2015年12月28日
バラ♥サイ VOL.1(後編)福永脩子さん
ライドすることに疲れてしまったころ、心機一転RGR(現在:Rapha Prestige)に出るために女性サイクリストを集めることになった。集める中で色々な想いが交錯して……さて、その後は?
女性ばかりのライドが視野を広げるきっかけに
つぼちゃん:それでちょうど阿蘇小国(おぐに)で開催されることになっていたRGRに出るためのチームを作ったんです。
ちゅなどん:女性ばかり5名、すぐ集められた?
つぼちゃん:最初は主旨を勘違いというか、わかってなくて、とにかく“速く走れる人”を集めようと。5人のうち2人、九州の有力実業団チームに所属している“速く走れる女性”に声をかけちゃってたんです。でも、彼女たちは所属するチームの意向で参加NGってことになっちゃって。そこからゆっくりでもいいから完走する、ってことでそれこそ声をかけまくった。最後のひとりは直前2週間でみつかって、本番前日に「はじめまして」のメンバーもいたくらいだったんです。
ちゅなどん:うんうん……(同じ苦労をしているだけに)。女性を5人集めるのってほんと大変だよね。じゃあ、つぼちゃんが女性ばかりで自転車乗るっていうのも、これがきっかけになったのかな?
つぼちゃん:VC福岡のチームにも女性はいましたけど、練習は男女混走。これまで女性ばっかりで走ることって本当になくって。女の子ばっかりでのんびり走るのって好きじゃなかったんです。その当時は。
ちゅなどん:キャッキャ♪、うふふ~、というよりもストイックな感じだったんだね。
つぼちゃん:なんていうかこう……視野が狭くなって一直線だったから。
ちゅなどん:確かにね、男性と走る時って、なにも考えなくても済むっていうのはあるよね。メカトラも気にしなくていいし、パンクしても周りが全部やってくれるし、道にも迷わないし。ただ、千切れないように集中して一生懸命ペダルを回していたらいいだけ、っていうか。
つぼちゃん:そうそう!
ちゅなどん:ペースがキツくても、千切れなければいい、みたいにね。でも女の人だけで走るって、そこが違うんだよね。
つぼちゃん:その当時は私もそこそこ走れていたので、その、のんびり走る女の人たちに対して、自分が偉そうにするのが嫌だったというか。歳下だし。周り(の女性)からは「あの速い大坪さん(みたいに速い人とは一緒に走れないわ~)」って言われるし。そういうのも嫌だった。でも、小国のRGRに女性ばかり5人のチームで出たときに「あぁこういう走り方もあるんだ!」って気づいた。速く走る、っていうだけじゃない価値観が芽生えたんですね。RGRのテーマとして、Raphaがよくいう“苦痛の先の栄光を掴め”みたいなものはありつつも、女性でそれをやると、そればっかりでもないというか。
ちゅなどん:女性ばかりが集まると、苦しさの中に楽しい要素が増えるんだよね。
つぼちゃん:そう、やってみるとすごく楽しかったんです。それでだんだんMOZU COFFEEにシフトしてー。こうなるとVC福岡の方が中途半端な気持ちになって、それが自分でも許せなくなってきたし、周りから言われる「なんでレース出ないの?」っていうのも辛くなってきたので、離れることにしたんです。でも、実業団で走っていたときはすごく集中して頑張れている自分が誇らしくもあったし楽しかった。なんでもそうなんですけど、最初にね、ガンッ! と頑張って、やり過ぎて燃え尽きる自分がいて。もっとこう……緩やかに、長く楽しんでいく。そういうのって大事だなって思うようになりましたね。
ちゅなどん:つぼちゃんが思う、こうなりたい自転車人はいる?そしてどういうマインドで取り組んでいれば、楽しく自転車をつづけることができると思う?
つぼちゃん:人との出会いや、つながりが一番強くて。あの人と一緒に走りたいから頑張るとか、どこかに行きたいとか、その場面ごとにキーマンに出会ったことが、ターニングポイントになっていると思います。自分自身がどう、っていうのはあまりないと思います(笑)。ラッキーだったんだろうなと。そして、結婚したときにMOZUのみんながアルバムを作ってくれたんですが、丹野さんのコメントが印象的で、“いまのままで大丈夫だよ”って。いま自分が良いと思った方向に進めば、いろんな人がいてくれるし、と。たしかにそうかな、って。だから続いているのかなと思います。私がいるのは周りの人のおかげですね!
週末の朝、一緒に早起きはするけど行き先は別々
(写真提供:丹野篤史)
ちゅなどん:自転車乗りのご主人と新婚さんのつぼちゃんですが、夫婦で一緒にライドしたりするの?
つぼちゃん:しないんですよ、それが。彼は練習でがっつり乗ってくるし、わたしは友達と走りに行くって感じで。彼も、私に対しては一緒に走るっていうよりは「がんばれ」って放置です。1年半くらいお付き合いして結婚しましたけど、この間2人きりで走ったのは一度だけ。ペースも合わないし。でも、一緒に走りたいとか、一緒に走って欲しいとも思わないんですよね。拠点は一緒だけどやることは別、っていうのが心地よい関係です。
ちゅなどん:機材の面倒とか自分でみてる?
