2020年02月14日
【第17回Mt.富士ヒルクライムに向けて】第16回選抜クラス女子優勝 榎本美帆さんインタビュー(後編)
熱心に競技に打ち込むようになった榎本さん。その熱意と努力で富士ヒルで頂点に輝いた。しかしその後、競技活動の方向性を大きく変える出来事が起こる。前編はこちら
レベルの揃った女子選手との競り合いが楽しい富士ヒル選抜クラス
ーーー昨年の富士ヒルはどんなレースでしたか?
当日はすごい雨だったということもあって、序盤は誰もアタックするような動きもなく10人くらいの集団でまとまっていました。
そうしているうちに増田菜穂子さん(総合順位2位)が、後ろから追いついて来た集団に飛び乗ったのが見えたので、私も乗らなきゃ! と動きました。3位に入った佐野歩さんも追走し3人に。この3人の勝負になるな、っていうのは早い時点で感じていましたね。
中盤に2人が遅れて、私ひとりになった後は坦々と走り、ときどき脚の合う集団が来たらそこに乗って、を繰り返していました。
終盤、増田さんが集団に乗って追いついてこられたので、そこからは2人で回しながらゴール近くまでいき、最後の局面でスプリントで引き離そうという作戦でいくことに決めて、自分のタイミングで仕掛けてゴールしました。
計算どおりだったと言いたいところなんですが、実は雨で視界が悪く、ちょっとした勘違いで早めに掛けてしまったんです。
でも、もう行くしかない、って、ロングスパート気味になってしまいました。キツかったですね(笑)。
女性って、一般的なヒルクライムレースだと男性と同時スタートになってしまい、どうしても“個々の戦い”みたいになることが多いのですが、富士ヒルの選抜クラスのようにレベルの揃った女子選手の層が厚いと、女子選手同士で競り合うシーンが生まれるので、とっても楽しいんです。
Photo:小野口健太
もっと強くなるために!チームHigh Ambition2020 jpへ
ーーー今年から所属されているチームHigh Ambition 2020 jpへの加入はどんなきっかけでしたか?
話は去年(2019年)のジャパンカップに遡りますが、私、勝つ気で出走していたんです。ところが、このHigh Ambitionの海外選手たちに文字通りボッコボコ(笑)にされまして…
あの時、海外選手の強さってすごいな、と実感したんです。
2019年ジャパンカップ女子 Photo:山本健一
私もあんな風に強くなりたいと思いました。すぐにチーム代表のところに「チームに入れてください! 強くなりたいし、チームにも貢献できると思います!」とフェイスブックのメッセンジャーでコンタクトしたんです。ちょうどマネル監督が来日中ということもあって、走りを見てもらう機会にも恵まれて加入が決まりました。今はまだアカデミーの生徒という扱いですが、エリートチームに昇格出来るよう頑張ります。
ですから今年からの活動はロードレースメインになりますね。日本国内だと女子はレースも少ないし距離も短いですから、海外のレースに出たくて加入を希望したということもあるんです。
私、どうしてレースが好きなんだろうって考えることがあるんです。
強い人と走るのがとにかく好きで、きついんですけど、ワクワクする。
周りの強さから自分の強さが引き出されていくこと。強い人と走るには自分も強くなければならないし、そのために強くなりたい。
あと全日本選手権の優勝を目指します。また海外レースも走ってUCIポイントも取っていきたい。
また、それに向けたコーチやトレーナーとの出会いはこれからですが、より上を目指していくために追求していきたいと考えています。
今年の富士ヒル、狙うは歴代記録の更新!
ーーー次の富士ヒルに向けての抱負をお聞かせください
連覇はもちろん狙いますし、自身のタイム更新もあたりまえにしたいし、魅せるレースをしたいです。
どのような形になるかはまだわかりませんが、見せ場を作りたい、去年とは違った感じにしたい、というのがテーマです。
あと、金子広美さんがもつ女子の歴代記録を破りたい(1時間7分45秒)。あと3分短縮する必要があるのですが、十分に可能だと思っています。
Photo:小野口健太
ーーーインタビュー冒頭で、まさか自分自身が自転車に乗るとは思っていなかった、と話していましたが、女性として、日焼けや髪が傷むこと、などを挙げていらっしゃいましたが、どっぷり自転車生活となった今、そのあたりいかがですか?
今はもう自転車がない人生は考えられないですね!
肌に関しては、日焼け止めくらいは塗りますが、すっかり気にしなくなりました(笑)。
それよりも自転車の楽しさのほうが優位になってしまいました。
実はもともと運動経験はゼロだったんです。運動は大っ嫌いで、学生の頃は体育の授業を毎度どうサボるか考えてました。
そんなわたしが30歳をすぎて始めた自転車でここまで来られました。やる気さえあれば! 年齢とか環境を言い訳にせず、興味があったら、まずやってみようよ! と女性のみなさんに呼びかけたいです。
この挑戦で私がどこまでいけるのかなっていうところ、私自身も興味がありますし、見てくださる方の勇気になれればいいなと思っています。
一大ムーブメントを起こした「弱虫ペダル」。この物語の影響を受け榎本美帆さんという一人の女性サイクリストが誕生した。
最後にひとこと、このようにおっしゃってました。「この先機会があれば、弱虫ペダルのおかげでここまで来られたってこと、渡辺航先生に直接お礼の気持ちを伝えたいです」
関連URL:Mt.富士ヒルクライム https://www.fujihc.jp/
前編:https://funride.jp/?p=38433
High Ambition2020 jp:https://www.facebook.com/HighAmbition2020jp/
写真:小野口健太、山本健一
取材協力:大磯クリテリウム実行委員会、株式会社ウォークライド
著者プロフィール
ちゅなどんちゅなどん
自転車好きが高じて一時期飽きるほど自転車に乗り、とうとう自転車に"乗る理由"がなくなってハンドメイドサイクルキャップを制作販売、自走納品する『自作自演型サイクリスト』 その傍ら、あるときはサイクリングイベント会社で、あるときは自ら企画するイベントでアテンドライドしています。持ち味はよく通る声と年の功からにじみ出る安定感。 ハマっ子歴19年。関西弁ネイティブ。