2017年10月10日
【2018 NEWプロダクツVOL.6-2】BMC / TeamMachine SLR02
BMCにとってチームマシンはレース用バイクの主役であり、ブランドイメージや評価を決められてしまう重責を担っているバイクだ。4年振りのモデルチェンジに踏み切ったのも、ライバルと比較しても一級の性能をもっているうちに、さらなる進化を遂げてリードを拡げるのが狙いの1つだ。また、新型“SLR01”と“SLR02”の違いが素材だけというのも大きな魅力だろう。チューリッヒ工科大学と共同で開発したACEテクノロジーと形状を採用しつつ、ライバルメーカーの上位モデルと互角に戦う魅力を与えている。
素材の差だけ……とは言うが、その差が小さくないことは想像に難くない。しかし、BMCは新型SLR02を開発するにあたって、剛性と路面追従性の目標値をSLR01と同等を目指し、230gの重量増&SLR01と比べて95%の剛性を実現している。プロが極限の環境で使うことを前提に開発された数値をベースに考えれば見劣りするかもしれないが、アマチュアライダーの出力を考えれば十分過ぎる仕様といっていいだろう。
SPEC
フレーム ACE テクノロジー フルカーボン、1,045g (54、塗装済、小物込み)、PF86 BB、130mm クイックリリース、リムブレーキ:ダイレクトマウントリムブレーキ/ディスクブレーキ:12x142mmスルーアクスル、フラットマウントディスクブレーキ専用(140/160mm対応)、直付フロントディレイラー、交換式「サンドイッチ」リアディレイラーハンガー
フォーク Teammachine SLR02フルカーボン、1 1/8″- 1 1/2″テーパーコラム、375g(300mmコラム)、100mmクイックリリース、リムブレーキ:ダイレクトマウントリムブレーキ/ディスクブレーキ:12x100mmスルーアクスル、フラットマウントディスクブレーキ専用
シートポスト Teammachine SLR01プレミアムフルカーボンACE テクノロジー「D]型コンプライアンスポスト、15mmオフセット、195g (0mmオフセット オプションあり)
タイヤ 最大タイヤ幅 28mm (実測)
インテグレーション
フレーム 内蔵ワイヤー/ケーブル、シートポストクランプ、Di2ジャンクション
コックピット BMCデザイン ステム+インテグレーテッド サイコン+カメラ マウント
価格(税別)
Teammachine SLR02 ONE ¥400,000(シマノ・アルテグラ完成車)
Teammachine SLR02 TWO ¥310,000(シマノ・105完成車)
Teammachine SLR02 DISC ONE ¥570,000(シマノ・アルテグラDi2完成車)
Teammachine SLR02 DISC TWO ¥430,000(シマノ・アルテグラ完成車)
力強いチェーンステーと、しなやかさが光るシートステー。変速機用のアウター受けはエンド部に配置されてスムーズなワイヤリングを可能にしている
ボトムブラケットはペダリングで発生した応力を受け止めるためボリュームが大きく、負荷の大きな左側のチェーンステーは断面積を拡大している
制動力の向上は近年のニューモデルでは必須課題。リムブレーキ仕様はフォーククラウンを強度メンバーにできるダイレクトマウント方式を採用
SLR01と同じく、フリクションロスを抑えるために開発された可動式のアウター受け。フレームサイズによって異なるリヤブレーキの制動感の安定にも役立っている。
応力に合わせて左右非対称形状を採用したダウンチューブ。BMCの人気を支える、強烈なトラクション性能を生み出すのは、昔から極太のダウンチューブによるところが大きい
スタイリッシュな“ノーギャップ”シートポストクランプ。固定ボルトはトップチューブ裏にある。D型断面のシートポストは前後方向に適度にしなり、快適性を向上させている
IMPRESSION
あたらしいBMCをお手頃な価格で提供◆山本健一
心機一転か、正常進化か、新しいSLRシリーズは昨今のロードバイク然としたスタイルとなった。SLR01のレビューでも述べているが、外側ではなく内側向きの「著しい改良」といったイメージで、このSLR02も同様だ。
SLR01と比較してしまうとやはり加速の切れ味やハンドリングの機敏さなどは一歩譲る。だがSLR02もセカンドグレードとしてはなかなかの走りといえるだろう。下りに関しては重すぎず、軽すぎずの重量分布からか、SLR01よりも身を任せやすい。振動吸収性(わだちやひび割れなど、いわゆる悪路は走行していないが)、もリアセクションを中心に効いている印象だ。ほぼ同様の意匠、そしてシマノ・105を搭載して31万円という価格は、驚きのバリュープライスといえるだろう。と、いう意味では心を入れ替えて新しい路線に進むということはでなく、これまでの歴史に則り、より煮詰めた正常進化といえる。2004年の誕生からおよそ14年目のモデルとなったが、この14年という歴史は浅いのか、それとも深かったのか。この新しいSLRシリーズに乗ってみると明白である。
旧SLR01を凌ぐ、ハイパフォーマンスモデル◆菊地武洋
トップモデルの力強いパフォーマンスが輝かしいのは違いないものの、販売量は高がしれている。ブランドの定評を決めているのは販売量の多い2ndモデルや3rdモデルであり、ここで失敗するとシリーズ全体は失敗作となるパターンが多い。それゆえ以前よりも手抜きなしの2ndモデルが増えてきた。新型SLR02にしても、乗って誰もが思うのは「これで充分」ということだろう。カチッとした剛性感と安定感を伴ってスタートする様は、旧型SLR01にそっくりである。ホイールとタイヤのグレードが低いので、路面の凹凸を手に伝えてくるボリュームが大きく、乗り心地自体はそれなりの性能に落ちついてしまうが、SLR02は“プアマンズSLR01”ではない。ちょっと磨いてやれば、トップモデル並に光るスタビリティーがある。また、制動力の強化は最新トレンドであり、ブレーキの効きが世代を分ける評価軸になることを思えば、旧SLR01よりも性能は上だ。これだけのパフォーマンスを40万円で買えるのは、3年前では考えられないことだ。そこにプロダクトの進化と、BMCの高いモチベーションも感じられる。絶対性能を求めるならSLR01だろうが、これまでBMCが築いてきた個性や“らしさ”を色濃く感じるのはSLR02だろう。
このバイクは……
上位モデル同様にあらゆるシーンで活躍できる。リーズナブルなピュアロードバイク。
富士チャレンジ200
グランフォンド八ヶ岳
関連URL:フタバ商店 http://www.bmc-racing.jp/bikes/slr02.php
写真:編集部
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。