つぼちゃん:わたしは機材がほんとうに疎くって。フロントの歯数、知らないんですよ。
ちゅなどん:わたしも! コンパクトっていうのと、リアの歯数(11-28Tとか)はわかるけど。
つぼちゃん:メンテナンスは最初ずっと自転車屋さんで行っていたんですけど、今は彼がほとんどいじれるんで、やってもらっていますね。私自身も疎いなりにさすがに3年ほど乗っていると、なにがどう悪いのかはわからなくても、なんだか調子が悪い、っていうのはわかるんで「ちょっとみて」って感じで。最初の頃ってまったくわかんなかったですよね。チェーンがきゅるきゅるとしてまっていても気にせず乗ってしまってて。それでも3台目の自転車に乗り継いだときに、カーボンフレームと電動コンポーネントになって「これは良いものだ」っていうくらいには善し悪しがわかるようになった(笑)。
ちゅなどん:機材のことはわからなくても自転車には乗れる! ところで洗車は自分でやっているの?
つぼちゃん:ひとりだった頃はちょっと拭くくらいはしてましたけど……。今はもう彼が全部やってくれています。
ちゅなどん:汚れに気づくのも彼の方? つぼちゃんから『自転車洗ってー』って言うの?
つぼちゃん:言わないですね……。「これちょっと汚くない~?」なんてブツブツ言われて、ウェットティッシュでちょっと拭いたりするんですけど、チェーンに溜まった汚れとかは何にもしないから。結局、彼が水洗いしてくれていますね。そのかわり、家事はちゃんとやろうかなと。
ちゅなどん:家事洗濯はわたしがするから洗車はお願いね♡って感じだね!(ロードバイクでグラベルライドするつぼちゃんのバイクの汚れ方は想像がつくだけに……。ご主人えらいぞ)。
そしてアメリカへ
ご主人の転勤に伴って年末にアメリカへ渡り、5年間の長期移住が決まっているつぼちゃん。持っている自転車は全部(ロードバイク、マウンテンバイク)すでに船便に乗せたそう。さて、これからのバイクライフはどんなものになる?
つぼちゃん:アメリカへ行ったら、また新しい走り方を見つけたい。グラベルグラインダーレースとか走ってみたいですね。100マイルのルートほとんどフラットグラベル(平坦の未舗装路)とか日本じゃ絶対ありえないじゃないですか。
ちゅなどん:…(やっぱりレースなの?)
つぼちゃん:それと語学の勉強をがんばって早く一緒に走れる友達を作りたいですね。近くに日系企業はいくつかあるそうなんですが、日系人は少なく、現地の人はあまり日本人に慣れてないエリアだと聞いています。一足先に現地入りしている彼はもう向こうで自転車に乗っていて、こんなルートあったよ、って教えてくれるんですが、それがまるで野辺山みたい……。山があるんですよ。ほかに転勤先として候補に上がっていた土地はどちらも山がなくって、彼が「ここがいいよ」って選んだのは唯一山があったところ。自転車乗るには良さそうです。彼は自転車のためにこの場所を選んだんだと思いますね。かつて近いところに住んでいたという矢野大介さん(Rapha Japan代表)には『マウンテンバイク買えばいいよ。近くに良いコースがあるから』とアドバイスされました。また、旦那さんは北極圏に走って行ったり、カナダ横断もしているので、アメリカではキャンプライドとか自転車旅行をしたいです。元々私は連休にはパニアバッグつけて自転車旅したり、マップをじーっと見ながらいろんな道を探したり、行ったことのない場所を探すのが好きだから、そうやって見つけた場所にお友達を連れて行くのも楽しいな、って最近は思っています。アメリカに来たら、うちに泊まってもらって。
ちゅなどん:民泊つぼちゃん、おかみさんだねー。これまでもつぼちゃんは楽しそうなライドの様子の写真をSNSで発信してきたけど、これからアメリカでも続けていくのかな?もし良ければアカウントを読者の皆様にシェアさせてください。見ている人がね、楽しそう! 今度の旅行は自転車を持ってアメリカに行ってみよう、ってなるかもしれないよ。
つぼちゃん:もちろんどうぞ!
ちゅなどん:今回はありがとう!
つぼちゃんのInstagramアカウントは @tubutubutubo です。みなさん、ぜひフォローして彼女のアメリカでのライドライフをチェックしてくださいね。 アメリカで元気に走っている様子を楽しみにしています! そしてちゅなどんもいつかアメリカへ自転車を持っていって、つぼちゃんとライドしたいです。そのときはよろしくね!
著者プロフィール
ちゅなどんちゅなどん
自転車好きが高じて一時期飽きるほど自転車に乗り、とうとう自転車に"乗る理由"がなくなってハンドメイドサイクルキャップを制作販売、自走納品する『自作自演型サイクリスト』 その傍ら、あるときはサイクリングイベント会社で、あるときは自ら企画するイベントでアテンドライドしています。持ち味はよく通る声と年の功からにじみ出る安定感。 ハマっ子歴19年。関西弁ネイティブ。