2017年10月04日
【2018 NEWプロダクツVOL.6-1】BMC / TeamMachine SLR01
4年振りにモデルチェンジして“チームマシン”が第三世代へと進化した。BMCには他にロードマシーン、タイムマシーンの3ブランドがあり、ヒルクライム用を意味するアルティテュード、長距離用のエンデュランス、空気抵抗の小さなエアロと用途別に3つのカテゴリーに分けられている。“チームマシーン”はヒルクライムを得意とするレースバイクで、優れた重量剛性比を武器に人気を誇ってきた。中でもシリーズ最高級モデル“SLR01”は軽さと剛性を高次元にバランスさせることが命題であり、ディスクブレーキへの対応も図られた意欲作である。
前作同様、今回の開発にもスイスの大学と共同開発したACE(AcceleratedComposites Evolution)テクノロジーを採用し、カーボンの積層を含めた設計のシミュレーションは18000回にも及んだという。また、その改良の中でも中心的な位置を占めたのが、プロ選手から要望の多かったブレーキだ。ダイレクトマウント方式のリムブレーキ仕様と、フラットマウント規格のディスクブレーキ仕様がある。ほかにも快適性の向上に寄与するD月断面のシートポストや、サイクルコンピュータ&メーターマウントユニットをステムと一体化させるなど、細部まで完成度が高いのも特徴だ。
スペック
フレーム/ACE テクノロジー プレミアムフルカーボン、リムブレーキタイプ:810g (サイズ54、塗装済、小物込み)、ディスクブレーキタイプ:825g (54、塗装済、小物込み)、PF86 BB、130mm クイックリリース、リムブレーキ:ダイレクトマウントリムブレーキ/ディスクブレーキ:フラットマウントディスクブレーキ専用(140/160mm対応)、直付フロントディレイラー、交換式「サンドイッチ」リアディレイラーハンガー
フォーク/Teammachine SLR01プレミアムフルカーボン、1 1/8″- 1 1/2″テーパーコラム、350g(300mmコラム)、100mmクイックリリース、リムブレーキ:ダイレクトマウントリムブレーキ/ディスクブレーキ:12x100mmスルーアクスル、フラットマウントディスク
シートポスト/Teammachine SLR01プレミアムフルカーボンACE テクノロジー「D]型コンプライアンスポスト、15mmオフセット、195g (0mmオフセット オプションあり)
タイヤ/最大タイヤ幅 28mm (実測)
インテグレーション
フレーム/内蔵ワイヤー/ケーブル、シートポストクランプ、Di2ジャンクション
コックピット/BMCデザイン ステム+インテグレーテッド サイコン+カメラ マウント
価格(税別)
Teammachine SLR01 TWO ¥680,000(Sram Red 22完成車)
Teammachine SLR01 THREE ¥600,000(Shimano Ultegra完成車)
Teammachine SLR01 MOD ¥500,000(FRAME SET)
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Teammachine SLR01 DISC ONE ¥890,000(Shimano Ultegra Di2完成車)
Teammachine SLR01 DISC TWO ¥640,000(Shimano Ultegra完成車)
Teammachine SLR01 DISC MOD ¥540,000(FRAME SET)
ユーザーからのリクエストによって考案されたオリジナルの ICEステムは煩雑になりがちなハンドル周りをスマートにまとめてくれる
ダウンチューブにあるケーブルの挿入口は、Di2仕様のジャンクションAが取り付けられるように互換性のある形状になっている
ACEテクノロジーによってプリプレグの積層方法や形状が見直されたトップチューブ。チェーンステーとともに強化されて、剛性が上がると同時に耐久性も向上している
ディスクブレーキ仕様は今後デファクトスタンダードとなるフラットマウント&12㎜スルーアクスルを採用している
アウターケーシングのキャップを可動式にして、摩擦抵抗の低減を図っている。派手さはないが、組み上がった状態の性能が向上する工作だ
ケーブル類をステムにフル内蔵できるようにフォークコラムの形状が真円ではなく、コラムスペーサーにも工夫が凝らされている
フォークコラムは中空であるのが常だが、発泡フォームが充填されたオリジナリティ溢れる機構だ
IMPRESSION
クセがない優等生バイク◆山本健一
BMCは産声を上げた時からコンペティティブで硬派なバイクメーカーだ。そしていつの時代においても、素晴らしいパフォーマンスで多くのレースでチームの勝利に貢献してきた。シルエットだけでBMCとわかるいわば象徴的だったフレーム形状ではなくなり“外観的”にはシンプルになったが、フロントフォークの構造や、考え抜かれた剛性分布など、これまでの見せる構造設計から、内側へ隠す方向へシフトしたといえる。ケーブルの類も内蔵化が進み、よりスマートさを増した。
ライディングフィールはしっとりとしながらも、踏めばしっかりと応えてくれる。オリジナルのステムやフォーク周りの剛性も十分で、下りでの挙動に不安はない。軽量ながらも繊細さのかけらもなく、むしろ無骨なイメージすらもたせる頼もしいバイクに仕上がっている。ある一部を研ぎ澄ますのでははなく、トータルバランスを重要視したような乗り心地。ファストライドやサバイバルレースで威力を発揮しそうだ。
弱点を克服し、洗練度を高めた新作◆菊地武洋
新しくなったチームマシンSLR01は、これまで乗ったBMCのバイクの中でもっとも味が薄い。料理のように味付けが濃いのを下品というなら、上品になったと言い換えてもいい。洗練され、性能が高まっていけば走行感は似てくるモノだ。私は進化したBMCの演出が好きだとは言えないものの、嫌いではない。シート部のアイコン、BBハイトが低いかのような安定感、強い直進安定性という従来の“らしさ”と決別し、高性能化にともなって俊敏性や軽快感を手にしている。ペダリングの軽さや振動減衰の早さは、最新バイクらしいトレンドに則ったフィーリングであり、これまでのチームマシンにはなかった走行感だ。これまでBMCは好みの分かれるフレームを手掛けてきた。アメリカンブランドのような論理的なデータで構築されるモノではなく、感情的な演出を優先してきた。ACEテクノロジーで完成度を高めただけあって、4年振りの新作に大きな弱点は見当たらない。重量が軽くなっていないが、その分は耐久性が増しているという。個性的なスタイリングがなりを潜めたのは淋しいが、ギミックで販売成績を伸ばそうとするのは、戦争でいえば弱い方のやるゲリラ戦だ。そういう意味において、チームマシンSLR01は一皮むけて大人仕様になったと言えるだろう。
このバイクは……
レース・エンデューロ向け
マルチパーパスな万能ロードバイク。アップダウンコースやレースで実力を発揮しそうだ。
富士チャレンジ200
グランフォンド八ヶ岳
関連URL:フタバ商店 http://www.bmc-racing.jp/bikes/slr01.php
写真:編集部
文:菊地武洋、山本健一
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。