2016年03月22日
3モデル インプレッション Vol.12/ GRAN TURISMO R SL(エンデュランスモデル)
WILIER / GRAN TURISMO R SL IMPRESSION
ウィリエールのエンデュランスモデルは3モデルあり、そのもっとも上位にあるのがこのグランツーリスモ R SLである。多くのサイクリストが週末の楽しみとしているロングライドのために設計されたジオメトリーは、アップライトなポジションが容易にとれるよう設計された。46トンカーボンを用いたフレームはチェントウノ・エアーやゼロ・セッテにも通じる、洗練されたロードバイクらしさを感じさせる。
グランツーリスモR SL■フレーム:60T/46Tカーボン(メカニカル/Di2兼用)■フォーク:カーボン■試乗車のコンポーネント:シマノ・105■ホイール:シマノ・WH-RS-11■完成車実測重量:8kg(ペダルなし)■カラー:カーボンレッド/マット、イエロー/レッド、アシッドグリーン■サイズ:XS / S / M / L / XL■価格:486,000円(シマノ・デュラエースMIX完成車、税抜)、400,000円(シマノ・アルテグラ完成車、税抜)、363,000円(シマノ・105完成車、税抜)、300,000円(フレームセット、カラー:カーボンレッド/マット、イエロー/レッド、アシッドグリーン。付属品:シートポスト、ヘッドパーツ、税抜)
オフセットしたバックステイはチェントウノに通じるデザイン。路面からの振動を緩和するような作用が期待できる。
丸みを帯びたチューブを組み合わせたハンガー部分。BBはプレスフィットを採用した。
左右非対称のチェーンステイ。
シートポスト径にはΦ27.2mmを用いる。
フレームの美しさを引き立てるケーブル内蔵処理が施される。
IMPRESSION
完成度が高いエンデュランスモデル■菊地武洋
自動車の車名ではお馴染みのGT(グランドツーリング)は“大旅行”という意味だ。昨今のカテゴリーに当てはめるならエンデュランスレーサーだが、カテゴリー名としてもGTのほうが魅力的だと思う。たとえば、GTとは重量規制(6.8㎏)のあるレース用バイクよりも軽く、より機能的なバイク。そう定義づけたら、エンデュランスバイクよりも上質な自転車がイメージできるのではないだろうか? さて話をグランツーリズモR-SLに戻そう。スタイリングは大人しめだが、チェントウノエアーのシートステー接合部と、ゼロセッテ譲りのヘッド周りなど、ブランドとしての統一感もあり、好き嫌いは別としてもよくできている。他の2台と比べて車格も落ちるので仕方がないが、路面状況の伝え方などに高級モデルのようなフラットさはない。そのぶん、タイヤのクリアランスは大きく28Cまで対応する。なので、乗り心地をホイールやタイヤの組み合わせで調整すればいい。ハンドリングは直進安定性が高く、この手のバイクとしては極めてオーソドックスな仕上がりだ。好感をもてるのは、必要以上にヘッドチューブを長くしていない点だ。前傾姿勢を浅くしてリラックスできるのも悪くはないが、往々にしてやり過ぎのモデルが多い。遠くまで高速ツーリングをするなら、やはりレーシングバイクに近いフォームがとれるモデルがいい。サイズの話は個人差が大きいので、それ自体は好みの範疇になってしまう。しかし、レースを卒業した人ならGTR-SLのようなサイズ感は好みに合うだろう。
どこまでも走りたくなる快適性◆小高雄人
まさしくエンデュランス系といえる乗り味。しっかりと路面からの衝撃を緩和し、快適性を高めている。レーシングバイクのようにトルクを高めて踏んでも、そこまで加速性は良くはないが、トルクよりもケイデンスに意識して、マイペースに走ると想像以上によく走る。1点気になったのは、直進性が強すぎるのか、スピードを出した状態でコーナーに入ると自分の意図しているよりもバイクが立ち上がってしまう傾向があるように感じた。今回の試乗車にアッセンブルしていたホイールとの相性もすごく良かった。ただのエンデュランスロードではなく、フォークがエアロ形状になっていた点が個人的にはツボであった。
スタイリッシュなロングライドモデル◆山本健一
エンデュランスモデルというと、そのギミックに仰々しさを感じさせる昨今だが、それだけにパフォーマンスは保証されているといえる。振動吸収性はどこまで高まるのか、5年前から何割高まったのだろうか? ……そもそも乗って快適、だがスピードは犠牲にしないというのがエンデュランスバイクの持ち味といえる。振動吸収性だけを高めたいならもっと別のアプローチとなる。ロードらしさというプライドを守りつつ、というのであれば、このGT R-SLとなろう。ゼロ・セッテからフィードバックしたようなフォルムは告げられなければガンガン走りそうなスローピングスタイルのミドルグレードのレース用バイクに見える(これはこれで褒め言葉である)。ゼロシリーズのパフォーマンスを引き継いでいるかどうかは乗った瞬間にわかる。その反応のよさはまさにハイエンドバイクを彷彿とさせるもの。加えて剛性に安心感、安定感を覚えるのもロングライドに向くという味付けだ。ハンドリング性能も高く低速から高速とスピードを問わず実にコントローラブル。ヘッドチューブの長さもほどよく余計なスペーサーコラムを入れずともアップラインとなポジション出しが可能である。イタリアンブランドだし、余計にスタイリッシュに乗りたいというものだ。いたずらに長距離が楽だ、と主張しないのもこのバイクのいいところだ。
(写真:和田やずか)
ウィリエールのお問い合わせ先:服部産業スポーツ事業部 TEL.06-6981-3960
http://www.wilier.jp/road/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得