2018年07月05日
【富士チャレンジ200】攻略法 三船雅彦「エンデューロレースに必要な練習法」
富士チャレンジ200 のゲスト「レジェンドライダー」を務めていただく三船雅彦さん。豊富なレース経験で培った屈指の知識から、富士チャレンジ200はもとよりエンデューロレースの走り方の秘訣を教えていただきました。
三船雅彦さん
中学生のときにテレビで見たツール・ド・フランスに憧れ、京都の花園高校入学と同時に本格的に自転車競技を始めインターハイや近畿大会等で入賞し頭角を現す。高校卒業と同時にオランダへ単身自転車留学し、94年よりプロ登録しプロロードレーサーとなる。ツール・ド・フランドルに日本人としてはじめて出場、翌年にはリエージュ~バストーニュ~リエージュと言った当時のワールドカップ対象レースはじめ、世界主要レースも経験する。
世界最高峰のクラシックと言われるツール・ド・フランドルには2回、リエージュ~バストーニュ~リエージュには3回選抜されている。
2003年より国内の名門チームであるミヤタ・スバルで活動。当時の世界チャンピオン(タイムトライアル)のデービット・ミラーや
トラック競技の世界チャンピオン、オリンピックチャンピオンを退けた。
またマルコポーロのメンバーとして2004年にはツアー・オブ・サウスチャイナシーでは第2ステージで区間賞以後4日間リーダージャージを守り、ポイント賞でも3日間リーダーとして注目を浴びる。
2006年には95年以来のナショナルチームメンバーに返り咲き、アジア選手権に出場。チームロードで銅メダルを獲得。
2007年にマトリックス・パワータグ・コラテックへ移籍。
2008年シーズン最初のレース「ツアー・オブ・タイランド」第2ステージをゴールスプリントで制して3年ぶりのUCIレース勝利。
38歳11ヶ月でゴールスプリントを制し、当時の日本人最年長UCIレース勝利を記録する。そして2008年を最後に現役を引退。引退後の2011年にはブルベの最高ともいわれるフランスのパリ~ブレスト~パリ(以下PBP)に参加、53時間16分で完走し日本人選手の記録を更新する。
2015年にも再挑戦、前回の記録を大幅に更新し43時間23分で完走を果たす。
2017年 4年一度行われるイギリスのロングライドイベント ロンドン~エディンバラ~ロンドン(1436km)を81時間で完走。
レースを走る準備。
例えば、レースを完走するための議論をするとします。でもレースのための練習を行っているのでしょうか。
よく乗っている人でもメソッドがなく、とにかくがむしゃらに乗る人。あるいは全く練習をしない人もいます。そもそも違う練習をしている事が多いですよね。
ではどんな練習が必要なのでしょうか。
集団走行です。日本には公道を走る時のルール、道路交通法がありますから、自転車は一列で走る必要がありますので並進はできません。
しかしエンデューロで完走するコツは、集団でどれだけリラックスして走れるかにかかっています。
一列で走るのは「強くなる」という意味では必要なトレーニングではありますが、一般公道で並走はできません。ではどうしたらいいのでしょう。
人数を集められるなら競輪場や、自転車の走れるサーキット(日本CSCや下総フレンドリーパーク)のようなコースを貸りて走行練習を行うといいです。
そこではアタックの掛け合いのような練習を行うのではなく、あくまでも“集団で走る練習”をします。簡単に言うと10人くらいの人数で並走して走る。
現状、日本ではレースなどでしか3列走行などを体験できません。この集団での練習を積み重ねると「集団で走ることは心拍が上がるような出来事ではない」ということを学ぶことができます。
昨年、私も富士チャレを走りましたが多くの人が3列、4列の集団走行を避けているように思えました。これはいまの日本のレベルでは仕方がないこと。イベント以外での集団走行の経験値が低いので、集団の外へ外へ向かって走る人や、執拗にラインを守れという人も多いですね。そもそもラインというのは集団走行中には存在していないと思います。空いたスペースがあれば詰めていくべきですから。
完走するためには
最低限、サドルにまたがっている時間を増やすこと。加えてグループライドを行うこと。
グループライドをしていると、人の動きも見えるし、自分の動きも見えるようになってきます。
集団の中で自分が見えていないと、人も見えていないでしょう。集団での走り方、集団内での休み方を習得すると大きなアドバンテージとなります。あと2ヶ月あるので、集団走行をできるだけ行う機会をつくりましょう。
もちろん強くなる練習も必要ですがグループライドを優先しましょう。前を向いていても横にいる人の気配を感じられるようになりたいですね。ペース配分も大事ですが、それ以前のところに秘訣がある気がします。
具体的にどのように走ればいいか
