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2024年06月28日

オールインワン、「トレック・マドンGEN8」新登場! エアロと軽さを融合した究極のレースバイク

2024年6月28日、トレックは新型ロードバイク、「マドンGEN8」を発表した。同ブランドのフラッグシップとして第8世代となるマドンは、エアロと軽量を高次元で両立した究極のレースバイクとなった。

「6.8㎏のマドンが欲しい」から開発がスタート

マドンGEN8の開発を統括したロードバイク&プロジェクトワン・ディレクター、ジョーダン・ロージン氏はリドル・トレックの男女選手との対話を通して、新型の方向性を定めたという。

「完璧なレースバイクは何かと選手たちに聞いたとき、『UCI規則ギリギリの6.8㎏の軽量なマドンが欲しい』、『ツール・ド・フランスやパリ~ルーベのような様々なレースで勝てるバイクが欲しい』という要望がありました」

マドンGEN8開発の指揮を執ったトレックのジョーダン・ロージン氏
  • OCLVカーボン 900シリーズを新たに採用
  • フレーム765g、フォーク370g
  • タイヤ幅は実測32mmまで対応
  • 空力性能ではマドンGEN7と同じ。エモンダより77秒速くなっている(200Wで1時間走行した場合)
  • 軽さはフレームセットでエモンダと同等の軽さ(マドンGEN7より320g軽量)
  • アイソフローはGEN7よりコンパクトに
  • 縦方向の振動吸収性がマドンGEN7より80%、エモンダよりも24%向上している
  • ハンドルバーはフレア形状で、ドロップ部よりも左右のブラケット幅が30mm狭い370mm

オールインワンの性能を追求

これまでトレックはエアロ性能を追求したマドン(GEN7)とヒルクライム用の軽量バイク、エモンダ(GEN3)をチームに供給し、選手やレースによって使い分けていた。

「選手たちもレースでエモンダかマドン、どちらかを選ばないといけなかったのがストレスだった。その結果、導いた答えがマドンGEN8。今までのマドンの空力性能とエモンダの軽量性能を融合したまったくの新型バイクです」(ロージン氏)

完成したマドンGEN8は、空力性能ではマドンGEN7と同じ速さで、エモンダより77秒速くなっている(200Wで1時間走行した場合)。一方、軽さはフレームセットでエモンダと同等の軽さで、マドンGEN7より320g軽量となっている。まさにマドンとエモンダの性能を融合し、いいとこどりした1台となった。

フレーム全体を見ると、マドンGEN7と比べるとダウンチューブ始め各チューブのボリュームが抑えられた形状。GEN7で特徴的だったシートポスト接合部付近の空洞、アイソフローは継続されるも、GEN7よりコンパクトになった。

※リドル・トレックカラーのマドンGEN8。マドンGEN7より各チューブが細くなり、軽快なイメージ

バイク全体で空力を考える「フルエアロフォイル」

開発にあたっては、シートステイの高さ、アイソフローの形状など、100以上のパターンのフレーム形状をシミュレーション。その中からプロトタイプ3モデルを、2022年12月にリドル・トレックの選手がテストした。剛性と乗り心地のバランスのとれた1台が最も好まれ、「今すぐこれでレースしたい」という声も上がったという。これらのテストを経て、最終的にベストのフレーム形状が導き出された。

マドンGEN8の開発には、新しいテクノロジーもいくつか導入されている。

素材は、従来のハイエンドに使われていた800シリーズOCLVカーボンより20%強度の高い900シリーズOCLVカーボンを新たに採用することで、結果的にカーボンの使用量を削減。さらにフレーム内側の成型技術を見直すことでも、カーボンの使用を最小限に抑えている。

フロントフォークは従来のツーピース構造からコラムまでシングルピース構造とすることで、軽量化に貢献している。この結果、無塗装でフレーム765g、フォーク370gに仕上がった。 なお、タイヤ幅は実測33mmまで対応している。

空力については、「フルエアロフォイル」と呼ばれる新たなコンセプトで設計。これまではトレック独自のKVF (カムテール バーチャル フォイル)のチューブ形状が特徴だったが、フルエアロフォイルはチューブ単体ではなくバイク全体でのエアロ性能に着目している。

前後輪とダウンチューブ、ボトル・ボトルケージ、シートチューブのトータルで、空気の流れを整えている

具体的には、前輪(フレームに近い後ろ側のリムとタイヤ)、ダウンチューブ、専用のRSLボトル+RSLボトルケージ、シートチューブ、後輪(前側のリムとタイヤ)をひとつの集合体として考え、空気の流れがスムーズになるようにデザインされている。

マドンGEN8のエアロ性能を最大限に発揮するのに欠かせない専用のRSLボトル+RSLボトルケージ。ボトルケージは通常の円柱形のボトルも装着できる

ステアリング周りもステム一体型エアロハンドルバーを新設計。ハンドルバーはフレア形状で、ドロップ部よりも左右のブラケット幅が30mm狭い370mmとし、ライダーが乗車した状態も想定してデザインされている。

ステム一体型のエアロハンドルバー、ブラケット部分の幅がフレアしたドロップ部分より30mm狭くなっている

マドンの特徴であるアイソフローも進化し、縦方向の振動吸収性がマドンGEN7より80%、エモンダよりも24%向上している。かつエモンダよりもエアロ性能に優れ。マドンGEN7のアイソフローよりも軽量化している。

前作マドンGEN7で話題を呼んだアイソフロー。マドンGEN8では、エアロ、軽量化、快適性の向上に貢献している

フレームのグレードはハイエンドのマドンGEN8 SLR、セカンドグレードのマドンGEN8 SLの2モデルを展開。

SLRは最新の900シリーズOCLVカーボンを使用し、ステム一体型ハンドルバー、専用のRSLボトル・RSLボトルケージが付属。好みのカラーリングやパーツ、サイズが選べるプロジェクトワンにも対応する。加えて、完成車(デュラエースDi2、アルテグラDi2、レッドAXS、フォースAXSの4仕様)とフレームセットでの販売となる。

マドンGEN8 SLR。開発責任者のロージン氏は、これを駆って富士ヒルに参戦した

SLは500シリーズOCLVカーボンをでSLRより250g重いが、それでもエモンダSLとの比較では175g軽量。ハンドルバーとステムは別構造で、ボトル・ボトルケージも付属しない。完成車のみの販売で電動(アルテグラDi2、105Di2)・機械式(105)に対応している。

機械式105を搭載したマドンGEN8 SLもラインナップ

これでトレックのレース系ロードバイクはマドンのみとなり、エモンダはマドンと統合される。エンデュランス系のドマーネは継続される。

マドンGEN8は、6月29日に開幕するツール・ド・フランスからリドル・トレックの選手たちによって、正式に実戦投入される。これに先駆けて6月2日から行われた前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネでも使用され、第1ステージでマッズ・ピーダスンがステージ優勝を挙げるなど、早くもそのポテンシャルを発揮している。


写真:小野口健太

関連URL:トレック・ジャパン
https://www.trekbikes.com/jp/ja_JP/

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