記事ARTICLE

2024年06月20日

別府匠さんの富士ヒルインサイド レポート その2

悲喜こもごもの五合目

そして自分も五合目に到着。するとどこを見てもサイクリスト。長く自転車に関わることをしていますが、こんな光景はなかなか見ることができません。本当にみなさんに愛されているイベントなんだなぁとしみじみとしてしまいました。

そこにはベストタイムを更新できた人、残念ながらベストに届かなかった人、仲間と喜びを分かち合っている人など、いろいろな感情も渦巻いていました。幸いその時の五合目は晴れていて、気温もサイクルコンピューター読みで19℃と暖かかったこともあり、多くの人が五合目の雰囲気を満喫していました。のちに雨が降ったということで、スタート時間の違いでコンディションが変わることがあるのも富士ヒルの難しさでしょうか。

富士北麓公園では気温5℃の情報だったのが本当に19℃の表示

下山のポイントは

五合目の配信を済ませて、下山用の荷物を受け取りウェアを重ね着して下山ポイントに向かいました。
今回の下山の装備としては、着ていた半袖のアンダーシャツはあまり濡れていなかったのでそのままに、半袖ジャージにアームウォーマーを組みあわせ、さらに長袖の保温アンダーシャツ、ウィンドジャケットを着てその上にレインジャケットを着用しました。下はビブパンツの上からビブタイツを履いて、冬用のシューズカバーをつけました。
それに加えて2つのネックゲーターを頭と首に装着して、長指のグローブを着用しました。

ウェアの選び方としては、寒さを防ぐこともそうですが、動きやすさも重視しています。
その装備で下ってみたところ、もともと気温が低かった四合目付近は少し寒く感じましたが、その他の部分は寒さを感じることはありませんでした。下りの状況としては、下山パトロールの方々が見守ってくれていたこともありますし、自分が下ったグループでは、周囲の人は安全に留意してスピードも抑え、センターラインも割らずに下っていました。

下山は完全防備(写真をクリックするとInstagramのリール動画が開きます)

特に大きなトラブルなく下山を終えて、富士北麓公園に帰ってきました。家に帰ってきたような安心感です。参加者のみなさんはスタート地点にバイクを止めて、徒歩でEXPO会場に向かい、タグの回収とフィニッシャーリングの受け取りに向かいました。バイクを置いてからちょっと歩く距離が長かったので、盗難の心配とシューズとクリートの消耗が気になりました。事前に知っていたら下山の荷物の中にバイクをつなぐロックとサンダルを入れたらよさそうでした。

そしてタグとリングの受け取りの間に吉田のうどんとアサヒ・ドライゼロの配布もあったので、ちょっとうどんの周辺が混沌として動線が不明瞭になっていた感がありました。もう少し動線の説明がわかりやすかったらよかったかもしれません。でも、疲れて下りで冷えた身体で食べる吉田のうどんはいつも優しい。

最後に、今回走ってみて気がついた点があったのでいくつかご紹介します。

ドラフティングとシフトチェンジ

まずはドラフティング、人の後ろについて走ることができた方がいいです。トレインについている時にドラフティングができないと細かいスピードの変化で前の人と間が空いてしまい、それを埋めるのに力を使って余計なインターバルがかかり強度が上がっていまいます。それがトレインの真ん中くらいで起こってしまうと、その後ろについている人たちも同じような状況になり、トレインの良さが全く感じられません。トレインで走りたい場合は、ドラフティングの練習もしておきましょう。またそれに繋がる話ですが、こまめなシフトチェンジも重要です。富士スバルラインは勾配が緩いせいか細かい勾配の変化があります。

そこでうまくギアを合わせられないと前の人との間隔が開いてしまい、同じような状況を作ってしまいます。ドラフティングとシフトチェンジを組み合わせて操作できるようにしておけば、トレインをより有効に使えるようになるでしょう。

トレインの先頭を引いている場合の話ですが、同じパワーウェイトレシオをキープしようとするあまり、勾配が緩くなってから一気に数値を合わせるような走り方が見受けられました。ヒルクライムでは急なスピードの変化をするとリズムを崩しやすくなるので、できるだけリニアに数値を合わせるような走り方をしましょう。もしそれで力が余っているようならラストスパートでもっと速く走ればいいだけです。

