瞬間の二人の笑顔は最高でした。
(後半へつづく)
(写真/編集部)
著者プロフィール
ちゅなどんちゅなどん
自転車好きが高じて一時期飽きるほど自転車に乗り、とうとう自転車に"乗る理由"がなくなってハンドメイドサイクルキャップを制作販売、自走納品する『自作自演型サイクリスト』 その傍ら、あるときはサイクリングイベント会社で、あるときは自ら企画するイベントでアテンドライドしています。持ち味はよく通る声と年の功からにじみ出る安定感。 ハマっ子歴19年。関西弁ネイティブ。