2016年07月07日
3モデルインプレッションVOL.17/BOMA RASOR(エアロロードモデル)
BOMA / RASOR
エッジを効かせてエアロに徹底したフォルム。高剛性なダウンチューブ、そしてチェーンステイに振動吸収性の高いバックステイを合わせ、エアロロー ドながらも快適性を兼ね備えている。ビルドインバッテリーやダイレクトマウントブレーキキャリパーなど最新のコンポにも対応している。スタンダード、エンデュランス、そしてエアロロードと3モデルを揃えるというのは、体力も必要で開発力も問われる。いずれも綿密な設計が必要になるが、空気抵抗軽減という永遠のテーマに立ち向かったラソアの実力やいかに。
■フレーム:T700/HM 3K 仕上げ■フォーク:オリジナルカーボンフォーク■試乗車のコンポーネント:シマノ・デュラエース■ホイール:BOMA・TH-10C■完成車実測重 量:6.8kg(ペダルなし)■カラー:マットブラック×ショッキングイエロー■サイズ:S(450)、M(480)、L(510)、XL(540)■価格(税抜):242,000円(フレームセット、付属品:シートポスト)
シートクランプはフレームに内蔵し、スムースな外観に仕上がっている。
ボリュームのあるチェーンステー、細身のバックステーと快適性にも配慮。バックステーにはブリッジをしっかりと設けている。
シフトケーブルやブレーキケーブルはもちろんフレームに内蔵できる。
ボリュームのあるBB回り。剛性重視であることが窺い知れる。リアブレーキはBBの下に配置している。
ダイレクトマウントブレーキを採用したエアロフロントフォーク。
IMPRESSION
エアロダイナミクスデザインたる所以◆菊地武洋
ラソアのフォルムは典型的なエアロバイクのそれである。しかし、わずかなブランドを除いて、エアロバイクの開発は鬼門である。莫大な費用を払って風洞実験でフレームを開発しても、それだけで評価される時代は終わっている。今やホイールやハンドルなど総合的なモノ作りができないと、トップレベルの空力性能を得ることは不可能だ。空気抵抗はパーツの組み合わせを1つ間違っただけで台無しにもなるセンシティブな性能だが、果たして本当に重要だろうか? 空気抵抗が走行中に大きな抵抗になっているのは間違いない。けれど、速いバイクに求められるのは空気抵抗だけではない。BBシェルに向かって幅広くなるダウンチューブや、力強いチェーンステーのデザインを見る限り、エアロがラソアの表テーマなら、裏テーマはパワー伝達効率だろう。空気抵抗の差は、よほど風の強い日か無風でもない限り、差が分かりにくい。したがって、ライバルと同じく、ラソルを走らせてみても“ノーマルとは別世界!”とは思わない。ただ、これといったネガティブな部分もないヴァイド プロと比べるとハンドルが低く、直進安定性が高い。タイムトライアルを想定し、ヘッドアングルを寝かせ、ホイールベースが長くしているのが効果を発揮しているのだろう。トラクションは悪くないので、タイムトライアルはもちろん、ロードレースで使っても不満はないと思う。24万2000円という価格を考えれば、妥当な性能である。
近未来的自転車♠︎芦田昌太郎
SF映画の「トロン」を彷彿とさせるデザインとエッジの利いたエアロフォルム、近未来感が漂う1台である。平坦路での巡航は心地よく、上りも難なくこなしてくれる。抽象的な表現になってしまうが、質感はガチガチではなく、パリパリと乾いた硬さであるために長く乗っていても疲れにくいだろう。また、ミクロな入力に対してもきちんと応えてくれるので、巡航速度を保ちやすいのがライダーには嬉しいところだ。薄いトップチューブと華奢なシートステイがその存在感を上手く消していて、あたかもダウンチューブ、シートチューブ、チェーンステイのBBに接する3本だけでフレームが構成されているかのようであり、まるで雲上を滑空しているかのようなふわふわとした乗り心地を与えてくれる。映画『トロン』の世界観そのままのバイクで、実に面白い。敢えて不安要素を挙げるとするならば、下りの高速でのコーナーリングだろうか。とは言え、高グリップのタイヤと高剛性のホイールを履けば、その懸念も払拭されるだろう。
レーシングバイクとして十分なパフォーマンス■山本健一
ボリュームのあるティアドロップ形状を多用した空力を意識したフレームデザインで、乗るものを鼓舞するような元気なイメージのフレーム。エアロロードとして多くのメーカーも採用している機構、ダイレクトマウントブレーキや、フレームと面イチのフォーク、BB下に配置したリアブレーキ、スモールパーツのフレーム収納など、最新のエアロ系パーツに対応するエアロロードとしての基本的なスペックだ。フレーム剛性としては標準的なレーシングフレームの雰囲気で、十分な加速性能を発揮してくれるだろう。フォークはコックピットから俯瞰するとピンヒールのようなスレンダーなフォルムだ。その視覚情報の影響もなきにしもあらずだが、クリテリウムレーサーのような軽快な動きだ。反面、路面からのアンジュレーションにも反応しやすくロードインフォーメーションは繊細に伝えている。頼もしくも繊細な性格だが、この佇まいながら上りでの印象が良く軽やかに駆け上がれた。しかしながら、エアロロードフレームで25万円でお釣りが戻るというのは、驚異的なバリュー価格だ。エアロロードが欲しくても、予算が決まっている人にも良い。ラソアならコンポーネントやホイールへの投資にウエートをおくことも可能だろう。レースを志すヤングライダー向けとしてもおすすめである。
(写真/和田やずか)
問:ASKトレーディング http://www.boma.jp/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。