2019年08月09日
【TREK】2020年モデルNEW DOMANE SLRインプレッション+NEWアイテムレビュー
先日行われたトレックワールド2020では、多くの新製品が発表された。その中でも注目の第3世代ドマーネSLのレビュー&インプレッションをお届けしよう。加えて2020年のNEWアイテムをピックアップしてご紹介。
ドマーネ、マドン、エモンダのラインナップはディスクブレーキタイプが過半数を占める
トレックの2020年ロードバイクのラインナップは、ディスクブレーキモデル中心となり、占める割合は過半数を超えた。とくにトップモデルのSLRグレードはリムブレーキモデルを廃止することを発表し、話題となったのは記憶に新しい。
自転車を通じて安心安全、快適性コントロール性すべてを両立できる自転車の開発を行っているが、そういった観点からディスクブレーキは現状“ほぼ”デメリットがないと考えている。ディスクへ転換して資本を集中することで、今後フレームとコンポーネントはインテグラルデザインますます進化し、デメリットは消しこまれていくと予想しているという。
トレンドもめまぐるしく変わる。トレックが4年前に打ち立てたミッションは4kg台の自転車を作るということだった。当時は画期的であったがしかし、現在は軽量化にも様々な犠牲を伴っていることは明白である。
最新のバイクはコントロール性が高く、踏んだら進んで、なおかつ十分に軽い。トレックの場合は生涯保障もある。ここから数十g軽くすることに対する費用対効果は少なく、ユーザーメリットもないということを同社は主張している。ヒルクライムレースに賭す特化したサイクリストは話が別にはなるが、持って軽いよりも乗った軽さにフォーカスをする。ライドフィールに重点をおくということだ。
これは体感であって実に数値化しにくい部分でがあるが、思った通りオンザレールで走る。踏んだら進むといった要素を徹底的に取り込んでいく。
これが現在の開発の背景にあるという。なるほど、最新のドマーネSLRをみれば一目瞭然ではないか。
IMPRESSION
ドマーネSLR7
フレームのボリューム感はここまで来たか、というほど太い。クラシックなフォルムのロードバイクを引き合いに出すまでもなく、前作のドマーネを並べてみてもその、たくましいまでのフレーム形状は一目瞭然だ。それでも違和感を覚えないのは、エアロロードバイクのシルエットに見慣れているからだろう。NEWドマーネもエアロダイナミクスを意識した流線型のデザインを採用している。特にヘッド部分は、ひと昔前のエアロロードバイクよりも空力性能が高そうだ。
そしてホイール&タイヤのボリュームにも目をみはる。が、こちらもすんなりとその主張を受け入れることができるのも、理路整然としたデザインだからだろう。
グラベル用というが、ワイドリムのおかげで32Cタイヤがすっぽりと収まり、綺麗なシルエットとなっている。リアホイールのノッチの細かさはラチェット音で、その軽さを演出している。ノッチが細かいほどレスポンスがいいが、低〜中速域のグラベルではかなり有効な機構になるだろう。
その軽さ(抵抗の少なさ)も、足を止めた時に強く感じられた。減速を五感で意識したときラチェト音はよい判断材料になるが、このホイールの場合は、聴覚で感じる減速感とズレがあり、あたかもスピードが伸びたような印象になる。非常に抵抗が少ないことを感じさせてくれる。
お世辞にも軽いとは言えないホイールだが、オンロードならエアー圧を高めの6気圧程度に設定しても十分にグリップしてくれるし、じつに転がりやすくなる。低圧なら素晴らしい走破性を楽しめる。荒れた路面を選んで走りたくなる。
ドマーネはヘッド部分とシート集合部からトップチューブにかけてと、ISOスピードを2箇所に設置している。強めに加重をかければ、ヘッドにはわずかに動きが見られるが、走行中に激しく動くことはなく、上質なライドクオリティを保ったまま、パワーロスを発生させないのだ。
シートチューブのISOスピードはしなりの幅を中間程度に設置した。
サドルに加重を加えると、わずかなしなりを感じることができる。これも実に絶妙なバランスで、ペダリング中は柔らかいサドルのわずかな沈み込み程度の印象にとどめている。実際のサドルはしっかりとしたものが装着されていて、ペダリングに集中できるが、オーダーメードのソファに座っているように快適……というユニークな印象だ。
プレスフィット対応のねじ切り式のアダプター「T47BB」を新たに採用したのも、圧入式BB主流の潮目を変えるかもしれない。