急なスピードの変化がなければ後続も急に間が空くこともなくなるので、よりスムーズにローテーションも回していくことができ、回せるメンバーも増えてタイムの向上も期待できます。速くなりたい人は、パワーを意識するだけではなく、こういうスキルも身につけておけると良いです。

メカトラブル

メカトラも多く見受けられました。ちょうど見かけたのはチェーン外れ、チェーン切れ、リアデュレイラーの破損、パンクです。

チェーン外れはチェーンがインナー側に落ちてしまい、フレームとインナーリングに挟まって戻らなくなってしまっていました。うまく引っこ抜けば戻りますが、最悪引っ張った拍子にフレームに大きな傷がついたり、クランクを外す必要が出てくるのでとても厄介です。そうならないように普段からフロントディレイラーの変速をしておくことをお勧めします。

チェーン切れとリアデュレイラーの破損についてはすぐに修理ができないので走行不能になってしまうので、それ以上進むには徒歩しか手段がなくなってしまいます。いつもと違うリアホイールに交換するとギアのストロークが変わることがあるので、それが原因でチェーンがトップ側に落ちてしまったり、ロー側がスポークに入ってリアディレイラーが破損してしまうことがあります。ホイールを変えた時には一度確認しておきましょう。
また軽量チェーンを使っている場合は、保険としてミッシングリンクを持っておくのもいいですね。小さいのであまり気にならないと思います。

パンクについては、チューブラータイヤは新品すぎてもパンクすることがあります。いきなりレースに使うのではなく、何日か使って慣らしておいてから使ったほうが安心して使うことができます。
チューブレスレディやTPUチューブも同様に、シーラントを施工してすぐに使うのではなく、その状態で何回か使ってみて問題がないことを確かめておいた方がよいです。レース当日の朝にいきなり空気が抜けていることもあるので、前日に規定の空気を入れて、翌朝にどれくらい抜けているかもう一度確認するのもいいと思います。

富士ヒルは1年に1回しか行われません。ベストタイムを目標にやってきたことがメカトラブルで水の泡になってしまっては非常に残念です。一度実際に同じ装備で走ってみて問題がないか確かめておくか、できれば大会前にプロのメカニックにメンテナンスをしてもらうことをお勧めします。


以上、今回は大会レポーターとして富士ヒルクライムに参加した話でした。大会本戦とはあまり関係のないマルチバース的な話になってしまいましたが、大会の雰囲気をお伝えすることができていたら光栄です。

どんなイベントでもそうですが、特に山を上るヒルクライムの富士ヒルクライムでは、トレーニング、メンテナンス、荷物など、過去の情報や経験などを参考に事前の準備をしっかりと準備をしておけばあとは走って楽しむだけです。その情報の一つとして使っていただければと思いますし、まだMt.富士ヒルクライムを走ったことがない人に富士ヒルの雰囲気を伝えるツールとして使っていただいても構いません。タイムを狙うもよし、単に五合目を目指すだけでもよし、一人でも多くの人に富士ヒルの魅力を知ってもらえたらと思います。

写真と文:別府匠

関連URL
【第20回Mt.富士ヒルクライム】主催者選抜クラス、さらなる高みへ! 金子宗平さんが2連覇!
【コラム】クライマーたちが受け継ぐ富士への想い Mt.富士ヒルクライム 
【Mt.富士ヒルクライムEXPO】もはやメインイベント!? 第20回目の富士ヒルのブースをチェック #02
【Mt.富士ヒルクライム EXPO】もはやメインイベント!? 第20回目の富士ヒルのブースをチェック #01
【Mt.富士ヒルクライム】20回目のステージも豪華なゲストが続々登場! 富士ヒル・ステージ
【第20回 Mt.富士ヒルクライム速報】20年目のゴールを目指して!
【第20回Mt.富士ヒルクライム】フミが今年も参戦! スバルラインを駆け上がったレジェンドたち!
【第20回Mt.富士ヒルクライム】20回目も仲間とともに笑顔でチャレンジ!
【第20回Mt.富士ヒルクライム】数字でみるMt.富士ヒルクライム

別府匠さんの富士ヒルインサイド レポート その1

関連記事

記事の文字サイズを変更する

記事をシェアする