2017年11月07日
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 5-3)違和感なし!快適乗車で生涯サイクリストに!
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第5章:ゴキゲン! 「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!
5-3) 違和感なし!快適乗車で生涯サイクリストに!
メタボ対策や生活習慣病の予防、ダイエットやシェイプアップに自転車は最適である。
しかし、少し乗っただけでは効果は期待できない。できれば週に3~4回、平日は無理なら毎週土日や休日にコンスタントに乗り続ければ、数カ月で効果が実感できるだろう。長年続ければ健康を維持しやすくなり、医療費や交通費も削減できて環境や社会への貢献にもつながる。そしていつまでも楽しめる生涯の趣味として、人生を充実させてくれるだろう。
<いつまでも乗り続ける秘訣>
自転車の楽しみは、自分で無限大に創造していけることは、「第2章:ハマるとヤバい?自転車の魅力!」にていろいろと述べさせていただいた。
一方、いつまでも末長く自転車を楽しみ続けるには、楽しみの源流とも言える初めて自転車に乗れた子どもの頃の感動と喜びを忘れずに、ちょっとワクワクしながら乗り続けるのがポイントかもしれない。
スポーツバイクを新たに購入する場合、投資に見合った効果を得るためにずっと継続できるかどうかという自信を持てずに、心配になって躊躇するケースもあるだろう。
健康やダイエット、ジテツウや趣味を謳歌するなど明確な目的があって、その実現のために強い意志があれば問題ないが、意気込みはあったものの何カ月で続かなくなったり、それこそ三日坊主で終わってしまう人もいる。
強い目的達成意識が持てなくても、気軽に趣くままにちょっとワクワクする楽しみがあれば無理なく続けることができるのである。
<ちょっとワクワクする楽しみ>
目的が明確なら、それに向かって一歩ずつ進んでいくのはワクワクした喜びがあるだろう。
しかし、「3カ月で5kg体重を絞る」といった高い目標を掲げると、その達成に必死になって苦しむことにもなりかねない。
例えば、「いろんな風景や街の情景をできるだけ楽しむ」といった目的ならば、ゆるーい感じで続けられるだろう。「先日つぼみだった花が今日は可憐に咲いていた」といったちょっとした発見でも、ワクワク感や小さな目的を達成した喜びがあるかもしれない。
夏の暑い日に、ちょっと緑の多い道へ出ると体感温度がこんなにも違うのだと気がつくこともある。季節の移り変わりや人々の営み、街角のお店のディスプレイの変化など、些細なことにも発見と喜びのチャンスがころがっているのだ。
筆者は40年以上自転車に乗り続けているが、今でも日々のジテツウなどで小さな発見に喜びを見出し続けている。
<スピードで得られる快感>
スピードを出すことで楽しみを感じるのは人間の本能のひとつでもあるといわれている。自転車で徐々に速度を上げて、スピードに乗ってきたと思える時は、何か気持ちよく感じてしまう。風を感じ景色がどんどん流れてスピードを感じると、脳からドーパミンが分泌され快感を覚えるのである。ドーパミンは神経伝達物質の一つで神経細胞を活性化させる。さらに快感を覚える事でストレスの発散やリラックス効果を得ることもできる。
人それぞれに快感が得られる心地良いスピードは異なるが、風を切って軽快に走る気持ち良さは、サイクリングの楽しみの源流でもある。
いくつになっても、体力が落ちてきても、スピードで得られる心地良い快感は自転車を続ける力のひとつになるだろう。もちろん安全確保やルール遵守が最優先であるのは言うまでもなく、スピードの出し過ぎはご法度である。
<お尻の痛みは快適乗車の大敵>
楽しみながら自転車に乗り続けても、フィジカルに快適でなければ乗るのが億劫になりかねない。
スポーツバイクを始めた人が肉体的に最初に違和感を覚えるのは、お尻の痛みの場合が一番多い。お尻が痛くなるととくに休日などの長時間のライドが苦痛になってしまう。
