2020年08月10日
【日本縦断ギネスレコーズチャレンジ】Day5 福井県越前市〜青森県青森市 401km 奇跡
奇跡は起こすものなのだろう
昨日のDay4はスーパーエンデュランスの洗礼を受け、打ちのめされた1日といっても過言ではない。
この5日間で走ること以外に注力するとしたら、食べること、休むこと。
全力で走ったが、この2つにおいて徹底することができなかった。
Day1ではエネルギーの枯渇を恐れるがゆえに、摂取過多に内臓が悲鳴をあげる
Day2はルートのロストで2時間のディレイ
Day3はディレイを埋めきることができず70kmのビハインド
Day4はしわ寄せの解消のためにキャパ以上のロングライドを決行
そして、しわ寄せはすべて解消することなく、負債はDay5に重くのしかかり走行距離は40kmプラスされ、401kmとなり、さらにフェリーの時間に間に合うように走行することになる。
満身創痍。
さらに大雨予報が発令されるなど、スタート前から完全に叩きのめされていた。ダメだとわかっていながら走るのか。
雨雲の動きを分析し、9時から10時の間でスタートすることを決める。雨脚が強ければ、翌日に持ち越すというプランすら持ち上がったほど、高岡の状況は芳しくないと思われていた。
すこし時間を遡るとDay4は午前3時に終了しており、ミーティングを行わず床についた高岡。満足にコミュニケーションを取らず翌朝を迎えてしまった。
迎えた朝、スタートをディレイしたことで、むしろ睡眠時間は多く取れた。
肩の張りや足の疲労は色濃いものの高岡の表情に中止するという考えは一切感じられない。
この大雨は広い範囲で激しい雨をもたらした。そして強烈な南風が吹いた。この風に乗って一気に北上を開始する高岡。最初の2時間は時速32km以上という、4日間に亘り計1600kmを走行していたとは思えない快走だった。
睡眠による回復と、さらに食事面においても、その時の嗜好を刺激するものを積極的に摂取したことで、食欲はより刺激されたようだった。1日吹いた南風に助けられ勢いのあるペースを保って青森に午前2時45分に到着。前半の200kmを7時間半、後半の200kmを8時間弱という鬼気迫る走りを見せた。
スムーズに駒を進められるコースレイアウトも語っておく必要があるだろう。
胎内市から青森までのコースはアップダウンは断続的にあるものの、信号機は少なく道幅も広い。車間も十分に取れるので走りやすかったに違いない。
各地に大雨をもたらした低気圧を神風と呼ぶにはふさわしくないかもしれないが、少なくともギネスレコードチャレンジのパーティにとっては恵の風であった。
スタート数時間前までは考えられないことが起きた。いくつもの条件が重なり、不可能と思われた
ミッションを完遂した。
高岡本人の能力はもちろん、それを引き出すための小さな工夫と天候によって救われた1日となった。
しかしながら、安堵するのはまだはやい。函館入りのフェリーは3便遅らせ、北海道1日目のスケジュールは大幅に修正する必要がある。
しかし2日間に渡るビッグライドをこなした高岡なら、という期待を寄せてしまう。
北海道ではどのようなストーリーが展開されるのだろうか。
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得