記事ARTICLE

2019年02月04日

【Mt.富士ヒルクライムにむけて】走行編/長いヒルクライムでペースを保つ走り方

短い上りなら勢いでなんとか上り切ってしまうこともできるけど、長い上りの場合は、力のマネジメントが必要。
また、普段からトレーニングを積み、走り慣れている人でも、いざヒルクライムイベント本番となると、レース独特の雰囲気にのまれてしまうことがある。
「いつも走っているときと息苦しさが違うと感じたら、それは周囲の流れにつられてハイペースで走っていることが多い」。元プロロード選手で、チームの監督経験が豊富な藤野さんは、走り方のポイントをこう話す。
「スタート直後は元気なので平気かもしれませんが、オーバーペースが続くと無理がたたって、気づかないうちにフォームが乱れ、ペースも落ちてきます。最大心拍数がわかっている方は、まずは最大心拍数の80%を超えない範囲に心拍数をセーブすることを心がけましょう。その程度の負荷でしたらペースが長続きします」
最近のヒルクライムイベントは事前にタイム申告することが多く、同じグループの人は脚力が近い人ばかり。とはいえ、そんな中でも序盤はハイペースになりがち。ヒルクライムレースの多くは坂を1~2時間かけて上ってやっとゴールに到達するのだから、全体を客観的に見て走りたい。それに、レース中は激坂区間でスピードが落ちるが、それもあまり気にしないこと。

1.フォームを崩さないように

レース中、上体を体幹で支える意識が希薄になると、ハンドルに覆いかぶさるように乗ってしまうことが多い(写真BAD)。「こうなると股関節の可動域が狭くなって脚が上げにくく、上死点付近のペダルの通過がスムーズにいきません。ペダリングの効率が落ちてしまっているので、上体を起こしたフォームに戻しましょう」

good
上体を起こし気味にすると脚の上げ下げが容易で、胸が開くため呼吸もしやすい。勾配が急なときはサドルの着座位置を前に。

bad
身体が前につぶれると、胴体と脚の角度が詰まってペダリングしにくい。疲れたときのほか、がんばって走るときにもなりがち。

 

2.アンクリングが踏力をロスする

ペダルを3時の位置でピンポイントに踏もうとすると、その瞬発的な大きな踏力によって、かかとがアンクリング(かかとが下がること)を起こして力を逃がしている場合がある。そういう人は、ペダルが上死点を過ぎてから時計の針でいう3時までの間に力をジワッとかけるペダリングを心がけると、アンクリングを防止しやすい。

gdbd
GOOD/ペダリング中はペダル軸よりかかとが下がらないように。踏力をしっかりクランクに伝えよう。
BAD/かかとが下がると力が逃げ、下死点付近でペダルの回転が止まる無駄踏みの原因にもなる

クリート位置のセッティング
ADS_7078
クリート位置は、母指球か母指球のやや後ろ(かかと側)にペダル軸が位置するセッティングを。母指球より前方気味になると、軽いギヤでペダルを高回転させやすい反面、トルクをかけて走る上り坂でアンクリングが起きやすくなる。しかし、レース直前の変更は走りのフィーリングが異なるので避けたいところ。


 

激坂では体力の消費を抑える走りを

eve※図は例です。

「もしタイムの遅れをリカバリーしたいなら、激坂より緩やかな坂で行います。緩やかな坂のほうが上げた強度に対してスピードの上がりも大きく、タイムを効率良く縮めることができます」
たとえば平地を25㎞/h で走っていたとき、勾配5%の坂ではだいたい20㎞/h ぐらいまで時速ダウンし、そこで出力を10% あげると22㎞/h に。しかし、勾配が10%と急になると10㎞ /hほどまで低下し、そこから出力を10% あげてもスピードは11㎞/hになったとする。
ということが、上り坂ではしばしば起こる。同じがんばりでも1㎞/h のスピード差=タイム差がでる。スピードを上げるなら緩やかな坂のほうがお得。激坂でがんばるのは体力がもったいないのである。

坂では下に引っ張られる重力が働く。重力は勾配が大きくなるとより強くなるため、スピードを上げるには大きな力を必要とする。自身の出力を10%上げたとき、緩い坂と激坂では緩い坂のほうがスピードの上がり幅は高くなる。


ADS_7315A
【アドバイザー】藤野 智一さん◆なるしまフレンド神宮店 店長
元プロロードレーサーの藤野さんは全日本ロードレース選手権2連覇、バルセロナオリンピック個人ロード21位など輝かしい成績を誇る。現在は老舗プロショップの、なるしまフレンド神宮店の店長を務めている。
なるしまフレンド HP:http://www.nalsimafrend.jp/
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3−35−2

TEL.03-3405-9614

関連記事

記事の文字サイズを変更する

記事をシェアする