2020年04月14日
【Zwift】Haute Route Watopia インドアでできる至高の挑戦
このご時世、楽しみといえばZwiftでの仲間とのワークアウトやイベントだ。このコロナ禍で、平日のインドアライド時間は増える一方で、サイクリストのみなさんにおいては過去最高水準ともいえるローラー稼働率でしょう。そしてローラーに乗る楽しみといえばZwiftやELITE my E-Trainingなどの連動するアプリの恩恵につきるというもの。そんな折、Zwiftでチャレンジングなイベントが4月3日に立ち上がりました。
「HAUTE ROUTE WATOPIA」
ホビーサイクリスト向けのリアルイベントとしては、世界最難関ステージレースと言われる、えげつない獲得標高を誇る山岳レースがWATOPIAで再現された。
Haute Route(オートルート)はアルプス山脈、ピレネー山脈、ドロミテなど、言わずと知れたヒルクライムの名所はもちろん、世界を代表する誉れ高いサイクリングスポットで開催されるライドイベントで、その難易度は他のイベントとは一線を画しています。
というサイクリスト垂涎のステータスもさることながらヨーロッパのプロロードレースを追いかけていた若かりし頃、幾度と訪問した地を舞台に行われるレース。それを再現したとは面白そう。これは走っておきたいと思いエントリー。
Zwift経験史上もっともきつい楽しい3日間の始まり
週末にセットされた3ステージは、金曜日からお尻上がりに厳しさを増すプロフィールだ。イベント開始5日前に立ち上がったということもあって、コンディションを合わせる余裕もない。Zwiftざんまいのほぼレストしない状態で挑戦するのもまた一興、楽しみながら苦しもう。インドアなら誰にも咎められないし。
イベントは1日に数回立ち上がっていて、自分のペースで参加しやすい設定だ。
1日目はWatopia内のHilly KOM、Epic KOM、そしてVolcano KOMを登る、通称「スリーシス ターズ」をはらんだ屈強な山岳ルート。
参加者8000人超えというかつて体験したことがない状態で、どう表現して良いかわからないが、年末のアメ横とも、富士ヒルともいえないカオスなアバターの数。端末のスペックの不備を思わせるツィートも見られたがiPadproで運用しているぶんには快適にトライすることができている。
スタートアタックせずまったりと出走したこともあり、前の方の?1300位くらいから追い上げる形で、終始ペダルを踏み続けるタイムトライアル状態でレースを終える。無事1時間半ほどの全力走で爽快に燃え尽きる。これ、3日間耐えられるのか??
2日目は溶岩地帯から吹雪く山岳へ。超級山岳Alpe de Zwiftを攻める徹底したヒルクライム ルート(だった)。
起床してから足が重く階段の昇降がつらい。回復のため姑息に2ステージは24時間以上開けて深夜に開始。距離が短いとタカをくくっていたら、Alpe Du Zwiftフィニッシュだったとは。精神的に保てるかどうか自分に挑戦することにした。集団効果もある大集団で走るAlpeは壮観だった。スタートダッシュは成功したが、上りの中盤でどうしようもなく失速し、100人くらいに抜かれてゴール。が、しかし1日目のインパクトが大きかったためか、余力を残すようにフィニッシュすることができた。
3日目。距離は72.2km、獲得標高1333mとZwiftでも指折りの長距離かつ難度の高いルート。 獲得標高 は2日目を上回る。
この朝は“今日で終わる”と気分も軽い。獲得標高こそ最高値だが距離で考えればインパクトは半分、と気楽に捉えていたが、大いなる間違いだった。
参加者は5700人と、少々減るものの依然として多い。むしろ精鋭に絞られた? まあこれだけ多ければ劇的に失速しても孤独にならないね、という前向きな気分で走る。スタートの号砲が切られてダッシュ……したつもりが回らない。スピードが速く、周りも追走モードなのでずっと集団は一列棒状。もはや記憶も曖昧だ。リアルレースと同じく後ろにいるときついパターン。中盤くらいから、足の揃ったメンバーで少しずつ中切れを埋めてジャンプアップ。上りは自分のペースを刻むが、平坦はつねに出せるギリギリの高強度で引きずり回される。視野は狭くなり風切り音(扇風機の)だけが響き、酸欠と筋肉の痛みもあって時間の経過が遅い。距離を見ても一向に進まず「半分」までが長い。絶望しそうになるが、そこでやめなかったのは小さなプライドなんだろうか。ただ道に迷うこともないし、失速して待たせることもないと、余計な心配がないぶん走りに集中できるか。結局フィニッシュまで走り続けられた。フィニッシュラインを切るまでほぼ2時間全身全霊でペダルを回しゴールし、まさに魂が抜けた。久しぶりの達成感で清々しい。
第1ステージ 50.2km / 獲得標高910m 654位/8168人
第2ステージ 42.3km / 獲得標高1193m 397位/6081人
第3ステージ 74.1km / 獲得標高1365m 282位/5760人
リザルトは平凡だが誉れだ。Zwiftに物申すならば、突如として面白いイベントを立ち上げるのはやめていただきたい(笑)。心と体の準備が必要である…。かといって構える必要もないし、気軽にエントリーできるのは心理的にも良い。
日本のZwifterが総合2位に!
さて、筆者が完走目指して苦しんでいる中、なんと日本のZwifterが総合2位という輝かしい結果を残しました。Zwift National Championshipsでは2018年2位、2019年6位(公式)のズイフトアカウント名 T.IKD[ZWC] こと池田隆人さんです。2019年の富士ヒルの選抜クラスにも参加していただいていて、昨年は選抜13位、集団から勇気あるエスケープをし、レースを動かしたヒルクライマーなのである。
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著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得