2024年06月10日
【第20回Mt.富士ヒルクライム】主催者選抜クラス、さらなる高みへ! 金子宗平さんが2連覇!
「富士の国やまなし」 第20回Mt.富士ヒルクライム(6月2日、富士スバルライン)、全国の強豪ヒルクライマーたちによる真剣勝負「主催者選抜クラス」は、今年も熱戦が繰り広げられた。男子は金子宗平さんが史上2人目の2連覇、女子は三島雅世さんが初優勝を飾った。選抜クラスの争いをコメントで振り返り、年代別クラスなどの表彰式もご紹介。
主催者選抜クラス男子2連覇の金子宗平さん「3連覇と55分切りを目指したい」
スタート会場の富士北麓公園は、朝から濃い霧に包まれた。静かな緊張感が漂う中、午前6時30分、主催者選抜クラス男子126人がスタートした。
序盤から積極的に仕掛けたのは、前年王者の金子さん。数人を引き連れて集団から先行するが、いったん吸収される。その後、ラスト5kmで再び金子さんが加速すると、反応できたのは2022年王者・真鍋晃さん、表彰台常連の加藤大貴さんの2人。しかし、この中でも強さを見せたのが金子さん。牽制が入る駆け引きのなか最後にアタックを決め、第20回大会の覇者となった。
「自分が最初逃げて、1回吸収されてから少し緩んだ。ラスト5kmぐらいでアタックしたら3人になり、最後はロングスパートしました。今年は強い選手が何人も例年以上に来ていたので、少し不安ではあったんですけど優勝できてうれしいです(金子さん)」
優勝タイムは56分42秒で、昨年の自らのタイムを40秒以上更新。コースレコード(2021年/池田隆人さん/56分21秒)にも約20秒と迫った。また2連覇、複数回優勝は2011~12年の田崎友康さん以来、12年ぶり2人目の快挙となった。
2位には真鍋さん(56分49秒)、3位には加藤さん(56分50秒)が僅差で続き、トップ3が56分台に入るハイスピードレースだった。
しかし、争った2人も「金子さんがレース作って、最後のロングスパートもとてもついていける速さじゃなかったので、完全に完敗やなと思ってます(真鍋さん)」、「タイムは近いんですけど、タイム差以上の実力を見せつけられた感じはありますね(加藤さん)」と金子さんに脱帽の様子だった。
金子さんは群馬グリフィンに所属し、2022年には全日本選手権TTで優勝、今季はJプロツアーでもランキング首位に立つなど、活躍中。昨春、大学院卒業して就職した社会人レーサーで、限られた時間の中で効果的なトレーニングを積み重ねている。
「規則正しい生活が大事。本番を想定してたくさん上ったり、レース展開を想定して上げたり下げたりに対応できる練習メニューとか、基本乗るということですね」
ロードレースやTTでも好成績を挙げているが「ヒルクライムが一番好きです。安全だし、練習の成果がそのまま表れると思うので、一番モチベーション高く取り組める種目だと思います」とヒルクライムへの情熱を見せる。
実は富士ヒル歴も長く「今回が5、6回目。初めて出たのは高校2、3年のときで、そのときも選抜で出て10位ぐらい。60分は切っていたと思うけど、プラチナリングがまだなかったとき。そこから継続して、走れるようになってきました」と振り返った。
次なる目標は前人未到の3連覇、そしてコースレコードの大幅更新を目指していく。
「来年は3連覇を目指すのはもちろん、タイムも55分切りをみんなで協調して狙っていきたい。プラチナの上のリングを用意していただいて。レインボーとかどうですかね(笑)」
さらに、ヒルクライマーとして「富士山、乗鞍を同じ年に制覇するのがひとつの目標になります」と力強く語った。
主催者選抜クラス女子、三島雅世さんが初優勝!「最後に練習してきたスプリントを出せた」
主催者選抜クラス女子は、17人が出走。集団が少しずつ人数を減らしていく中、最後はロングスプリントを決めた三島雅世さんが1時間11分09秒で初優勝。昨年3位の雪辱を果たした。こちらもトップ3が1時間11分台という高速バトルだった。
優勝:三島雅世さん(1時間11分09秒)
「今日は比較的長い間、他の選手たちと一緒にローテーション組んで走ることができたので、一緒に走ってくださったみなさんに感謝しています、ありがとうございます。最初はほぼ全員一緒で行って、そこから7人、4人、3人、2人となった。最後の最後、ちょっとだけ練習してきたスプリントを出したいなと思ったので、自分の脚に余裕が残る走りをさせていただきました。(優勝は)うれしかったんですけど、まだタイムを出したいという目標があるので、次につなげていきたいなと思います」
2位:河田朱里さん(1時間11分22秒)
「初めての富士ヒルだったんですけど、去年9月に出産して、まだ産後8カ月でどこまで行けるかと思ってたんですけど、思った以上の結果が出てうれしい。反面、優勝できなかったので、悔しい気持ちもあります。(普段の練習は)子どもが泣いたら、ローラーやめるみたいなことを毎日やっています」
3位:人部香さん(1時間11分56秒)
「富士ヒルで表彰台に乗りたいという思いでこの1年間トレーニングしてきたので3位ですけど、優勝じゃないけど目標達成できてうれしいです。ただ三島さんが本当に強くて、三島さんに耐える70分ちょっとでした。実力の差を感じたので、これに満足せずまだまだ上を目指して頑張りたいと思います」
「富士ヒル20回連続完走」の絆
2004年にスタートした富士ヒルは、今年が記念すべき第20回大会(2020年はコロナ禍で休止、秋開催)。その20回すべて完走した鉄人たちを特別表彰。順位やタイムとは異なる偉大な記録を称えた。
みなさん、富士ヒルのたびに顔を合わせる仲となり、その絆を確かめ合う1日ともなった。「家族の支え。家族の理解がないと、続けられない」「1回目出るときにロードバイクに初めて乗って、そこからできる限り続けようと思った」「15回目のときに37~8人集まったけど、あれから5年で15人ぐらい減っている。年齢を重ねてきているけど、ここまで来ると続けられるまでいきたい」と20年の重みを口にしていた。
富士ヒル表彰台! 頑張ってきたからこの瞬間がある!
12~22歳(大会当日年齢)の中で、もっとも将来性ある走りを見せた選手を主催者が選び、男女1名を表彰するブライテストホープ賞。男子は主催者選抜クラス4位(57分04秒)に入った山口瑛志さんが受賞した。
レバンテフジ静岡でも活躍する山口さんは「優勝目指して走ってたので、4位であとちょっとで悔しい気持ちの方が大きい。来年さらに強くなって、もっと上を目指していきたいと思います」とリベンジを散った
プレゼンターを務めた別府史之さんは「山口選手はツール・ド・熊野でもいい走りをしたんですけど、まだ22歳、伸びしろしかない。本人も悔しいコメント残していたので、来年、再来年と勝てるチャンスはあると思うので、ぜひ頑張ってほしいですね」とエールを送っていた。
ブライテストホープ賞女子は、15~19歳クラス優勝(1時間15分38秒)の飯田明音さん。「初めての富士ヒル、初めてのレース。あまり自転車レースを走ったことがなかったので、これからは挑戦していきたいなと思います」と初々しく喜びを語っていた。
プレゼンターは、急遽お願いした元プロロード選手の井上和郎さんが務めた。
<関連URL> Mt.富士ヒルクライム https://www.fujihc.jp/
写真:小野口健太 数馬 清宏
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。