2019年05月25日
ファンライドアーカイブス 読むトレーニング「住田道場」⑥
2007年12月号から約1年にわたって月刊ファンライドに連載された「住田道場」の第6回です。シマノレーシングに所属し、アトランタオリンピックロード日本代表にも選ばれた住田修氏によるこの連載は「モノクロ1ページ」という地味な企画ながら、トレーニングに励むサイクリストの心をがっちりつかんだ大人気連載になりました。10年以上の月日を経た今も、「強くなるために今何をすべきか」は不変のテーマだと気づかされます。
※掲載※月刊ファンライド2008年5月号 構成/浅野真則 写真/高田賢治 題字/住田修
今月の教訓
一、集団でじっとしていたら、強いチームの思うつぼ。弱いヤツほどアタックを
一、レース途中でも、先頭に立った瞬間は自分がいちばんゴールに近い
一、ロードレースのなんたるかを学ぶため、チーム戦を見直せ
其の六、
弱いヤツほどアタックを
レースシーズンが本格的に始まったな。ワカモノたちよ、調子はどや?
冬の間にしっかり走り込んだヤツは、手応えを感じてるんとちゃうか?練習は絶対裏切らへん。彼女には裏切られることもあるかもしれへんけどな。
それにしても最近のレースはおもろないな~。熱さが感じられんのよ。終盤まで大集団、コースのきついところで有力チームが仕掛けて集団分裂、ゴール前でチョイ差ししたヤツが勝つというワンパターンなレースばかりやん。セコいレースすんなって。
みんな何でアタックせんの?弱いヤツが「どうせ負けるから、付けるところまでいこう」って集団の中でおとなしくしとったら強いチームの思うつぼやで。
ぼくはかつてシマノレーシングで走っとった。その経験から言うと、弱い選手が渾身の力で何度もアタック繰り返してくるんがいちばんイヤいあった。それも意外なところで仕掛けられると「おいおい、アイツまさかゴールまで行ってしまうんちゃうか?」「でもどうせアカンやろ」と思いながらも、多少なりともスピードを上げざるをえんかったからな。
だから、弱いヤツほど積極的にアタックすることや。それもチョイ逃げなんて半端なんじゃなくて、逃げ切り勝ちをめざすぐらいの勢いで行ってまえ!「見逃してくれ~」なんて叫びながらアタックしたら、強豪チームの面々も1回ぐらいは見逃してくれるかもしれん(笑)。
・・・・ま、ロードレースはそんな甘くないけどな。でも、捕まったらそれはそれでOK。あとは根性で行けるところまで集団に食らいついていけ。そんなんもエエ練習や。
言っとくけど、先頭に立った瞬間は、少なくとも自分がいちばんゴールに近いんや。しぶとくアタックを繰り返すうちに、強豪チームの選手も焦るはずや。何もせんとおとなしくしとるよりは、まだ勝てる確率が高くなるやろ?
ワカモノよ!とにかく自ら仕掛けろ!集団内で何となく完走(もしくはリタイア)するぐらいなら、ダメモトで前に出ろ!前に出んと、いつまでたっても自分の力はわからん。それに国内に数チームしかない強いチームに遠慮することはまったくあらへん。その他の選手が100人がかりで波状アタックを仕掛け、強豪チームの一角でも崩してやろうとチャレンジしてみてくれ。そんなジビれるような、熱いレースを期待してるで!
四の五の言わずに内灘に集合!
最近のロードレースがつまらなくなっとる最大の原因は、レースがチーム戦と化しとることやろな。国内レベルのレースで〝ツール・ド・フランスごっこ〟なんてしょーもないことやっとるから、「積極的にレースを動かそう」という気概が選手からほとんど感じられへんのやな。
ワカモノよ、ヘロヘロになるまで全力を出し切ったと胸を張れるレースが、最近ひとつでもあったか?おそらくないんちゃうか?集団内で休むことができるのがロードレース。せやけどすーっと楽に走っとるだけはアカン。その余裕をどこかで出し切るようにせんとな。
休むべきところは休み、仕掛けるべきところでは仕掛けるというように、走りにメリハリをつけるんや。普段、家では発泡酒を飲んで節約しても、ビアガーデンではパーッと生ビールを飲むみたいにな・・・・ちょっと違うか。
せやけど、自転車にはイヤでも全力を出し切らざるをえん種目もあるで。タイムトライアル(TT)や。TTは、一番時計を出したヤツは優勝というシンプルな競技や。そこには、つまらん駆け引きは一切介在せん。勝つには、ただ持てる力を全力で出すのみ。ホンマもんの弱肉強食の世界や。
でも、残念ながら、TTが行われる大会が少なすぎる。大きなところでは、6月の内灘サイクルロードレースと8月シマノ鈴鹿ロードぐらいやろ?もっと増えてもエエと思うけどな。ワカモノよ、まずは6月22日の内灘サイクルロードレースに集まれ。数少ないチームTTが開催される大会やさかいな。オノレらのガチンコ勝負をしかと見届けたる。楽しみにしてるで。内灘には、ファンライドレーシング班も出場するらしいで。ぼくらも元シマノレーシングチームの面々で出場する予定や。こちのガチンコ勝負にも乞うご期待!?
住田修/すみた・おさむ(写真・プロフィールは連載時のもの)
ロードレース2×10段と称される名人。立命館大学を卒業後シマノに入社。アトランタ五輪日本代表。現役時代、その圧倒的な存在感はロードレース界随一と言われ、実力だけでなく、ハートでも魅了する熱い男。現在は仕事中心ながら、走ることはやめない生涯サイクリスト。すね毛を剃らない選手としても有名だった。
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。