お尻の痛みには様々な原因が考えられるが、サドルが合っていない場合やポジションがフィットしていない場合、ウエアそのものや着用の仕方などに原因があることもあり、ケースによっては、簡単には対処できないこともある。人によってはやっかいで悩ましい問題なのである。
お尻の痛み予防と対策については、後日に第5章の第5項「予防する!身体のトラブル」にて詳しく述べさせていただきたく思うが、ビギナーにちょっとしたアドバイスをしたい。
まずは、厚いパッドのあるレーサーパンツの着用である。ちょっとした痛みならこれで解消できるかもしれない。毎日のジテツウでもレーサーパンツの着用を習慣づけることをおすすめする。
また、下着のパンツを履いた上からレーサーパンツを履くのは間違いである。ノーパンで着用しなければパッドと下着が撚れて痛みの原因になる。ビギナーや女性には抵抗があるかもしれないが、必ず素肌に直接パッドが当たるようにレーサーパンツを着用しよう。
乗車中の痛みへの応急処置としては、サドルへの荷重を少なくするため、サドルを少し高く、ハンドルを低くして体重を分散する。さらにペダルの上に重心を持ってくることで、お尻への負荷を少なくする。あくまで緊急対策だが少しはラクになる。
<違和感の無いポジショニング>
ロードバイクのポジショニングは、とくにビギナーの方は大きな前傾姿勢に慣れず、きっちりとしたフォームが取れていない場合がある。体重をサドルとハンドルとペダルに上手く分散できなかったり余分な力がかかったりして、お尻の痛みや腰痛、膝痛や肩コリなどが起こる原因となる。
ビギナーには、胴角度を大きくとって前傾を弱めたアップライトな姿勢が楽にポジショニングしやすく適している。胴角度が45度以上あれば首に負担をかけずに前方を見ることができ、快適になる。
違和感の無いポジションは自分でいろいろと試しながら創っていく。体調や外部環境のコンディション、走るコースなどに応じ微調整をしながらベストポジションを決めていくのだ。
ポジショニングの詳しいノウハウについては、第3章の第1項「ビシッと決める、乗車ポジションとフォームhttps://funride.jp/serialization/jitensyalife16/ 」をご参照頂きたい。
自転車は細かなセッティングが可能。微調整して、ベストポジションを探そう
<ロコモを予防する>
僭越ながら、筆者は生涯サイクリストを目指している。この素晴らしい生き甲斐をずっと続けたい思いは強く、また楽しみ続けることが生涯サイクリストへの確実なステップとなる。
その障害のひとつとなるのは、生活習慣病やロコモ(ロコモティブシンドローム)であるが、自転車は楽しみながらそれらの予防ができる。
ロコモとは運動器症候群のことで、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、もしくは複数に障害が起き、歩行や日常生活に何らかの障害をきたしている状態のことをいう。
年齢とともに下半身の筋力が衰え、立つ、歩くといった動作が徐々にできなくなっていくことも典型的なロコモである。若い頃から自転車に乗り続けていれば、下半身も自然と鍛えられ、ロコモ予防には効果的である。
自転車に乗り続ければ年齢に関係なくロコモ対策になる。予防には筋肉を維持し更に増加できればより効果が大きい。言うまでも無く自転車は全身運動であり、継続することで筋肉を維持増強することができ、楽しみながらロコモ予防ができるのである。
<腸腰筋を鍛える>
下半身が衰えると、歩行時につまずくなど転倒しやすくなる。年をとると転倒による骨折や怪我などで寝たきりになる事も多いのだ。
その予防には腸腰筋(ちょうようきん)の衰えを抑えて、転倒しにくくすることが有効である。腸腰筋とは背骨の下部(腰椎)から骨盤をまたいで太ももの骨(大腿骨)の付け根につながる脚を引き上げる筋肉で、上半身を支えて姿勢バランスをとり、脚を大きく持ち上げる働きをしている。しかし歩行やジョッギングではあまり使われず鍛えにくい。
