2016年04月25日
TREK DOMANE SLR 【ニューモデル★インプレッション】
トレック ドマーネSLR【ニューモデル★インプレッション】
ドマーネのフルモデルチェンジは先日のニュースで紹介しているが、さっそくテストライドの機会を設けたので、その模様をお届けしよう。新型Domaneはパリ〜ルーベの難易度5に指定される<悪名高き>石畳のアランベール・フォレストや、ツール・ド・フランドルの上り坂で開発&テストを行なった。さらに100mにも及ぶこの路面のレプリカをウォータールー本社内に製作し、さらなる検証とテストを繰り返した。結果、他のいかなるレースバイクより振動エネルギーの減衰に優れる驚異のテクノロジーを3つ生み出すことに成功した。まず1つめはリアセクションに施された、アジャスタブルリアIsoスピードの調整式振動吸収テクノロジーだ。従来のドマーネと比べ、最大でリアの振動吸収性が14%向上している。
2つめはヘッドチューブにはフロントIsoスピードが搭載されたこと。ステアリングコラムを適度にしならせることで、フロント部の減衰特性を高め、振動吸収性は従来のドマーネに比べ10%向上している。
3つめのハンドルバーは、ボントレガー・IsoCoreハンドルバーである。高周波の振動をより確実に吸収するようOCLVカーボンのレイヤリングを調整し、標準装備のこれまでのカーボンハンドルバーと比べ20%高い振動吸収性を実現しているのだ。さて、その進化したドマーネはいったいどんなパフォーマンスをみせるのだろうか?
トレック ドマーネSLR6■フレーム:600シリーズ OCLVカーボン、フロントIsoスピード、アジャスタブル リア Isoスピード◆フォーク:ドマーネ フルカーボン6◆試乗車のパーツアッセンブル:シマノ アルテグラ(ボントレガー・スピードストップ ダイレクトマウントブレーキ)◆ホイール:ボントレガー・パラダイムコンプ チューブレスレディ◆タイヤ:ボントレガー・R3 700×28C◆ハンドル:ボントレガー・IsoCore VR-CF◆ステム:ボントレガー・RXL◆サドル:ボントレガー・アフィニティ エリート◆サイズ:50、52、54、56、58、60◆ 価格(税込):590,000円(シマノ・アルテグラ完成車)◆OTHERS ドマーネ SLR7/価格(税込):680,000円(シマノ・アルテグラDi2完成車)、ドマーネSLR6ディスク/価格(税込):640,000円(シマノ・アルテグラ完成車)
リアのタイヤクリアランスは、ドマーネSLRで28C幅まで対応、ドマーネSLRディスクでは32C幅までのタイヤを装着することができる。
アジャスタブル リアIsoスピード
調整可能となったIsoスピード。走り方や路面状況に応じて振動吸収量を微調整することができ、第一世代よりもより高い剛性と高い振動吸収性を両立している。部位の名称はこうだ。①シートマストチューブ ②Isoスピードテクノロジー ③空白空間 ④スライダー ⑤メインフレームのシートチューブ ⑥ボルトジョイント。と、これまでのエンデュランスバイクとは一線を隠す部品構成となる。
①のシートマスト部分と⑤のメインフレームとはこの②のIsoスピードを配したシート集合部、さらに下部のボトルケージ台座部分と兼ねて⑥のボルトジョイント部で固定する。
ボルトジョイントを緩めると④のスライダーを上下できる。このスライダーをもっとも高い位置にすると振動吸収性を抑えより高いフレームの剛性を感じることができる。最下部から中間で23%、最下部から最上部へ移動すると全体で31%変化するという。
スライダーをもっとも下げると第一世代よりも14%振動吸収性が向上する。ボルトジョイントの締め付けトルクは5Nmだ。
電動コンポーネント用バッテリーポートを収納する内蔵システムはダウンチューブに設けられる。空力に優れ、かつ使いやすい。
BB幅90mmのBB90を採用。
ブレーキは前後ともにボントレガーのダイレクトマウントブレーキを搭載している。
ハンドルバーは新型のIsoCoreハンドルバーだ。一見して普通のハンドルバーであるが……。
OCLVカーボンの連続したレイヤーによって標準的なカーボンハンドルバーよりも20%も振動を軽減できる。
Isoスピード フルカーボンフォークは従来のロード用フォークよりも7%高い振動吸収性を誇るという。
フロント部にもIsoテクノロジーが採用された。ステアリングコラムをヘッドチューブから分離させ回転できるようにしたことで、従来のロードバイクと比べて、振動吸収性を10%高めている。
エンド部分にはダボがみえる。加えて外からは見えないフェンダーマウントも装備している。
IMPRESSION
最新のマドンのほうが好み★菊地武洋