エンデュランスロードとしての着目点としては、難しいところではあるが、加速性能もピュアロードバイクのそれらしく、反応は予想以上によい。すこぶる良いぞ!と言い放ちたいところだが、ここはマドンやエモンダの存在価値を揺るがしそうなので、あえて自重しておく。
近年のバイクはコンセプトがはっきりとしているにも関わらず、他のカテゴリ(エアロだったりオールラウンドだったり)の領域に迫るパフォーマンスを発揮している。総じてというレベルでの話なので、境界線が少しずつ消えてきていると感じざるをえない。閑話休題。
バイク重量は9kgに迫るが”持って軽いではなく乗って軽い”という代表格だろう。ロードバイクらしい最小限の構成パーツによってなしえる軽さ、という原則はドマーネSLRの機構を前にしてはあまり意味がないのかもしれない。
ともあれ、ドマーネSLRの頼もしい躯体から感じられる近未来感は、ロードバイクのマルチパーパスはここにあるのだろうか、と妙な説得力がある。
ダウンチューブのストレージエリア
フレーム内部にアクセスして、ストレージにしてしまうという斬新なアイデアを採用。これには脱帽。応力集中や漏水などの心配をしてしまうが、素人が考えうるトラブルなど対策済みだろう、と前向きな評価をしたい。フレームの下方に位置しているので、重心バランスが大きく偏ることもなく良好だ。
プロジェクトワンには“アート”なカラーが登場
ニューカラーとして「モルテンマーブル」「コスモス」が登場。
大理石のような深みのあるペイントで、日光の照らし方で、様々な表情を見せる、これまでにないもの
コスモスは、宇宙空間を表現したデザインで、非常に美しい。
パフォーマンスだけでなく、所有する喜びや価値はトレックだからこそ、といえる。
ドマーネSLRのバイクパッキング装備例。実にスタイリッシュで、走行しているシーンが目にうかぶ。
Domane SLR 9 eTap 価格:1,172,000円(税抜)
Domane SLR 9 価格:1,126,000円(税抜)
Domane SLR 7 eTap 価格:922,000円(税抜)
Domane SLR 7 価格:792,000円 〜 848,000円(税抜)
Domane SLR 6 価格:762,000円(税抜)
Domane SLR 6 ディスク 価格:540,000円(税抜)
Domane SLR 6 ディスク ウィメンズ 価格:540,000円(税抜)
NEWアイテム&ポイント紹介
ボントレガーのハイエンドロードシューズ、XXXロードがフルモデルチェンジ
IP1 Boa® ダイアルを2個採用。前足中央から側面を包み込むタンを備え土踏まずをサポート。かつ滑り止めを施したヒールはカップで強化され、ホールド感&フィット感が心地よい。
重量:261g(サイズ42)/カラー:White/価格:37,000円(税別)
エアロロードサドル“アイオロス”はトレンドのショートノーズサドル。リッチー・ポート選手をして、間違いなく最高のサドルという言葉を残す。3つのグレードを用意している。
Bontrager Aeolus プロ 価格:21,296円(税抜)
Bontrager Aeolus エリート 価格:12,963円(税抜)
Bontrager Aeolus コンプ 価格:7,870円(税抜)
自転車事故による高次脳機能障害の90%は、脳震盪や頭蓋内出血と言われている。このヘルメットに採用されている網素材のWAVECEL(ウェーブセル)は衝撃を受けた時に、ウェーブセルがスライドすることで、エネルギーを吸収することで脳へのダメージを抑える。
ウェーブセルを採用したヘルメットのラインナップも紹介された。一部は数量限定で発売される。
右上・右中/Bontrager XXX WaveCel アジアフィット ロードヘルメット 価格:31,481円(税抜)
右下/Bontrager Specter WaveCel ロードヘルメット 価格:19,444円(税抜)
左上/Bontrager Blaze WaveCel マウンテンバイクヘルメット価格:31,500円(税抜)
左下/Bontrager Charge WaveCel コミューターヘルメット 価格:21,200円(税抜)
超コスパモデルのマドンSL6ディスク
トップモデルと同じ機構を用いていながらもミドルグレードの価格帯でリリースされる。
ハンドル周りはレギュラータイプとなる
Madone SL 6 Disc 価格:530,000円(税抜)
問い合わせ:トレック・ジャパン
関連URL:https://www.trekbikes.com/jp/ja_JP/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得