大げさではなく施設を借りている時間、ずっと集団走行していてもいいですよ。ペースが速くてしんどいというなら、ゆっくりでも構わないです。上りはインナー・ローでも構わない。チームメイトと2列、3列走行しながら、世間話でもなんでもいいので、会話をしながら走る。サポーターがいるならコース脇に補給食などを置いておき、1時間おきに食べ物や飲み物をもらって走りながら摂取する。とにかくグループで走行するという練習をしてください。
走行形態はとくに気にしなくてもいいです。しゃべりたい人と並走して、それが2列であっても3列であってもいい。とにかく団子状態を作って走り続けること。
ヨーロッパのサイクリストは素人でも走り方がうまい。それは普段から並走をしていることで、横の感覚がつかめているからでしょうね。しゃべっていることにも、走っていることにも集中できているという状況に慣れているんですよね。
“うまく”走れるように
1人で乗り続けると“強く”はなるけど、“うまく”はならない。だから複数人で走ることが大事です。バッティングセンターではホームランを打てるけど、ピッチャーが投げる球は打てないというのに似てるかもしれないですね(笑)。
そういう意味では、レースは(集団走行の)もっとも練習になる場面といえますね。
私も現役の時にけいはんなの市民レースに出場したりしたんですが、「素人いじめや!」などいろいろと言われることもありました(笑)が、集団走行の感触を忘れないためにも必要な練習でした。レース中、危ない場面はありますが目で追えていれば、落車することはほとんどありません。危ない走りにも対応できるというものです。
チームでの走り方について
まずはメンバーの力量を全員で把握すること。
交代回数は少なくするなら1時間ずつくらいが目安でしょう。速い人は長めにするなど走行時間に差をつけるのがいいでしょう。
展開によっても交代するタイミングが変わります。序盤は大きな動きはないので、集団で長めに走れる人にするなど、出走順をあらかじめ決めておくといいでしょう。
1時間ちょうど走ると決めていても、展開によってずれ込む可能性もあります。補給食や水などは余裕をもっていきましょう。とくに勝負がかかっているチームは、ライバルチームの動きに左右されますよね。交代のタイミングでもライバルの動き次第では交代できないかもしれない。そんなときはピットの連携が重要になってきます。
エンデューロのメンバー構成の秘訣を
第1走はガツガツしないほうがいいですね。大きな集団のパックで走り、主要チームが交代するタイミングに合わせてピットに入るようにする。変に交代のリズムをずらすよりも同調していたほうが走りやすいでしょう。
とはいえ第2走目になると集団の人数も減ってきます。より走力が必要になりますね。
第3、第4になるともっと集団は小さくなるので、さらに走力が必要になる。
大げさに言うと第1走はついていくだけでいいかもしれないけど、第3、4、5走になると独走の力や2〜3人でのローテーションの技術が必要になってくる。セオリーでは後半に独走力に長けた人を配置しますね。
補給食はなにがいい?
まだまだ暑い時期なので、ゼリーなどの流動食が食べたいところ。でも食べやすいけれどおもったほどカロリーが高くない。トレーニングを普段からこなしている人はインスリン変動にあるていど対応できるので、いっそのことスポーツドリンクに砂糖をまぜたものでもいいかもしれません。固形物はアップルパイのような比較的食べやすいものをアルミホイルに包んでもっていきますね。
TIPS
9月8日(土)はまだまだ暑いですね。
暑いときは、額や首、太ももなどを冷やすとパフォーマンスのキープに効果的です。かつてアジアツアーを走っているとき、太ももに冷却ジェルシートを数枚貼って冷却していましたが、これをやるとめちゃめちゃ脚が動きましたね。今? 走行距離が短いのでやっていませんが効果的です。
ほかにも首に貼るのはOKですが、おでこに貼るのはNGです。目がスースーしちゃうので(笑)。
とにかく高温時は体温を上げないことが重要ですね。保冷ボトルを用意し、冷たい水を入れておいて体の冷却に使うのも手です。
今年の富士チャレンジ200も、レジェンドライダーとして三船雅彦さんの参加が決定しております! その華麗な走りを間近でみるチャンス!
富士チャレンジ200の詳細はこちら
写真;編集部
協力:マッサエンタープライズ http://www.massaenterprise.jp/
三船雅彦 オフィシャルブログ http://d.hatena.ne.jp/masahikomifune2/
関連URL:富士チャレンジ200 : http://www.fujichallenge.jp/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得