ペダルを踏む時には主に太ももの筋肉である大腿四頭筋やハムストリングスを使うが、反対の脚を持ち上げる動作で腸腰筋が積極的に使われる。
ペダリングで腸腰筋を鍛えることにより、転倒しにくくなり、寝たきり予防にもなるのである。
また、体幹が弱ってくるとカラダのバランスを取れなくなって転びやすくなるが、自転車では体幹、いわゆるインナーマッスルが鍛えられる。体幹がしっかりしていると自然と姿勢がよくなり、スタイルもシャキッとして若々しく見えるようになってくるのだ。
<脳と神経を活性化する>
自転車は倒れないようにバランスをとる全身運動であり、安全確保のために脳も活性化するため、老化防止効果がある。
とくに街中では、危険を回避するため五感をフルに働かせ、クルマや歩行者、障害物などとの位置関係を把握してそれぞれの動きを予測し、周囲の安全を確認しつつ走行せねばならない。乗車バランスを取りながら瞬時の認知と判断に基づくハンドリングやスピードコントロールが求められることは、脳や神経細胞のフル活用が必要であり、その活性化によって老化が抑制されるのである。
神経細胞の強化は老化防止に有効だが、自転車による運動は細胞を強化・維持する方法の一つとなる。自転車に乗って筋肉を動かすことも、身体全体の運動をコントロールすることも、脳が活性化し刺激を与えることとなり、老化やボケの予防になる。
<老化は足から>
老化は足からとも言われるが、自転車は脚力がメンテナンスされるためその低下を防ぐことは言うまでもない。
また、ロコモは膝からくることもある。ジョッギングでは膝や腰への負担が大きく、それらを痛めることもあるが、車上で回転運動をする自転車ではそのリスクはずっと少なくなる。
膝への負荷が大きいと、膝の老化も早まり変形性膝関節症になりやすくなる。自転車でのペダリングは膝を伸ばす筋肉をつけることができ、その予防と治療にもなるのである。
<自転車は国家財政の救世主!>
厚生労働省の公表では平成27年度の国民医療費は42兆円だった。そのうち16兆円が税金で賄われ、残りは企業や個人の保険料と患者負担である。国の税収総額が50数兆円しかないなか、消費税や所得税の税収とほぼ同額がそっくりそのまま医療費に使われている。患者負担や保険料も増えており、税金以外の我々の負担も膨らみ続けている。
さらに高齢者人口の増化に伴い、医療費はドンドン増えており1000兆円以上ある国の借金(国民1人あたり約1000万円!)はますます膨れ上がって、国家財政は瀕死の状態なのである!?
厚生労働省の試算によると、メタボになると健康な人に比べて年間8~12万円程度も医療費が増えるという。
一方、㈱シマノが従業員を対象に2008年から2011年にかけておこなった通勤形態別の医療費のデータによると、自転車通勤者はクルマや電車などで通勤する人に比べて、2万円程度医療費が少なかったという。もちろんメタボ者と健常者との比較ではなく、一般の従業員の通勤形態別の比較である。
ひとりでも多くの人が自転車を始め、楽しくいつまでも乗り続けることで、医療費は間違いなく減少していく。
自分の健康のためだけでなく、家族や企業、そして国家のためにも自転車に乗り続け、さらにひとりでも多くの方々に自転車を薦め、より多くの皆様が心身ともに健康になればと願っている。
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は11月21日(火)に公開予定です。お楽しみに!)
(写真/本人)
第5章:ゴキゲン!「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!
3)違和感なし!快適乗車で生涯サイクリストに!
4)カッコよく快適に!レイヤード術
5)予防する!身体のトラブル
6)カラダの異常!どうする!?
7)サイクリストの義務!自転車の健康管理
8)パンク!!! スマートな対処はカッコイイ
9)センシティブ!ディレーラー調整のコツ
10)命を預ける!?ブレーキのメンテナンス
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。