マドンのニューモデルが登場した段階で、次の話題が新型ドマーネになるのは誰しもわかっていた。しかし、2016年モデルのドマーネがライバルと比較して劣っている部分が多いとは思えず、ディスクブレーキに対応する以外、どのようなコンセプトを打ち出してくるのか楽しみにしてきた。機能の詳細は省くが、結果から言えば開発意図を守りつつ全体に磨き上げてきたという印象だ。新型の優れている点は、演出的な快適性を殺したことだろう。リア側の緩衝システム(ISOスピード)は調整可能となり、もっともハードな仕様で乗ったときがもっとも印象がよかった。フロント側の調整はできないが、不自然さがほとんどない。視覚から得られる路面状況と自転車を介して伝わってくる振動は異なるので最初は戸惑うが、すぐに慣れていつものように走れる。これは何気ないようで、たいしたものだと思う。僕はエンデュランスバイクの“快適性の押し売り”をしてくる感じが好きになれず、従来モデルのドマーネも実力は高く評価するが、欲しいと思ったことはない。今の今も最新のマドンのほうが好みである。とはいえ、実力はかなり拮抗しており、メンテナンス性までを含めて考えると、どちらが勝つかパッといえないほどだ。新車レビューではフレームだけに注目が集まりがちだが、ドマーネに採用されているハンドルやタイヤも見逃せない実力がありそうだ。いずれ機会を設けて、パーツメーカーとしての実力も検証してみたい。また、ディスクブレーキ版こそドマーネの本命だと思うので、こちらも試乗するのが楽しみだ。
エンデュランスバイクにとどめを刺すバイク◇山本健一
エンデュランスバイクやエアロロードのハイスペックさには舌を巻くが、やや仰々しいな、と思うこともある。ロードバイクのスタイルは装飾品をできる限り省いた機能美のみの乗り物だという認識があるからだ。フロント部とシート集合部にIsoスピードテクノロジーを搭載したことで、よりテクニカルな障壁が発生するだろう、どれほどボリュームアップしたのだろう、という懸念を抱いていたが、実物は至ってシンプルなスタイルにまとまっている。スライドを上下させるすき間の空間こそ気になるがアレルギー反応を誘発するほどでもない。むしろこの簡単な要素でこれほどまでの性能を生み出すことに感動すら覚える(簡単ではないだろうけど)。泥つまりは起きにくいとの説明がなされていたが、実際に汚れが詰まったとしても簡単に洗い落とせる構造だろう(下記コラムに解体写真あり)。ヘッド部のIsoテクノロジーは外観からは確認することができない。実際に乗ってみるとその動きはフォークのダイブするような感覚として伝わってくる。フォーク自体も前後(上下というべきか)にしなるようなイメージであるが、横方向の剛性はしっかりと保たれているのでコーナリングで腰が砕けるような感覚はなかった。恐るべきはリアのIsoテクノロジーの作動感だ。もっともしなるセッティングとしならないセッティングではまったく違う乗り物になる。しかしながら加速フィールに大きな差がないのは、本体のシートチューブやBB周りの剛性が高いことが起因している。振動減衰機能をもたせつつ(さらに調整機能も付加し)加速局面におけるロスを軽減しているのが、新型ドマーネの素晴らしい点だと感じる。エモンダやマドンに反応の良さは譲るものの、標準的なレベルにまでは到達している。トレックのコンセプトでもあるチューズ ユア ウェポンにもあるように、サイクリストが用途に適した最高の1台を手に入れることを考慮した結果、トレックの目指すエンデュランスバイクとして具現化したのがこの調整式振動減衰機構なのだろう。惜しむらくはライディングしながら調整できないことくらいだ(もちろんバイクから降りればすぐに調整できる)。ともあれ、想像を超える機構であったし、完成度もたかく現行のドマーネユーザーの琴線に触れる性能といえるだろう。
先日、渋谷は道玄坂のセガフレード・ザネッティ渋谷店(東京都渋谷区道玄坂2丁目25−12 道玄坂星野ビル)にて、新型ドマーネのプレゼンテーションが行なわれた。プレス以外にも招待客にお披露目するという複数の部にわけた構成で行なわれ、土地柄もあり多くの人の目に触れる機会となった。
セガフレード・ザネッティジャパン代表の森聡郎氏(左)、トレック・ジャパン代表の田村
トレック・ジャパン 野口忍氏による新型ドマーネのIsoスピードの解説。
シートマストチューブはIsoスピード部と、アジャストボルトによってフレーム本体と固定されているのだ。
ヘッドチューブに搭載された画期的なIsoスピードの構造を、分解したパーツを手に解説。
宮澤崇史氏がテストライダーを務めた。その模様がトレック オフィシャルFaceBookにアップされている。
https://www.facebook.com/TrekBicycleJapan/videos/867896710003907/
(写真/和田やずか)
トレックのお問い合わせ先 トレック・ジャパン http://www.trekbikes.com/jp/ja_JP
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。