2016年03月20日
3モデル インプレッション Vol.12/CENTO 1 AIR(エアロロードモデル)
WILIER / CENTO 1 AIR IMPRESSION
エアロロードながらも振動吸収性を高めたというチェントウノ・エアー。オリジナルのエアロシートポストはユニークな形状だが、従来のフレームのように、伸縮が可能で、微調整も用意にできる。そのエアロ然としたスタイルながらもパヴェやグランフォンドにも対応するという幅広いチャンネルをもったエアロロードバイクである。メーカー公称値ではフレーム単体で1120g、フォークは390gと軽量だ。
チェントウノ・エアー■フレーム:カーボンモノコック(ワイヤー/Di2兼用)■フォーク:フルカーボン■試乗車のコンポーネント:シマノ・アルテグラ■ホイール:3T・メルキュリオ60 LTD■完成車実測重量: 7.1kg(ペダルなし)■カラー:ブラック/レッド、ダーク、ネイビー、ライムイエロー、ユナイテッド(カラーによって価格が変わります)■サイズ:XS / S / M / L / XL■価格:826,000円(シマノ・デュラエースDI2完成車、税抜)、630,000円(シマノ・デュラエース完成車、税抜)、530,000円(シマ ノ・アルテグラ完成車、税抜)、480,000円(フレームセット、カラー:ライムイエロー、ユナイテッド。付属品:シートポスト、ヘッドパーツ、BB カップ、BBベアリング、税抜)、410,000円(フレームセット、カラー:ブラック/レッド、ダーク、ネイビー。付属品:シートポスト、ヘッドパー ツ、BBカップ、BBベアリング、税抜)
ものものしい形状のハンガー部分。BB規格はゼロ・セッテと同じくBB386EVOを採用している。
フレームと一体感のあるシートクランプ。オリジナルのシートポスト形状もフレームと同調していて、スタイリッシュだ。
シートチューブのカットアウト、オフセットしたバックステイなど独自のスタイル。
電動/機械式に対応。インテグレーテッドケーブルシステムは、作業性に優れた設計だ。
インテグレーテッドフォークデザイン。エアロダイナミクスを考慮してフレームと一体でデザインされた。
デザイン&テクノロジーのアイコンが記されたトップチューブ。ウィリエールの高い技術力がフレームに活かされる。
IMPRESSION
スピードを意識するスタイリング●菊地武洋
勇ましいというか、いかついスタイリングのバイクだ。これだけ速く走るということを意識させられると、ホイールやパーツ選びにも制約が出てくる。ホイールならロープロファイルじゃ恰好がつかない。せめて35㎜、できれば50㎜以上のディープリムのほうが完成車にしたときのバランスがいいだろう。フレーム価格からすれば当然だろうが、コンポだって最低でもアルテグラ、普通に考えればデュラエースが標準仕様だ。走らせてみても、印象は見たとおりだといっていい。ひと言でいえば「速い」バイクだ。ペダリングが軽快で、精度も高く……という条件をクリアした上で、さらにエモーショナルな部分の速さがある。それはライダーが「少々、苦しくても速く走りたい」と思えるか、否かである。実際の速さはほぼ100%体力が決めているのであって、機材の差はほぼない。ただし、モチベーションは機材によって大きく変わる。高級車や上質なロードバイクはたくさんあるが、“その気にさせる”バイクは多くない。ゆっくりと景色を楽しみながら走りたいなら、チェントウノ・エアーという選択は外してもいい。もっと貪欲に、1㎝でも遠くへ、1秒でも速く走りたい人に向いた自転車だ。チェントやチェントウノも品質の高いバイクだったが、エモーショナルな部分で物足りなさがあった。そのウィークポイントを改善したのがチェントウノ・エアーであり、ウィリエールの自転車作りが一皮むけたような印象を受ける。
速ければ速いほど持ち味が引き出される◆小高雄人
スキルの高い上級者向けのフレーム。淀みなくスムースにぺダリングをすると気持ちよく加速していき、スピードが増すほどにバイク自体の安定感も増していく。一方で、引き脚がうまく使えなかったり、雑なぺダリングをすると、フレームのバタつきが目立った。下りやコーナリングなど、ぺダリングをしていないニュートラルな状態でもバイクは安定していて、スパッと切り込んでいける。高速で走行した方が振動吸収性および路面追従性に光るものを感じた。ライダーのぺダリングの力量が試されるバイクといえるだろう。ヘッドおよびフォークの前面部分やシートチューブで高速で走行すると空気の抜けの良さも感じた。たしかな空力性能を備えているのであろう。
▼山本健一
チェントウノがデビューしたときは丸みを帯びたデザインが印象的だった。ゼロ・セッテ同様にロングセラーモデルで、ブラッシュアップを施しながらウィリエールを牽引するモデルといえるだろう。いまやエアロロードに昇華し、当時の面影はわずかに残す程度だが、その走りのセンスはしっかりと受け継がれている。バイク自体の剛性感はパリパリとした表面的な硬さで、チューブの肉厚が非常に薄く硬質な印象を受ける。加えて、しなりはほどほどにあり、いかにも高弾性というカーボン素材のバネ感が反発となって心地よく脚に響く。大きなトルクにもよく応えるが、やや高めのケイデンスを意識したほうが出力をスピードに変換できている印象が強い。またBBハイトが高いようなペダリングのしやすさがあり、上りでも踏み続けられるようなほどよい剛性感で個人的にはかなり好みだ。デビューから進化をし続けるチェントウノだが、最新鋭のエアロロードに囲まれるとさすがに旧世代感は否めない。しかしながら錬磨された運動性能はまさにコンペティション用として相応しいもの。エアロと振動吸収性を高めた設計だというけれど、個人的にはレースで使いたい。形状はエアロで平坦番長のような佇まいではあるが、性能はオールラウンド。軽さとエアロ、優れたレスポンスと3拍子揃ったバイクといえる。
(写真:和田やずか)
ウィリエールのお問い合わせ先:服部産業スポーツ事業部 TEL.06-6981-3960
http://www.wilier.jp/road/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。